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僕の偏見紀行
46 秋空の下、いくつかの再会
2008年1月1日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ 夕暮れ時、船頭さんの見事な竿さばきで船が出る。
▲ 水路のはじめにあるメインステージ。白秋ゆかりの詩の朗読など催される。
▲ 途中の舞台で激しく太鼓を演奏する若者達
 11月初めの1週間、懐かしい人々との再会がいくつか続いた。

 白秋祭に来ないか、とヨシハラ君から誘いがあったのは8月頃だった。彼の奥さんの高校時代の仲間が、白秋祭に船を1艘仕立てるということだった。ヨシハラ君と僕は九州久留米の明善高、奥さんは隣町の八女高出身ということで、両校の仲間の呉越同舟での舟遊びという趣向である。

 北原白秋の故郷柳川では、毎年11月初めに彼を偲んで白秋祭が行われている。町の水路を船で巡りながら、途中に設けられた沢山の舞台を楽しみ、白秋を偲ぶという優雅な祭りらしい。秋の一夜を、旧友たちと柳川の夜風に吹かれながら一献かたむけるのも一興と九州へ向かった。

 明善仲間のフルタ君夫妻と、西鉄電車で柳川に着くと懐かしいイノウエ君が待っていた。彼とは東京勤務時代に時々会って一杯やっていたが、今はリタイアして久留米に戻っている。久しぶりの再会をお互い顔中しわだらけにして喜んだ。

 船着場ではバスや車で続々と人々が集まってきており、期待に胸が高鳴る。15名くらい乗る船が100艘以上出るらしい。ずらりと並んだ沢山の船が荘観である。

 6時半頃から順番に船が出て行く。約2時間くらいの船旅である。最初のメインステージでは、夕暮れの淡い光の中で白秋ゆかりの歌や詩の朗読など催されなかなかの風情である。

 途中の橋の上から花火が渡され、それを船の子供たちがあげたりしながら水路を巡ると、次から次へと様々な趣向の舞台が現われてくる。歌や詩から始まって、能・雅楽・ブラスバンド・太鼓・お琴など飽きることが無い。

 最後は全ての船が集まったところで盛大に花火が打ち上げられ、祭りのフィナーレを飾った。澄んだ秋の夜空を彩る花火を旧友たちと眺めながら、僕は他愛ない子供のように久しぶりの再会を楽しんだ。

 九州から戻ると大学のカメラ部の仲間との再会が待っていた。例年秋には同期の数名で小旅行に出ることにしているが、今年は九州から関東方面へ出かけてくることになっていた。

 箱根散策を楽しんだ彼らと横浜のホテルで落ち合った。中華街で本格中華料理を堪能しようというのが今回のメインテーマである。料理店は関東在住の僕が任されたのだが、迷ったあげく結局僕のいきつけの店に決めた。

 中華街関帝廟近くのこじんまりとした家族経営の中華料理店である。しっかり者の奥さんが切り盛りする家族経営と見受けられるいい店だ。20年前、本社転勤で横浜に住んで以来の付き合いで、千葉に転居後も毎年正月は家族でアクアラインを越えて出かけることにしている。

 九州から来た8名とこちらで合流した東京組が4名という大人数で、店奥の座敷の円卓に陣取った。この店の魅力は料理が美味しいのは当然だが、値段も実にリーズナブルといえることだ。さらにたどたどしい日本語ながら、必死に大きな皿を抱えて走り回る中国人らしい女の子達のサービスも気持ちがいい。

 美味しい料理と酒にみんな大いに盛り上がった。最後は店にあるだけの紹興酒を飲んでしまい、もうこれでお終いです、と言われる始末だ。また、コースの終わり頃にでたチャーハンはみんなが驚くほど旨かった。

 すっかり盛り上がった僕等はカラオケへ繰り出した。みんな相当酔っ払っており、歌ったり、喋ったり、居眠りしたり、それぞれに勝手にやっている。仲間はもう殆どがリタイアして、これからどう人生を充実させていくか、考える時期に差しかかった。奥さんと豪華客船クルーズに出かけるというのもいた。子供達には何も残さないということらしい。

 深夜、帆船のような形をしたホテルの部屋からぼんやりと横浜港の夜景を一人眺めながら、今回は騒ぐばかりでじっくりと語る機会はあまり無かったなあ、と思った。

 横浜の後、大学の恩師の退官記念講義に出席するため再び九州へ向かった。僕は福岡のプロテスタント系の大学を卒業した。先生は当時赴任したばかりの新進気鋭の英文科講師で言語学が専門であった。カメラ部の部室にばかり出席していた僕にはあまり面白い講義ではなかった。先生はその後も母校で教鞭をとり、最終的には学長にまでなられた。

 先生にとってあまり熱心な学生ではなかった僕だが、先生の奥さんが僕等の同期生仲間であるというご縁もあって、柄にも無く記念講義へ出席するということになった。

 講義の前に、先生の奥さんも含めた数名の仲間と久しぶりのキャンパスを散策した。新しい建物が増えて昔の面影は少ない。古いチャペル兼講堂は再建のため取り壊し中であった。そこでは毎週先生達が交代で人生や学問について熱く語ってくれた。しかし生意気な若造であった僕はそれを馬鹿にしてよくさぼった。だからだろう、未だに僕はオロかな人生をさ迷っている。

 先生の講義のテーマは「スコットランドの言語と文化」という格調の高いものであった。先生が用意した古いスコットランド民謡を聞いたり、分かりやすく楽しい授業だった。多分これは先生が、僕等オロかなOBのために密かに苦心されたお陰だろう。

 2次会のパーティでの記念撮影の時に僕等は最年長OBとして最前列に先生夫妻と並んで座った。卒業以来40年、最後の挨拶に立った先生夫妻を見ながら、僕は過ぎ去った膨大な時の流れと、僕を含めた仲間が過ごしてきた人生を思った。
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65 インド紀行(2)コルカタにて
64 インド紀行(1)遠かったインド
63 暮れの浅草昼酒
62 雨の東北、芭蕉と紅葉旅
61 南会津の旅◆扮の尾瀬沼)
60 南会津の旅 弁愡浚村)
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