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僕の偏見紀行
16 台風を避けて信州へ
2004年10月22日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ 台風一過、翌朝は青空でした。中の湯からの眺め。
▲ 西穂高口からの眺め
▲ 温泉卵を作ろう
 台風22号が首都圏へ接近する中、新宿発9時の特急あずさにやっとの思いで乗り込んだ。すでに台風の影響で新宿への電車も大幅に遅れ、発車1分前の滑り込みであった。抱え込んでいる様々な仕事上の問題や、錯綜する人間関係に疲れた心を引きずりながら、やっとこぎつけたひと時の旅路だ、後は野となれ、さらば新宿。

 目指すのは、北アルプス燕岳中腹の温泉天国ともいわれている「中房温泉」である。松本でレンタカ−に乗り換え、穂高町を抜けて谷間を登りつめれば温泉天国だ。

 ところがである、電車が松本に近づいた頃、宿から携帯に電話があり、中房温泉に至る道路が大雨で封鎖され通行不能という。宿のご主人も恐縮しているが天災にはかなわない。中房温泉には2泊の予定のため、とりあえず明日は大丈夫であろうが、今夜の宿を探さねばならぬ。本当に旅は何が起こるかわからない、人生そのものだ。これもまた一興と強がるものの、はたして宿はとれるだろうか。

 松本のレンタカ−の事務所であちこちに電話をした。そんな時頼りになるのが「日本秘湯を守る会」の会員案内である。全国の名湯が記載されており、心強い限り。

 数軒目に「大丈夫ですよ。気をつけてお越し下さい。」と快く引き受けてもらったのが、「中の湯温泉旅館」だった。松本から上高地へ向う道を釜トンネルの手前で左折すると安房トンネルを経て飛騨高山方面だが、その途中を安房峠越えの旧道を少し登ると中の湯温泉だった。

 偶然辿り着いた宿であったが、親切な応対と気持ちのいいお湯が溢れる温泉がありとても良かった。特に宿自慢の手打ちそばは、冷たい山水できりりと引き締まり、そばの香りも充分でつい食べ過ぎてしまった。

 おかみさんの人柄がよくて、土産を買いながらつい話しが弾んでしまった。もともとこの宿はもっと下の釜トンネルそばで営業していたものが、安房峠のトンネル工事で移転を余儀なくされ、移転工事があらかた済んだところで
附近で水蒸気爆発が起こり、2度目の移転に追い込まれたそうである。「言葉にできない苦労でした」、おかみさんが漏らした言葉が僕の心にしみた。

 日暮れ時には雨もあがり、夕闇の中で露天風呂につかっていると、近くの雑木林のなかに、老木にからみついた蔦の葉の赤が暮れかけた山間に鮮やかだった。

 翌日は台風一過の秋晴れの下、安房峠の旧道を抜けて「新穂高温泉郷」を経て中房温泉へ向った。この安房峠が良かった。トンネルを通らずに旧道を抜けると、至るところに鮮やかな紅葉が見られた。澄んだ空気と赤や黄色の木々の葉が美しかった。この峠道はお勧めだ。

 新穂高温泉ではロ−プウエイで標高2156Mの西穂高口まで上がり、附近の紅葉を楽しむことができた。風景の美しさに見とれて思わぬ時間を過ごしてしまい、中房へ着いたのは日もとっぷりと暮れたころであった。玄関には、出迎え犬の「ケリ−ちゃん」、コリ−がいて歓迎してくれた。

 この中房温泉は湯口が36ヶ所もあり、宿の敷地のいたるところで水蒸気が上がっている。溢れる源泉で温泉卵を作るところもしつらえてあったりして、散策するだけでも楽しい。裏山は「焼山」といって地熱で蒸し焼き料理が自由に楽しめるようにもなっている。まさに「温泉天国」であり、疲れたおとうさんのための温泉テ-マパ−クともいえよう。ここはとても1泊では時間が足りないくらい楽しむ場が多い。浴場も10ヶ以上ありとても全部は入りきれなかった。だから2泊予定したのだが、また行かねばならぬ宿である。
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67 インド紀行(4)ダージリン滞在
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65 インド紀行(2)コルカタにて
64 インド紀行(1)遠かったインド
63 暮れの浅草昼酒
62 雨の東北、芭蕉と紅葉旅
61 南会津の旅◆扮の尾瀬沼)
60 南会津の旅 弁愡浚村)
59 奥日光戦場ヶ原
58 スコットランド紀行(5)いくつかの思い出
57 スコットランド紀行(4)偉大なり、ピーター・ラビット
56 スコットランド紀行(3)ネス湖からスカイ島へ
55 スコットランド紀行(2)ウォールフラワー
54 スコットランド紀行(1)エジンバラ大学でお茶を
53 風に吹かれて八丈島(3)
52 風に吹かれて八丈島(2)
51 風に吹かれて八丈島(1)
50 イリオモテヤマネコに逢いたくて(4)
49 イリオモテヤマネコに逢いたくて(3)
48 イリオモテヤマネコに逢いたくて(2)
47 イリオモテヤマネコに逢いたくて(1)
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45 白神の森の宝
44 挑戦!乗鞍岳
43 北東北ローカル線の旅 (4)津軽じょんがらの夜はふけて
42 北東北ローカル線の旅(3) 雨の下北恐山
41 北東北ローカル線の旅(2) うみねこレール
40 北東北ローカル線の旅(1) 春のうららのドリームライン
39 50年の時を超えて
38 知床の秋(2)、ウトロにて
37 知床の秋(1)、鮭遡上
36 風に吹かれて尾瀬ケ原
35 白神山地「ブナの学校」
34 初夏の山形、サクランボとそばの旅
33 ハワイ島滞在記(2)
32 ハワイ島滞在記(1)
31 春の予感、鹿沢(かざわ)高原にて
30 嗚呼!還暦大同窓会
29 年の暮れ、奥那須で想う
28 ラムネの湯「長湯温泉」はいいぞ
27 また「再会の時」道後温泉にて
26 大自然の力、姥湯温泉
25 知床の青いそら、光と風 その
24 知床の青いそら、光と風
23 春の東北ローカル線の旅
22 春の東北ローカル線の旅
21 春の東北ローカル線の旅
20 上海点描
19 やさしかったチェジュの人たち
18 さらば、災の年よ。
17 僕たちのセンチメンタルジャーニー
16 台風を避けて信州へ
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14 よるべない孤独にみちた宿
13 海があまりに碧いのです
12 安曇野の光と水、そして高瀬川渓谷葛温泉
11 鞍馬山の向こうへ、大悲山峰定寺
10 雪の会津鉄道トロッコ列車の旅
9 初春初旅救急車
8 年の暮れ、峩々温泉再訪記
7 東北紅葉旅峩々温泉
6 蔦温泉、蔦沼、ブナの森
5 雨の幕川温泉再訪記
4 憧れのフルム-ン法師の湯
3 信州塩田平別所温泉
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1 東北紅葉雪見風呂
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