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僕の偏見紀行
50 イリオモテヤマネコに逢いたくて(4)
2008年3月3日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ ヤマネコ注意の看板。あちこちで見かけたが、残念ながら本物には逢えなかった。
▲ 大原港そばの「波止場食堂」。外観や造りもメニューと同じくシンプルで素朴だった。食べたそばはとても美味しかった。
▲ お昼に食べた「カニ汁定食」。大きなカニ1匹丸ごとでてきたので驚いた。とても旨かった。
島の道路を行き来するたび、あちこちで「ヤマネコ注意」の立看板を目にした。特に深い森が道路まで迫っているところあたりに多かった。今は子育ての時期で、動きが激しいのか、夕暮れ時に道路に飛び出し交通事故に遭うこともあるという。

何とかひと目でいいからイリオモテヤマネコに逢いたい、と願いつつ僕も西表にやって来た。しかし簡単ではなかった。記録写真を見ると、夜の深い森の水辺や木陰などが多かった。

夜のジャングルはハブの危険もあるし、とても素人の行ける所ではない。せめて夕暮れ時、ホテルへ戻る道すがら出会えぬものかと、毎日思いつつ走ったが、出会えるのは立て看板のみだった。

ある日の夕方、ヤマネコに逢いたいと思いつつ車を走らせていると、上空から車の正面に向かって何か黒い影が急接近してきてはっと驚いた。茶色の大型の鳥が2羽、カンムリワシだと思う。2羽ということはつがいだったのだろうか。

そのあたりでは、後日また同じように夕方2羽のカンムリワシと遭遇した。きっと近くに巣があったのだろう、しかしなんのために車に向かってきたのだろうか。敵への威嚇だったのだろうか。

西表滞在中、クルーズやドライブに毎日出かけたが、楽しみは島の食堂の昼ごはんだった。といってもそんなに沢山の食堂があるわけではなく、特にオフシーズンのため休業中の店もあって、限られた店に通うことになった。

大原港のそばにあった「波止場食堂」は年配のオバアチャンが1人でやっていた。メニューはシンプルで明快、そば・めし・やきそばとこれだけ。そば500円也を頼むと、ラフティと紅しょうがをのせた太めのやや縮れた麺が、だしのきいたスープと出てきた。ごはんとお漬物、山菜の煮付けも付いている。

この山菜はオバアチャンが山で摘んできたそうで、美味しいというと、おまけがどんぶりごと出てきた。「波止場食堂」のオバアチャンは太っ腹だった。

星砂の浜を過ぎてしばらく走ると右手に「唐変木」の看板が見えてくる。喫茶店だがお昼はイカスミそばやゴーヤチャンプルなどの定食メニューがある。僕がここで季節限定の「カニ汁定食」を頼むと、大きなカニがまるごと1匹出てきて迫力満点だった。

今の時期にマングローブ林で獲れるガサミというカニで内地のワタリガニの仲間と聞いたが、ハサミが大きく殻も頑丈だった。殻には白い身がぎっしりと詰まり、お腹には濃厚な旨みのミソもたっぷりだった。

この店には三線が飾ってあったので尋ねると、裏に三線の工房があるということだった。見学にお邪魔すると、激しいロックの響きをバックに作業中のご主人がいたのでお話を伺った。

本来は大工さんで、趣味で三線を作り始めたが、徹底した手造りのため、材料の入手が段々と困難になりつつあるそうだ。特に棹の黒檀は入手が困難で、ご主人は地元の山で自ら琉球黒檀を切り出してくるそうだ。

乾燥中の黒檀材を見せてもらったが、棹につかういわゆる黒檀は幹の芯の部分に少しあるだけで、これを集めるのは大変だと良くわかった。最近は東南アジアからの輸入が多いそうだ。

木工家具や木彫もやっているご主人は当初とっつき難い感じだったが、話をしてみると三線についていろいろと教えてくれ、とても親切な人だった。沖縄地方で出会う人は本当に心優しく親切だと思うが、やはりこの先島地方でもそうだった。

少しくたびれ気味だった僕も、西表から帰る頃には、森や海のパワーと出会った人たちの優しい心のお陰ですっかり元気になっていた。     (終わり)
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90 マイ・センチメンタル・ジャーニー
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68 インド紀行(5)夜行寝台「ハウラー・カルカ・メイル・2311号」
67 インド紀行(4)ダージリン滞在
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64 インド紀行(1)遠かったインド
63 暮れの浅草昼酒
62 雨の東北、芭蕉と紅葉旅
61 南会津の旅◆扮の尾瀬沼)
60 南会津の旅 弁愡浚村)
59 奥日光戦場ヶ原
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57 スコットランド紀行(4)偉大なり、ピーター・ラビット
56 スコットランド紀行(3)ネス湖からスカイ島へ
55 スコットランド紀行(2)ウォールフラワー
54 スコットランド紀行(1)エジンバラ大学でお茶を
53 風に吹かれて八丈島(3)
52 風に吹かれて八丈島(2)
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50 イリオモテヤマネコに逢いたくて(4)
49 イリオモテヤマネコに逢いたくて(3)
48 イリオモテヤマネコに逢いたくて(2)
47 イリオモテヤマネコに逢いたくて(1)
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43 北東北ローカル線の旅 (4)津軽じょんがらの夜はふけて
42 北東北ローカル線の旅(3) 雨の下北恐山
41 北東北ローカル線の旅(2) うみねこレール
40 北東北ローカル線の旅(1) 春のうららのドリームライン
39 50年の時を超えて
38 知床の秋(2)、ウトロにて
37 知床の秋(1)、鮭遡上
36 風に吹かれて尾瀬ケ原
35 白神山地「ブナの学校」
34 初夏の山形、サクランボとそばの旅
33 ハワイ島滞在記(2)
32 ハワイ島滞在記(1)
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30 嗚呼!還暦大同窓会
29 年の暮れ、奥那須で想う
28 ラムネの湯「長湯温泉」はいいぞ
27 また「再会の時」道後温泉にて
26 大自然の力、姥湯温泉
25 知床の青いそら、光と風 その
24 知床の青いそら、光と風
23 春の東北ローカル線の旅
22 春の東北ローカル線の旅
21 春の東北ローカル線の旅
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18 さらば、災の年よ。
17 僕たちのセンチメンタルジャーニー
16 台風を避けて信州へ
15 青島印象記
14 よるべない孤独にみちた宿
13 海があまりに碧いのです
12 安曇野の光と水、そして高瀬川渓谷葛温泉
11 鞍馬山の向こうへ、大悲山峰定寺
10 雪の会津鉄道トロッコ列車の旅
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8 年の暮れ、峩々温泉再訪記
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6 蔦温泉、蔦沼、ブナの森
5 雨の幕川温泉再訪記
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