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ボーダーを越えて
197 思い切り生きる
2017年1月5日
雨宮 和子 雨宮 和子 [あめみや かずこ]

1947年、東京都生まれ。だが、子どものときからあちこちに移動して、故郷なるものがない。1971年から1年3ヶ月を東南アジアで過ごした後、カリフォルニアに移住し、現在に至る。ボリビアへの沖縄移民について調べたり書いたりしているが、配偶者のアボカド農園経営も手伝う何でも屋。家族は、配偶者、犬1匹、猫1匹、オウム1羽。
▲ 我が家に加わった銅像(?)。ご近所の方々にもたまたま家の前を通りがかった人たちにも喜んでもらっています。

誠に遅ればせながら、新年おめでとうございます。
新年一斉エッセイアップに間に合わず、後ろめたい気持ちでいっぱいです。

言い訳を許していただけるなら、管理人さんの「無理はしないように」というお言葉に甘えて、どうしてもやらなければならない作業をしていたのです。年末の最後の週には徹夜作業が続き、大晦日の午後までアップアップ(エッセイのアップとは違うアップです)していました。2007年の大火事で壊滅したアボカド農園の再建の経理に関わることで、国に提出するものの準備ですから、時間の融通が利きません。 元日は半日だけ仕事をし、2日から仕事再開。それで3日にやっと終えることができ、ホッと一息つきました。

昨年はアボカド園再建の最終段階でした。再建とは言っても、水不足と労働費の上昇と国際競争の激化でカリフォルニアのアボカド産業は岐路に立たされ、アボカド生産で安定した生活を期待できるかどうかは疑問で、どうやったら赤字を最小限に抑えられるかを考えている始末。それで、別なことで収入を確保しなければ、と、不動産に経済基盤の確立を進めた一年でした。数字は苦手、お金儲けには無関心、という私がいつの間にか経理の責任を一切負うようになり、「こんなことは好きでやっているんじゃない」と心の中でぼやきながら、とにかく一生懸命にやり抜けました。その成果が実りつつあり、心身ともに一段落しています。

今年は、もっと自分の好きなことをして、自分らしい生き方で、思い切り生きていきたいと思っています。

思い切り生きると言っても、好きなことに専念するとか、旅行をしまくるとかいうのではありません。一日一日を大切にして、生きていてよかったなぁと思えるように過ごしたいのです。

去年、友人が脳腫瘍の手術をしたと書きましたが、彼は11月30日に他界してしまいました。でも、それまでの日々を思い切りいきたのです。手術は2回もし、いろいろな治療もし、放射線治療のために角膜剥離が起きてその手術もしたりして十分に見えなくなってしまったのに、嘆くことも愚痴をこぼすこともなく、淡々とした態度を崩すことはありませんでした。その彼、アルフレードに付き添ったマリクレアは、いつ彼を失うかもしれないという恐れに負けることなく、毎日彼との散歩を続け、彼と一緒に音楽を楽しみ、彼の好きな文学を読んで彼の目になり、これ以上充実した人生はないと思いながら、毎日を送りました。アルフレードは画家でしたが、絵を描いてお金を儲けようなどという気持ちは微塵も持たず、自分の好きなことをして、人には限りなく優しく、彼らしく思い切り生き続けていきました。その彼と一緒にいられる毎日がとても幸せ、というメールをマリクレアはしばしば送ってきました。決して無理をしてそう言っているのではないことは、文面からよぅくわかりました。

そんな風に、私も、私らしく思い切り生きていきたい。そう思います。

何が私らしいことか―それははっきりとはわかりませんけど、私の周囲の人たちが喜べば 私も幸せ気分になります。それなら人を喜ばせることを、どんどんやっていこう、そんなふうに考えています。

それで、元旦にある人をお見舞いに行きました。連れ合いの親友だった人(故人)の弟で、私にとっては親しい人ではないのですが、腎臓癌で我が家からそう遠くないところにある施設で療養しているということをつい最近知ったのです。クリスマス前に連れ合いが彼に電話したところ、彼は離婚して独り身になり、両親も亡くなり、アラスカに住むお姉さんが度々来てくれる以外は訪ねて来る人はなさそうだということがわかりました。お正月でも誰も来ないというのはあまりにも寂しいではありませんか。それで、元旦にお見舞いに行きましょうよ、と連れ合いに言うと、彼も賛成したので、出かけて行きました。

お見舞いですから、花を持っていこうと思ったのですが、切り花は長く持っても1週間ですから、ほとんど水をやらなくても何週間も、ひょっとしたら何ヶ月も、咲き続けてくれる蘭の鉢植えを持っていくことにしました。

突然現れた私たちに、その人はびっくりしていましたが、とっても嬉しそうでした。なんでも正直に話してくれて、咳が止まらなくて検査を受けたら肺に癌が見つかり、その癌は腎臓癌が転移したものだということがわかって大手術をしたそうです。手術後、試験的なドラッグで生き延びて来たとか。「いま、こうやって生きているのが不思議なくらいだけど、生きていて良かったと思うよ」と彼は言いながらも、その薬の副作用が出始め、これからどうするか決めなければならない、ホスピスへ行くことになるかも、とも言いました。そこには自己憐憫の響きはありませんでした。

話しながらも、目に届くところに置かれた白い蘭を見て「綺麗な花だねぇ」と何度も言い、私はこの蘭を選んで本当によかったと思いました。ほとんど手間がかからない蘭ですが、「ときどき水をやりに来るわね」と言って、私たちは帰って来ました。本当にそうするつもりです。お見舞いに行って良かったね、と私たちはお互いに何度も言いました。

ほんとうにささやかなことですが、自分にとってなんだかとっても大事なことで今年の基調としたような気がしています。 自分に無理なくできることで人に喜んでもらえることをたくさんして、生きて行きたいと思います。それが思い切り生きることの1つなのではないか、という気がして‥‥
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124 やって来た山火事(9)いとおしい木々
123 やって来た山火事(8)現実に直面して
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118 やって来た山火事(3)第1日目の夜
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106 キューバ:アメリカの恥
105 キューバ:バラコア
104 キューバ:甘い歴史の苦い思い出
103 キューバ:2つの通貨
102 キューバ:近過ぎて遠い国
101 ホンジュラス(最終回)去る者,残る者
100 ホンジュラス(19)シエンプレ・ウニードス
99 ホンジュラス(18)ガリフナ放送
98 あと1年、だったら
97 無信仰者のクリスマス
96 ホンジュラス(17)ガリフナ
95 ホンジュラス(16)バナナ共和国
94 ホンジュラス(15)マヤ文明の跡
93 ホンジュラス(14)牢獄の中と外
92 ホンジュラス(13)先住民の女性たち
91 ホンジュラス(12)一番安全な町
90 ホンジュラス(11)オランチョの森(下)
89 ホンジュラス(10)オランチョの森(上)
88 金鉱の陰で(追記)カリフォルニアで
87 ホンジュラス(9)金鉱の陰で(下)
86 ホンジュラス(8)金鉱の陰で (中)
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84 ホンジュラス(6)原則に沿って
83 ホンジュラス(5)農地のない農民
82 移民政争とラティノの力(続)
81 移民政争とラティノの力
80 ホンジュラス(4)消え去った人々
79 ホンジュラス(3)ホテル・ナンキンで
78 ホンジュラス(2)レンピーラ
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75 豊かな心
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72 愛の表現
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69 思わぬ道草(最終回)原点
68 思わぬ道草(19)回復に向けて
67 思わぬ道草(18)人は孤島にあらず
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65 思わぬ道草(17)一歩後退の教訓
64 思わぬ道草(16)日没症候群
63 甦生の兆し
62 ニューオーリーンズとクリスチャン
61 思わぬ道草(15)もつれた糸
60 思わぬ道草(14)彼の青い目(下)
59 思わぬ道草(13)彼の青い目(上)
58 思わぬ道草(12)ローマ鎧
57 思わぬ道草(11)看護師騒動
56 思わぬ道草(10)近くの他人
55 思わぬ道草(9)ロールバー
54 思わぬ道草(8)楽観の2日間
53 思わぬ道草(7)一人三脚
52 思わぬ道草(6)長い夜
51 思わぬ道草(5)OR
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46 訛った英語
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43 海の中に(下)
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39 国籍あれこれ:選択肢
38 国籍あれこれ:彼の場合
37 国籍あれこれ:私の場合
36 ボーダーとは
35 最終回:グローバリゼーション
34 番外編:クリスマス・ディナー
33 サンタアナの風
32 お刺身パーティー
31 アボカド泥棒
30 アボカドと生きる鳥
29 カラスのご馳走
28 三つ子の魂
27 子宝のもと?
26 アボカド探検家
25 ゴールドラッシュの波紋(下)
24 ゴールドラッシュの波紋(上)
23 海を渡って(下)
22 海を渡って (上)
21 コンキスタドール
20 アボカド事始め
19 ハースマザーの行方
18 世界アボカド会議
17 フエルテ
16 ハースマザーの木(下)
15 ハースマザーの木(上)
14 鶏より馬
13 働く人々
12 花婿の父
11 シンコ・デ・マヨ
10 「奇跡の3月」
9 アボカド形の穴
8 父親不明
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