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僕の偏見紀行
41 北東北ローカル線の旅(2) うみねこレール
2007年6月17日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ 龍泉洞から豊かな水量で流れ出す川、蒼く澄み切った清冽な流れが心地いい。
▲ うみねこレールの可愛い列車、赤塗りの車体を光らせ張り切っていた。
▲ 大湊駅構内の終点の標識。下北半島の鉄道はここで行き止まり。
 盲腸の先を究めたいと、岩泉まで来たのはいいけれど、三陸海岸線へ戻るのが難しい。列車だと同じルートを辿ることになるし、その上本数も少ない。そこでバスを利用して「三陸鉄道北リアス線」の小本駅まで山越えで向かうことにした。

 バスに乗る前に折角来たのだから「龍泉洞」へ寄ることにした。ここは判明している部分だけで全長2500m、調査中をあわせると5000mにも及ぶ鍾乳洞で、神秘的な地底湖(深さ90m)もある。洞内はアップダウンのきつい道が続き、暗闇と豊かな水流に満ちた空間が広がっている。鮮やかなブルーの地底湖をのぞくと底知れぬ深さに引き込まれそうで怖かった。一人、異次元へ迷い込んだような心細さを感じた。

 バスは予定通り小本駅に着きほっとした。今日は、列車の少ないローカル線を乗り継いで下北半島大湊駅まで行かねばならない。乗り継ぎに失敗すると予定が大幅に狂ってしまう。やがて2両編成の列車が、時折小雨のぱらつく曇り空の下、はかなげな様子でやって来た。乗り込むと暖房が効いておりほっとする。もう5月に入ったというのに、やはり三陸海岸は手強い。

 車内はがらがらで、4人席を独り占めにして座ることが出来た。見るとすこし前のシートに、旅行かばんを脇に置き、白髪の人品卑しからぬ紳士が、一人悠然と座っている。同好の士がいるなと思ったが、こんな時はお互い知らぬ振りをするのがいい。鼻下にたくわえたひげの具合が作家の嵐山光三郎さんによく似ているが、どうだろうか。

 足を投げ出し、三陸の入り組んだ海岸と蒼い海が窓外を過ぎ去るのをぼんやりと眺める。目のくらむような高さの鉄橋の下を、水量豊かな川が太平洋に流れ込んでいる。車掌の案内によると、秋には川面を黒く染めて鮭の大群が遡上するという。

 そのうちに腹がへってきた。旅にでるとやたら腹がへるのはどうしてだろう。今日は乗り継ぎの予定が厳しく、食堂へ入るゆとりがない。そこで宿に頼んでおにぎりを作ってもらった。早速取り出してかぶりつく、塩鮭・おかか・梅干入りの3個のおにぎり沢庵付き、旨い。窓外に広がる美しい風景、そしてガタン・ゴトンと、のどなか列車の響きだけが聞こえる、生きてて良かったなあ。

 久慈に着いた。ここで三陸鉄道とはお別れ、「八戸線・うみねこレール八戸市内線」に乗り換え八戸へ向かう。乗り換えホームへ行くと2両編成の可愛いらしい赤い列車が待っていた。曇り空の下、ホームは寒かった。これから下北半島までいくのだが、どうなるのだろう。

 八戸でさらに東北本線に乗り換える。やはり2両編成のローカル列車だが意外に混んでいた。通学の学生や買物帰りの主婦といった乗客でほぼ満員である。下北への唯一の路線で生活列車でもあるのだろう。それでも中には、リュックを背にカメラを提げた一人旅の熟年男性が見受けられる。

 列車は野辺地で東北本線から「はまなすベイライン大湊線」に乗り入れ、さらに陸奥湾に沿って北上する。雲の合間から薄日が陸奥湾に差し、夕暮れ間近かの海面を鈍い金色に染めている。暮れゆく海辺の光景を一人窓から眺めると、ひとしお旅情が身にしみてくる。
 
 終点大湊駅に着いた。ホーム先端のレールの先には終点・行き止まりの標識が夕闇迫る中に立っていた。僕はこの終点の標識を見るのが好きだ。はるばると遠くまで来たものだ。

 今夜の宿は大湊駅併設のJR経営のホテルにした。簡素で清潔なホテルだったが、夕食は付いていない。地域振興のため近所の食堂を利用してほしいとのことだ。なるほどそうかと夕食に出かける。あまり期待せずに入った食堂のホッケ焼き定食・800円が旨かった。あぶらの乗ったホッケの身がほろほろと口中でほどけ、これぞ北海の味覚かと感じ入った。

 調子に乗ってまたもや生ビール・中ジョッキ一杯などと頼んでしまう。半分でもてあましたが、冷たい夜気の中をほろ酔い加減のいい気分でホテルまで歩いて帰った。

 明日は下北半島を一周する。鉄道は半島付け根の大湊で行き止まりのためレンタカーを予約した。雨にならねばいいが。
 
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24 知床の青いそら、光と風
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22 春の東北ローカル線の旅
21 春の東北ローカル線の旅
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14 よるべない孤独にみちた宿
13 海があまりに碧いのです
12 安曇野の光と水、そして高瀬川渓谷葛温泉
11 鞍馬山の向こうへ、大悲山峰定寺
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8 年の暮れ、峩々温泉再訪記
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6 蔦温泉、蔦沼、ブナの森
5 雨の幕川温泉再訪記
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