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とんがりコーン |
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2009年3月17日 |
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 | 中山 俊明 [なかやま としあき]
1946年4月23日生まれ。東京・大田区で育つが中2のとき、福岡県へ転校。70年春、九州大学を卒業後、共同通信に写真部員として入社。89年秋、異業種交流会「研究会インフォネット」を仲間とともに創設、世話人となる。91年春、共同通信を退社、株式会社インフォネットを設立。神奈川県・葉山町在住。 |
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小沢一郎という人物が、民主党の代表をつとめていることに、以前からなにか違和感を感じていた。野党党首になっても彼のなかに、自民党の体質を色濃く感じ、なにやら民主党が自民党味のとんがりコーンを頭にいただいているような感がぬぐえないのだ。
急激なチェンジを好まない日本人が、突然民主党に政権を移譲するのは不安だ、だから民主党に政権移行するにしても、自民党的なものを残しつつ、緩やかな政権交代を日本国民は望んでいるのかなあ、というのが僕なりの分析だった。
彼の自民党的体質が、今回の公設第一秘書の逮捕であきらかになった。やはりな、という思いだ。「どこから献金された金か知らなかった」という彼の釈明は信じられない。「法律にのっとって適正に処理されている」「もしやましい気持ちがあれば、私の資金管理団体でなく、民主党の支部で受け取っていれば完全に問題はないのだから、そうしていたはずだ」というのはいかにも苦しい釈明だ。
党ではなく、「陸山会」という小沢個人の管理団体への献金こそが、彼の政治パワー維持のためには必要であったはずだ。合法であれば少々のきな臭さは問題ない。そもそもすぐれた政治家とは、清濁合わせ持つ者であり、その政治には金がかかるものだ―という彼の認識は自民党そのものではないか。
検察の国策捜査だ、という声が上がっている。このままでは次期選挙で自民が敗れ、民主党の天下になってしまう。民主党の政権になれば、いまの官僚組織はバラバラにされてしまう。自民党と、それと一体の官僚組織が崩壊することはなんとしてでも阻止しなければならない。そこで「陰」の力が働いた、マスコミもその検察の意図にまざまざと乗せられている、というわけだ。
僕は庶民の声を、歯に衣着せぬはっきりした物言いの文体で書き続けるブログ「きっこの日記」を毎日読んでいるファンだが、そのきっこさんも「国策捜査」の支持者のようだ。だが、「真珠湾攻撃をルーズベルトは事前に知っていた」「世界は陰でフリーメーソンが動かしている」「9.11はアメリカの自作自演だ」等々、いつの時代にもある「謀略説」「陰謀説」は安易に信じ込まないことだ。
そもそも僕は、自民党のとんがりコーンをかぶった民主党にそのまま政権を任せることは危険だと思っている。少なくとも小沢民主党が政権をとったとしても、アメリカがオバマを選択したときほどの高揚感はないだろう。もっとも、「日本の防衛は米第七艦隊だけで十分」という小沢さんの考えは面白いと思っている。政権交代を期に、日米安保体制を根本から見直す、という政策だけは支持したい。
これから先は僕の勝手な推測に過ぎないのだが、民主党の若手議員から「国策捜査批判は抑えるべきだ」という声があがったのは当然、といえる。彼らも小沢さんの「自民党的体質」を常日頃苦々しく思っている。検察の捜査が入るのもあながち理解できないではない。しかし現党首だから、組織人として内部批判は抑えるべきだ。
しかし、もし公設第一秘書の起訴となれば動き出す。動きだすときに、あれほ国策捜査だと批判していたではないか、と逆襲されるのはまずい。ここは静観を決め込み、起訴後に一気に動き出そう―とういう明確な戦略があるのなら、民主党もようやくしたたかさを身につけてきた、ということになる。
では検察は何を考えているのか。法律の抜け道をかいくぐって政治資金を企業から受け取る下地があるかぎり日本は変わらない。自民党も同じようなことをやっているのは承知の上だが、自民党は早晩瓦解する。しかし、民主党が小沢の下で政権交代しても、この政治資金の流れはけして変わらない。メスを入れるとしたら、今しかない。
政権の交代を望む多くの人は、今回の検察の捜査によって、民主党が失点し、自民党が得点したように考えているが、僕の見方は少々違う。民主党の選ぶこれからの戦略次第で、自らの政権はたぶん現実のものとなる。
その戦略とは読者ももうお分かりの通り、起訴を期に小沢さんが潔く代表辞任、「誤解」を与えるような行動があったことを反省・謝罪し、同時に若手主体の執行部擁立を支持することだ。
自民党は、そういう事態になることをもっとも恐れているし、検察はそうなることを想定して行動しているように僕には思われる。だからこそ検察は、今回は自民党には手をつけない。つまり「どっちもどっち」と国民に思わせないよう動いている。「今回は自民党に捜査の手は及ばない」といった「高官」発言もあながちまちがってはいない、ということになる。
と、ここまで書いたところで、ニュースサイトに以下のような記事が出た。
「民主党の小沢代表は17日の党役員会で、西松建設からの違法献金事件で公設第1秘書が逮捕されたことに関し「来週にある種の結論が出ると思うので、その時に改めて考えを話したい」と語った。出席した党幹部が明らかにした。来週の24日には秘書の勾留(こうりゅう)期限が切れ、東京地検が起訴するかどうかを判断する。小沢氏の発言は、その時点で捜査がどこまで発展するか一定の見極めがつくとみて、進退を含む対応を明らかにする考えを示したとみられる。」(朝日コム、17日午後12時15分)
もしかすると、「国士」(だとすれば)小沢一郎はすでに辞任の覚悟を決めたかもしれない。彼が日頃主張する「真の民主国家」実現を本気で考えているなら、そのくらいの覚悟はあっていい。
しかし、だが辞任する場合は、自らの自民党的体質と自民党そのものを抱き合わせて心中する。それこそが自民党がもっとも恐れる事態であり、検察が書いた通りのシナリオだ、と考えるのは、僕自信の「謀略説」に過ぎないのだろうか。
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