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僕の偏見紀行
34 初夏の山形、サクランボとそばの旅
2006年7月2日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ まるきやの「肉そば」。これで並が630円、大盛り730円はお薦め。是非一度お試し下さい。
▲ 月山の広大な雪のスロープとスキーヤー達。
▲ ぶなの森湧水群に湧く泉、手が切れそうなほど冷たく美味しい水がこんこんと湧き出ている。
 米沢駅からレンタカーでまっすぐそばや「新富」に向かった。レンタカーのおじさん一押しの店で「板そば」が美味いという。

 店はかなり大きく、座敷などもある構えだが、おばさんたちがきびきびと立ち働きいい感じであった。

 「板そば」は横長の木製の箱にそばを並べ、1人前頼むと通常のもりそば2人分くらいが出てくる。

 やや甘めのつゆをたっぷりつけて一気にすすりこむとそばの香りが口一杯に広がる。こしがあるのに固すぎない麺を噛み締めると、ほんのり甘いそばの風味が溢れてきてとても美味しい。
 
 そばを堪能した後、次はサクランボを求めて米沢郊外の大きな農園に向かった。沢山のハウスが並び、真っ赤なサクランボがたわわに実っているのが見える。販売所にはお客があふれ凄い賑わいだ。

 食べ放題の試食があってさすが産地だと感謝しつつ、サクランボ狩りをするまでもないほど沢山食べ、すっかり満足した。こんなにサクランボを心置きなく食べたの生まれて初めてではなかろうか。その上お土産に数箱買うと、気前のいいおばさんが小箱を1箱サービスしてくれた。本当に山形は人情厚くいいところだ。

 宿は米沢から福島との県境に向かう山間部の渓流沿いの「小野川温泉」にとった。ここはホタルの里としても有名だが、未だ時期が早かったのか、日暮れ後渓流沿いを散策する人の数はホタルより多かった。しかしひなびた静かな温泉地で定番の温泉饅頭屋さんなどもあり、風情あふれたいい温泉だった。

 次の日は「月山」を目指した。しかしその前に旅の目的の一つである「まるきや」に寄らねばならない。ここの「肉そば」が絶品なのだ。

 月山に向かう途中の西川町にある「まるきや」には11時半頃到着した。未だ準備中の看板がかかり、厨房からはいいおだしの匂いが漂い期待が高まる。

 開店のお昼頃には10人くらいの行列もできた。まるきやは、地元のおばさん達がやっている何の変哲も無いこじんまりとした構えのそばやだが、ここの「肉そば」は大人気なのだ。
 
 僕も初めてこのそばを食べた時驚いた。地鶏の入った汁そばだが、そのおつゆが冷たくその中にそばと鶏肉が浸っている。

 冷たいおつゆには濃厚ながらさっぱりした地鶏の旨みとなんともいえない滋味が溢れ、ごくまっとうな美味しさが迫ってくる。麺の香りと甘みもしっかりとしており、そばとおつゆが渾然一体となって見事な味をかもし出してくれる。僕にとって、ざっくばらんだけど暖かいおばさんの山形弁とともに、一度食べたら忘れられないおそばとなっている。

 まるきやから月山へはすぐだ。山腹の志津温泉を経て山上の駐車場へ向かう。駐車場から10数分歩くとリフト乗り場で、夏スキーを楽しむ客で溢れている。月山はあまりの積雪のため、いつも5月の連休くらいからスキー場がひらくのだ。

 リフトを登りつめるとそこはもう銀世界だった。広大なスロープがなだらかに広がり、山頂は未だはるか遠くだった。広い斜面をゴマ粒のようなスキーヤーがすべるのを眺めながらしばし高山の涼風を楽しむことができた。幸いにも梅雨の晴れ間に恵まれ、遠く連なる山々や山形の平野が霞んでいるのを見ることができた。

 月山から下る途中、山腹の「月山ぶなの森湧水群」を散策した。僕の大好きなぶなの森は初夏の陽光に満ち、あちこちに豊かな湧水が溢れ、美しい池となっていた。

 木々の間には夥しい数のぶなの実の殻が散り敷き、その間から沢山の新芽が芽吹いている。高さ数センチのかわいらしいぶなの子たちはまるでレンゲ畑のように一面に広がっている。このうち一体いくつの命がぶなとして成長できるのだろう。

 いつも感じるのだが、ぶなの森に入ると、光と水が美しくあふれ、空気がかぐわしく、いつの間にか森の豊かな生命力に元気付けられるような気がする。

 最終日は高畠町のワイナリーに立ち寄り、香り高い高畠ワインの試飲など楽しんだ。人気の赤はやや甘口でとてもフルーティ、僕のような素人にも美味しく感じられた。赤ワインのソフトクリームもいい味だった。

 帰りの米沢駅で米沢牛駅弁「牛肉ど真ん中」を仕入れ、これで山形の美味をほぼ網羅できた僕は喜ばしい気持ちで列車に乗り込んだ。
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