1989年創立 個の出会いと交流の場 研究会インフォネット
HOME 研究会インフォネットとは 会員規約 お問い合わせ
会員専用ページ
過去のINFONET REPORT カレンダー 会員連載エッセイ なんでも掲示板
会員紹介 財務報告
会員連載エッセイ
最近の記事 以前の記事
かくてありけり
46 映画館今昔(上)
2008年1月1日
沼田 清 沼田 清 [ぬまた きよし]

1948年、新潟県生まれ。千葉大学工学部卒業。2008年、通信社写真部を卒業、以後は資料写真セクションで嘱託として古い写真の掘り起こしと点検に従事。勤務の傍ら個人的に災害写真史を調べ、現在は明治三陸津波の写真の解明に努めている。仕事を離れては日曜菜園で気分転換を図っている。
▽近所にシネコンが3つ
 昨年、自宅から近い横浜市北西部の都筑区にシネマコンプレックス(シネコン)と呼ばれる大型の上映施設が2つもできた。前からあったものと合わせると、直線で4措紊竜離に3施設が点在し、合計スクリーン数は優に30面を超える集中ぶりだ。

 シネコンに共通するのは大型の複合商業施設の中にあり、駐車場が完備していることだ。その1つ「ららぽーと横浜」の「TOHOシネマ」は客席数が約100―400の13の劇場からなる。「ALWAYS 続・三丁目の夕日」のような話題作は、1時間の差を設けて2つの館で同時上映するので、便利である。座席はすべて指定で、幅と前後の間隔はゆとりがあり、前に大柄な人が座っても支障がない。もちろん冷暖房完備だ。 

 こんな恵まれた施設に来ると、子供のころ通った映画館が思い出される。コンクリート打ちっぱなしの床に並ぶいすは窮屈で、出入りに難儀した。冷暖房はないも同然で、冬は風邪をひきに行くようなものだった。田舎町では都市部から1〜2カ月遅れで上映される。あちこち巡ってやっと来たフィルムは傷んでいて、上映中に切れて中断するのは日常茶飯事であった(「封切り」や「一番館」などの言葉の意味を知ったのはずいぶん後のことだった)。それでも映画は娯楽の王様で、人口たかだか1万の町に最盛期は3つも映画館があった。

▽日本映画産業統計
 そんな映画の今昔を知る上で大変参考になるのは、社団法人日本映画製作者連盟のホームページ(http://www.eiren.org/)である。ここで日本の映画産業に関する1955年以来の年間統計資料が公表されている。その年の数字を年末に集計し、翌年1月末に記者会見で発表する。今回、同連盟にスクリーン数などの最新の数字を教えてもらった。統計を読むと、この50余年の日本の映画興行の変遷がうかがえて、実に興味深い。

▽映画館とスクリーン数
 日本でスクリーン数が最多を記録したのは1960年(以下西暦の下2桁を表記)の7457面。その後は減少し、93年に最盛期の4分の一以下の1734面まで落ち込んだ。現在は3221面まで回復した。これは70年代初めの水準である。しかしその内訳は一般館が415軒で767面に対し、シネコンが283施設で2454面と4分の3強を占めている。私の近所の様相はまさにその一端を示していた。

 地域分布を見ると大都市圏への集中と、地方の過疎の対比が目立っている。東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、兵庫、福岡と北海道などの大都市圏はそれぞれ3桁もあるのに比べ、徳島、島根、高知、鳥取、香川、秋田、宮崎は20面にも満たない。ちなみに都道府県別で最少は徳島の9面。内訳は一般館1軒と、8面を有するシネコンが1つ。

▽入場者数
 入場者数は58年に記録した11億2745万人が最多。当時の人口は9200万人弱なので、単純計算で赤ちゃんからお年寄りまで国民1人当たり12回強。つまり毎月1回は見たことになる。しかし96年には1億1957万人まで落ち込み、1人年1回を割ったが、翌年以降は持ち直して、一昨年は1億6459万人となっている。

▽入場料金 
 入場料金(全国平均)は55年代半ばには60円台だったのが、62年に百円を突破し115円になった。さらに80年に1009円と千円札でも足りなくなった。1998年に1264円のピークを打ち、今はむしろ安くなって1233円台である。映画の観客を呼び戻すための各種割引制度が効いていると思われる。
 たとえば通常は1人1800円の料金が、夫婦の片方が50歳以上なら2人で2000円に。毎週水曜日は「レディース・デイ」として女性は1000円で。60歳以上なら「シニア割引」で常に1000円。また通常1500円の高校生料金を3人以上なら1人1000円の「高校生友情プライス」もある。いまどき1000円で2時間も楽しめるのはありがたい。

▽興行収入
 入場者数最多を記録した58年の興行収入は723億円、映画会社の配給収入は394億円。なにしろ入場料金64円の時代である。同じ年の国の一般会計予算は1兆3121億円。その5.5%相当額の興行収入や3%相当の配給収入はすごいと思う。ちなみに一昨年06年の興行収入は2029億円で、国の06年度一般会計予算約83兆円の0.2%に過ぎない。
 50年代後半から60年代初頭の映画産業の隆盛ぶりは大変なものだった。それは当時の庶民のもう一つの娯楽であったプロ野球の球団経営に、松竹、大映、東映の3社が、鉄道会社と並んで参画していたことでも理解できるだろう。

▽邦画と洋画の逆転
 1986年、配給収入で洋画が邦画を上回った。その構図はずっと続いていたが、06年に逆転して、邦画のシェアが21年ぶりに洋画を上回った。テレビの台頭で低落傾向にあった日本映画の復活は、皮肉なことにテレビ局が製作に加わって、さらにその宣伝力を生かしてヒットさせることで支えられている。この年の興行成績上位10作品はいずれも製作と出資にテレビ局が関わっている。さらに連盟の幹部は「邦画の作り手が若返り、観客に愛される映画を多く作るようになったことが大きい」と語っている。(続く)
最近の記事 ページトップへ 以前の記事
ボーダーを越えて
雨宮 和子
かくてありけり
沼田 清
葉山日記
中山 俊明
寄り道まわり道
吉田 美智枝
NEW
僕の偏見紀行
時津 寿之
NEW
老舗の店頭から
齋藤 恵
ぴくせる日記
橋場 恵梨香
縁の下のバイオリン弾き
西村 万里
やもめ日記
シーラ・ジョンソン
徒然.... in California
明子・ミーダー
きょう一日を穏やかに
永島 さくら
ガルテン〜私の庭物語
原田 美佳
バックナンバー一覧
66 追悼−西永奨さん
65 ご破算で願いましては−14回目の引っ越し
64 続・原爆を撮った男
63 再び・硫黄島の星条旗
62 日曜農園から 「農閑期」
61 富士山頂の星条旗−古写真探偵が行く
60 日曜農園から(4) 「収穫祭」
59 日曜農園から(3) 会計担当
58 日曜農園から(2)−農事暦
57 日曜農園から(1)
56 「トリアージ」再び
55 刷り込み
54 遷宮の撮影
53 定点観測
52 解約返戻金
51 仰げば尊し
50 在宅勤務
49 睡眠時無呼吸症候群
48 映画館今昔(補遺)
47 映画館今昔(下)
46 映画館今昔(上)
45 原爆を撮った男
44 標準温度計
43 続・硫黄島の星条旗
42 knot=結び目
41 硫黄島の星条旗
40 五十嵐君のこと
39 ホケマクイ
38 百科事典
37 白魔
36 私は嘘を申しません
35 再び転勤
34 高所作業車
33 撮影時間の怪
32 色再現
31 空き缶回収の主役
30 続・ビルの谷間に蝶
29 代表撮影
28 人名用漢字
27 ビルの谷間に蝶
26 ホウレンソウに虫
25 残酷でも放送して!
24 人力飛行機
23 ペーパーレス
22 接触を拒否する企業サイト
21 今様1K住宅事情
20 credibility=信憑性
19 超小型走査電子顕微鏡に賭けた二人の男(下)
18 超小型走査電子顕微鏡に賭けた二人の男(上)
17 クレジットの怪
16 遺体写真
15 親密な見知らぬ他人=Intimate Stranger
14 走査型電子顕微鏡写真
13 気送管
12 カメラ付き携帯電話
11 続・合成写真
10 合成写真
9 帰還不能点
8 藤子不二雄の先見性
7 図書館は今
6 裏焼き
5 デジタルカメラ
4 Made in occupied Japan
3 トリアージ=負傷者選別
2 怖い夢
1 亡命
ページトップへ
Copyright(C) FORUM INFONET, All rights reserved. Copyright(C) FORUM INFONET, All rights reserved.
掲載の記事・写真・イラスト等、全てのコンテンツの無断転載・複写を禁じます。
0 7 6 0 4 6 0 4
昨日の訪問者数0 5 5 1 8 本日の現在までの訪問者数0 3 6 0 1