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2010年2月28日
吉田 美智枝 吉田 美智枝 [よしだ みちえ]

福岡県生まれ、横浜市在住。夫の仕事の関係で韓国ソウルとタイのバンコクで過ごした。韓国系の通信社でアシスタント、翻訳、衆議院・参議院で秘書、韓国文化院勤務などを経て現在に至る。自作のアクセサリーをBeads Duoというブランドで販売しながら、韓国の主に女性たちについてエッセーを執筆中。『朝鮮王朝の衣装と装身具』(共著)、韓国近代文学選などの翻訳がある。
▲ アベンチュリンと粒パールのネックレス、マラカイトのピアス。
素材の石が違うが、細かいことはいわない!
『なにがなんだかわからなかった。こんな世界もあるんだと思った』

ある作品展で、来訪者の寄せ書きが目に留まった。20年ほど前、友人の東京での作品展に行ったときのことである。

この寄せ書きを書いたのは、名前からして男性、しかも若い男性であろうことが、その直截な表現から推し測られた。私は思わず微笑んでしまった。わかったような感想を書かなかったその正直さが気持ちよかったからだ。

友人が創り出す韓国の結び(組紐というよりは結び=メドゥップ)をモチーフにしたインテリアアクセサリー、壁掛けなどは、日本では当時(たぶん今も)珍しかった。

よく知った世界であろうと、未知のものであろうと、絵画であろうが、陶器であろうが、手工芸品であろうが、このような作品展に行って考えさせられるのは、作者が作り出した作品の持つ力についてである。

作品たちは、その場にいる人たちにさざ波のような感情と話題を投げかけてくれる。作品自体には作者(作家)独自の世界があって、ときに理解しがたく混乱した気持ちのまま帰途に就くことがある。それは不快な種類のものではなく、ひとつひとつの作品に込められた作者の想いのようなものが私を捉えるからである。

作品の持つ力とはいったい何なのだろう。理屈ぬきに美しい、素晴らしいと感じることもあれば、それらの作品を作り出すために作者が費やしたであろう膨大な時間や労力にただただ打たれることもある。前述の若い男性の『なにがなんだかわからない』といった感情を引き出すこともまた、人の心を揺さぶる作品の力といえるのかもしれない。

そしてもうひとつ、作品あるいは作品展には、それ自体が持つ価値以外に“媒体”としての力があると感じることがある。その場にいる人と人との、また作者と見る人とのコミュニケーションを成り立たせる力といおうか…。

1か月前、私は友人と一緒にアクセサリーのサイトを開設した。そのサイトもまた媒体としての役割を果たしてくれている。

私がつくるアクセサリーを作品と呼ぶには甚だおこがましいことを承知のうえで、あえて作品(つくったもの)とするなら、この小さなサイトは、友人と私の常設展ともいえる。

1月末にサイトを開設して早や1か月、ありがたいことに、その間予想以上の数の友人・知人から、励ましのはがきやアクセサリーに対する感想、または購入したいという内容のメールをいただいた。

アクセサリーを作り続けることでできた小さなサイトは、遠くに住み、なかなか会えない人たちとのつながりを取り戻し、新たな関係を実現させてくれたと思う。

Beads Duoのサイトを訪問し、数日前にアクセサリーを注文してくださった奈良のP.Yさんは、このインフォネットのサイトのエッセイを以前から読んでくださっていた方であった。ご自身もアクセサリーをつくられ、M.ハスケルのアクセサリーのファンなのだそうである。

アクセサリーを作り続けることと、エッセイを書き続けることとは同じであった。

サイトだけでなく作品そのものが媒体となりうること、そして媒体というものの本来の意味に、ものをつくるということの意味に、気づかされ実感させられた一か月であった。
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