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僕の偏見紀行
17 僕たちのセンチメンタルジャーニー
2004年12月19日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ 九重連山、三俣山を望む
▲ 阿蘇山麓の谷あいにて
 11月も終りというのに汗ばむくらいの上天気だった。晴れ渡った空の下、九重の飯田高原は美しく広がっていた。三俣山を背景に、友人のTとKが立っている。カメラのファインダーをのぞきながら、ふとこの風景はどこかで見たような、懐かしい気持ちになった。そうだ、あれは未だ僕らが高校生の頃、もう40数年前だった。やはり同じメンバーで同じ様なところで撮った写真があるのだ。しかし山の姿は変わりないけど、今そこに立っている彼らは年相応に変わってしまった。

 僕たち3人は幼稚園からの幼馴染で、常に遊びも喧嘩もいたずらも一緒だった。特に物心つく頃からの数年間は濃密な時間をともに過ごした。互いの家に集まり夜更けまで他愛のない話をして過ごした。家族に内緒でそのまま泊り込むこともしばしばであった。

 あの時代どうしてあんなに楽しかったのだろう。まだ戦後の復興から高度成長へ至る過程で、少年たちにとって今みたいに様々な遊び方や道具があった訳ではない。あるのは田舎のゆっくりとした時間と山や川の自然しか無かった。夏は自転車に乗って1時間くらいかかる谷あいの渓流に泳ぎに行ったり、時には飯ごうと重いキャンバス地のテントをかついてキャンプをした。秋になると雑木林に分け入って、栗やアケビを採るのも楽しみであった。ただ、最後にはその収穫物の分配でよく喧嘩になってしまった。

 年頃になると最大の関心事はやはり女の子で、夜更けの会話の主題でもあった。それぞれに勝手に、好きな子を決めて、俺の彼女に手を出すななどと言い合っていた。かといって何か具体的な意思表示を相手の子にすることもできず、本当に他愛ない話だが、当時はそれなりに真剣であった。ただ、一度だけ中学3年の時に、公園のボートに女の子も交えたグループで乗って遊んだのがささやかな思い出である。ただ、この時は早速翌日の朝礼で「受験前なのに浮かれている奴がいる」と生活指導の先生からお叱りを受けてしまった。思えばのどかな時代であった。

 仲間で一番早熟であったTは、長年奥様とともに福岡で飲食業を営み、最近2軒目の店を出したばかりだ。これはひとえによくできた奥様の努力のお陰であると我々は冷やかすが、彼なりに苦労も多いのであろう。しかしそれをそぶりにも見せず相変わらず若々しいところが粋である。一方Kは気楽な公務員のはずであるが,頭は一番白い。先日は胃潰瘍が見つかったとかいっていた。なんの苦労があるのだろうか。スポーツ少年であった彼は今もゴルフの腕は確かだし、高級外車に乗ったりして優雅に見えるのだけど。

 その夜は黒川温泉に泊まり、3人で川の字に寝た。話は尽きなかったが、公務員のKが真っ先に9時ごろには眠り込んでしまった。Tは長年の仕事柄、昼夜逆転の生活で夜中過ぎにならないと眠れないといいながらテレビを見ていた。僕に気を遣いボリュームを最小に絞りながらテレビを見るTの姿に、KもTも僕もあの時代から40年以上もそれぞれの人生を生きてきたのだ、そして今また3人一緒に寝ている、これは凄いことだと思いながら僕は寝てしまった。
 
 旅行から帰ってぼんやりと中島みゆきを聴いていたら、
 やたらその歌詞が心にしみて来た。

   長い髪を 三つ編みにしていた頃に
   めぐり逢えればよかった
   彼女より もう少し早く

     「横恋慕、作詞・曲中島みゆき」より
 

 
 
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116 メコンへの旅(6)国境の町
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93 ベトナム紀行(3)メコンデルタの森へ
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91 ベトナム紀行(1)「僕の1号線」はどこに?
90 マイ・センチメンタル・ジャーニー
89 シルクロードの旅(12)風の城、アヤズ・カラ
88 シルクロードの旅(11)「博物館都市」イチャン・カラ、ヒワ
87 シルクロードの旅(10)ちいさなリンゴ
86 シルクロードの旅(9)「愛の町」アシュハバード
85 シルクロードの旅(8)中央アジア最大の世界遺産メルブ遺跡
84 シルクロードの旅(7)未知の国へ
83 シルクロードの旅(6)国境越え
82 シルクロードの旅(5)ブハラ、深夜のトイレ
81 シルクロードの旅(4)ブハラへの道
80 シルクロードの旅(3)アレキサンダー大王が来た街
79 シルクロードの旅(2)青の都サマルカンド
78 シルクロードの旅(1)タシュケント到着
77 小笠原の旅(7)惜別
76 小笠原の旅(6)小笠原海洋センター
75 小笠原の旅(5)母島列島
74 小笠原の旅(4)宝石の島、南島
73 小笠原の旅(3)ザトウクジラの海
72 小笠原の旅(2)BONIN ISLANDS
71 小笠原の旅(1)波路はるかに
70 インド紀行(7)タージ・マハルの光と影
69 インド紀行(6)ガンジス川の夜明け
68 インド紀行(5)夜行寝台「ハウラー・カルカ・メイル・2311号」
67 インド紀行(4)ダージリン滞在
66 インド紀行(3)ダージリンへの道
65 インド紀行(2)コルカタにて
64 インド紀行(1)遠かったインド
63 暮れの浅草昼酒
62 雨の東北、芭蕉と紅葉旅
61 南会津の旅◆扮の尾瀬沼)
60 南会津の旅 弁愡浚村)
59 奥日光戦場ヶ原
58 スコットランド紀行(5)いくつかの思い出
57 スコットランド紀行(4)偉大なり、ピーター・ラビット
56 スコットランド紀行(3)ネス湖からスカイ島へ
55 スコットランド紀行(2)ウォールフラワー
54 スコットランド紀行(1)エジンバラ大学でお茶を
53 風に吹かれて八丈島(3)
52 風に吹かれて八丈島(2)
51 風に吹かれて八丈島(1)
50 イリオモテヤマネコに逢いたくて(4)
49 イリオモテヤマネコに逢いたくて(3)
48 イリオモテヤマネコに逢いたくて(2)
47 イリオモテヤマネコに逢いたくて(1)
46 秋空の下、いくつかの再会
45 白神の森の宝
44 挑戦!乗鞍岳
43 北東北ローカル線の旅 (4)津軽じょんがらの夜はふけて
42 北東北ローカル線の旅(3) 雨の下北恐山
41 北東北ローカル線の旅(2) うみねこレール
40 北東北ローカル線の旅(1) 春のうららのドリームライン
39 50年の時を超えて
38 知床の秋(2)、ウトロにて
37 知床の秋(1)、鮭遡上
36 風に吹かれて尾瀬ケ原
35 白神山地「ブナの学校」
34 初夏の山形、サクランボとそばの旅
33 ハワイ島滞在記(2)
32 ハワイ島滞在記(1)
31 春の予感、鹿沢(かざわ)高原にて
30 嗚呼!還暦大同窓会
29 年の暮れ、奥那須で想う
28 ラムネの湯「長湯温泉」はいいぞ
27 また「再会の時」道後温泉にて
26 大自然の力、姥湯温泉
25 知床の青いそら、光と風 その
24 知床の青いそら、光と風
23 春の東北ローカル線の旅
22 春の東北ローカル線の旅
21 春の東北ローカル線の旅
20 上海点描
19 やさしかったチェジュの人たち
18 さらば、災の年よ。
17 僕たちのセンチメンタルジャーニー
16 台風を避けて信州へ
15 青島印象記
14 よるべない孤独にみちた宿
13 海があまりに碧いのです
12 安曇野の光と水、そして高瀬川渓谷葛温泉
11 鞍馬山の向こうへ、大悲山峰定寺
10 雪の会津鉄道トロッコ列車の旅
9 初春初旅救急車
8 年の暮れ、峩々温泉再訪記
7 東北紅葉旅峩々温泉
6 蔦温泉、蔦沼、ブナの森
5 雨の幕川温泉再訪記
4 憧れのフルム-ン法師の湯
3 信州塩田平別所温泉
2 信州信濃路
1 東北紅葉雪見風呂
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