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僕の偏見紀行
206 なぜかベトナム(4)コーヒーの他は?
2016年6月17日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ バンメトート市場、肉屋さん。右手のハタキでハエを追いながら店番中。
▲ 同じく魚屋さん。新鮮なカニ、エビ、魚、どれも旨そう。
▲ ホテル近くの食堂。地元の人々で連日賑わっていた。
コーヒーの他には何もない、などとノー天気な旅行者が不遜なことをいってしまた。観光客向けのものが少ないというだけのことで、その土地の人々の日常の営みは部外者に関係なくどこにでもある。そこにはその土地なりの生活と文化がある。

誰だって旅行者のために生きているわけではない。みんな様々に自分の生活を生きている。旅行者が分かりやすさ、物珍しさだけを期待して来るなら、見るべきものを見つけることは難しい。

コーヒー以外を求めて市内へ出かけた。タクシーを呼んでもらい、フロントから、市場、商店などを回りたい、とドライバーに伝えてもらった。

中心部のホコリっぽい大通りにはビルが立ち並び、大型ホテルもある。街は地方経済の中心らしい活気をを感じさせた。

雑貨店に入った。木彫りの動物や仏像などが展示され、かたわらにあるのは薬品だろうか、乾燥した木片や草類が置いてある。店番の男は、外国人に不慣れなのか、遠くからこちらを見るだけで近寄ってこない。ちょっとしたお土産にふさわしい、手頃な価格のお菓子や小物などは無かった。

次に市場に向かった。時刻は昼前、太陽が容赦なく照りつける。ここは山岳地帯の近くのはずだが、ホーチミンに劣らぬ暑さだ。

タクシーを降りる時、ドライバーにここで待つように頼んだ。言葉が通じないので、身振り手振りで伝えるしかなかった。彼が理解したかどうか心許なかったので、念のために車と彼の写真を撮った。

市場はアジア特有の活気に溢れていた。今朝さばいたのだろう、新鮮で巨大な肉の塊、金タライで勢いよくはねる魚、色鮮やかな果物や野菜、かごの中で騒ぐニワトリなど、いつもながらアジアの豊饒な食に圧倒される。この混沌の中を歩くだけで大地のパワーが僕を元気にしてくれた。

ホテルへ戻ろうと約束の場所へ行くとタクシーはちゃんと待っていた。言葉は通じないが、ドライバーの若者はニコニコしながら迎えてくれた。ここの人達は無愛想に見えるけど、それは外国人に不慣れだけと分かった。

ホテルに戻りフロントで明日の予定を相談する。郊外に山岳民族の村があって、簡単な観光施設もあるという。山岳民族の村はあちこちの国に跨って存在している。

いつも思うけど国境なんてものは、国家が勝手に定めたもので、そこに住む人々のことを考えたものではない。メコン流域では、川が国境となっているところも多く、小さな舟で簡単に越境できる。ちょっと晩御飯のおかずを買いに隣国へ、というケースも多いという。普通の庶民には国境なんてものは関係ないのだ。全ての国境がこうなれば、世界はどんなに平和なことだろう。

村には古い伝統建築やエレファントファームなどがあり、案内所などもあるようだ。最終日の明日行くことにしてタクシーを予約した。

夕食は行ったことの無い地元食堂を探すことにした。ホテル予約サイトの口コミで評判の良かった食堂がホテルのすぐ近くにあった。

外観は大きな民家に見えたが、門を入った前庭にはいくつかテーブル席が置かれ、奥の平屋へと続いている。庭の横手には屋根付きのオープンスペースがあり、未だ5時過ぎだというのに、テーブルにビール瓶を林立させた若者たちが赤い顔をして盛り上がっている。

思った以上に大きな食堂で店員も多い。席に着くと若い女がメニューを持ってきた。Tシャツにジーンズ、高校生くらいの数人の女たちがサービス係をしている。きっとこの子達を目当てにやって来る若者もいることだろう。

メニューを見るとベトナム語だけ、さっぱり分からない。肉や魚そして野菜類、それにスープとご飯くらいあれば充分だが、それを伝えるのが一苦労だった。カタコトの英語そして身振り手振りでなんとか伝えたが、肝心のご飯が分かってもらえない。

今までは、ご飯は蒸した米、という意味で、スティーム・ライス、で用が足りた。ところがそれが伝わらない。ご飯を身振りでどうやって表現するのだろう。僕は途方にくれた。

その時メガネをかけた女の子がスマホを取り出し、翻訳アプリで検索を始めた。そしてついに「ご飯」を見つけてくれた。そしてベトナム語で、ご飯はコムといいます、と教えてくれた。スマホのお陰で僕らは無事夕食にありついた。恐るべし文明の利器、ベトナムの田舎でお世話になるとは。

実は僕らも、今回の旅行からスマホを持参していた。正確に言うとスマホの抜け殻だけど。息子の使い古しのスマホで、通信会社との契約は切れている。しかしフリーのWi-Fiを利用すればインターネットが使える。

今までは海外から家族へ連絡する時、ホテルの電話か持参した携帯を使った。それではもったいないと、息子がお古のスマホを持たせてくれた。

実は僕はスマホのような、不必要な機能を沢山持った道具は嫌いだった。開発側の都合でサービスを押し付けるようで嫌だった。道具というのは、ユーザーが必要とする機能だけあればそれで充分、というのが僕の考えだ。勿論僕のレベルでの話しだが。

ところが今回のスマホはいろいろと重宝した。利用した空港や宿泊した全てのホテルでフリーのWi-Fiが使えた。電波強度も充分で、ネットでの情報検索くらいならスピードも申し分なかった。SNSを利用したメールや通話、写真送付は手軽で便利だった。

ホイアンで出会ったカナダの女の子たちは、食堂のテーブルにスマホを立て、カナダの友人達と楽しげにおしゃべりをしていた。あまり賑やかなので尋ねてみたら、向こうでは友人たちが深夜のパーティの最中だった。

ある時は、タイ国境近くの早朝のホテルの食堂で、テーブルのスマホに向かって深刻な面持ちで語り続ける中年の白人女がいた。いろんなことを抱えながら旅をするひともいるのだ、とその時は思った。

ハトのグリル、野菜炒め、スープ麺、そしてご飯、どれも美味しかった。値段も手頃で美味しいので2晩続けて通うことになった。2日目も言葉は通じなかったが、顔見知りとなった女の子達のお陰で旨い晩飯を楽しむことが出来た。(続く)
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81 シルクロードの旅(4)ブハラへの道
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78 シルクロードの旅(1)タシュケント到着
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76 小笠原の旅(6)小笠原海洋センター
75 小笠原の旅(5)母島列島
74 小笠原の旅(4)宝石の島、南島
73 小笠原の旅(3)ザトウクジラの海
72 小笠原の旅(2)BONIN ISLANDS
71 小笠原の旅(1)波路はるかに
70 インド紀行(7)タージ・マハルの光と影
69 インド紀行(6)ガンジス川の夜明け
68 インド紀行(5)夜行寝台「ハウラー・カルカ・メイル・2311号」
67 インド紀行(4)ダージリン滞在
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65 インド紀行(2)コルカタにて
64 インド紀行(1)遠かったインド
63 暮れの浅草昼酒
62 雨の東北、芭蕉と紅葉旅
61 南会津の旅◆扮の尾瀬沼)
60 南会津の旅 弁愡浚村)
59 奥日光戦場ヶ原
58 スコットランド紀行(5)いくつかの思い出
57 スコットランド紀行(4)偉大なり、ピーター・ラビット
56 スコットランド紀行(3)ネス湖からスカイ島へ
55 スコットランド紀行(2)ウォールフラワー
54 スコットランド紀行(1)エジンバラ大学でお茶を
53 風に吹かれて八丈島(3)
52 風に吹かれて八丈島(2)
51 風に吹かれて八丈島(1)
50 イリオモテヤマネコに逢いたくて(4)
49 イリオモテヤマネコに逢いたくて(3)
48 イリオモテヤマネコに逢いたくて(2)
47 イリオモテヤマネコに逢いたくて(1)
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42 北東北ローカル線の旅(3) 雨の下北恐山
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39 50年の時を超えて
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37 知床の秋(1)、鮭遡上
36 風に吹かれて尾瀬ケ原
35 白神山地「ブナの学校」
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33 ハワイ島滞在記(2)
32 ハワイ島滞在記(1)
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29 年の暮れ、奥那須で想う
28 ラムネの湯「長湯温泉」はいいぞ
27 また「再会の時」道後温泉にて
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24 知床の青いそら、光と風
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22 春の東北ローカル線の旅
21 春の東北ローカル線の旅
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17 僕たちのセンチメンタルジャーニー
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14 よるべない孤独にみちた宿
13 海があまりに碧いのです
12 安曇野の光と水、そして高瀬川渓谷葛温泉
11 鞍馬山の向こうへ、大悲山峰定寺
10 雪の会津鉄道トロッコ列車の旅
9 初春初旅救急車
8 年の暮れ、峩々温泉再訪記
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6 蔦温泉、蔦沼、ブナの森
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1 東北紅葉雪見風呂
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