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僕の偏見紀行
56 スコットランド紀行(3)ネス湖からスカイ島へ
2008年6月18日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ ネス湖のほとりの「アーカート城」、静かで絵の様に美しい風景だった。
▲ ハイランド地方の山間部をスカイ島へ向かう途中、小さな川のほとりでバスを止めて附近を散策。人の気配の全くない、太古からの大自然のような光景。
▲ スカイ島にて、そそり立つ断崖。風が強かった。
アバディーンで1泊後、バスはひたすらハイランド地方を目指して走った。郊外へでるとすぐ、車窓にはなだらかな牧場が広がる。見渡す限りの緑の牧草地では、沢山の羊や牛が群れていた。

不思議なことに、こちらの牛や羊は大半がゆったりと寝そべって寛いでいるではないか。あまり日本では見かけない光景だった。自然が豊かな環境だと、動物達も気持ちにゆとりが出るのだろうか。

バスはダフタウンに到着、シングルモルトのメッカ、スペイサイドのグレンフィディック醸造所へ立ち寄った。案内してくれた娘さんは、世界で一番売れている、サントリーより沢山売れているシングルモルトだ、とニコニコ顔で嬉しそうに力説した。きっと会社とその製品が、とっても好きで誇りなんだろうな。

独特のピートで燻されたシングルモルトウイスキーは、さぞ旨いのだろう。しかし下戸の僕には、試飲してもよく分からなかった。ただ、強烈な香りと初めての刺激を感じた。

シングルモルトもさることながら、この案内の娘さんが素晴らしかった。オーストリア出身という彼女は、身長180cmをゆうに越す、まるで可愛らしい金時さんのように立派な体格だった。勿論どこの民族か、出自は僕には分からないが、ヨーロッパ女性が、恵まれた環境でのびのび育ったら、こうなるだろう典型みたいな、金髪碧眼色白の娘さんだった。

ときおりはにかみながら、ぎごちない日本語を交えて一所懸命に説明してくれる姿に、素朴で飾らない人柄がしのばれた。まさに息子や孫の嫁に来てほしいような娘さんだった。

スペイサイドから、マクベスの舞台となった「コーダー城」を経て、ネス湖を望むインヴァネスへ到着した。明日はいよいよネッシーとのご対面だ。

翌日、我々はカメラ片手にネス湖を目指してバスに乗り込んだ。勿論世紀のスクープをものにして、今度の旅行費ぐらいは稼いでやろうという魂胆であった。

はたして、ネッシーはいるのか、いましたねー。ただしブリキのおもちゃみたいな素朴なネッシーが、休憩所の小さな池に浮かんでいた。しかも時折、首を振ったりして、遥か世界中から集まる観光客に、愛想を振りまいていた。これもイギリス式ユーモア、それとも皮肉なのだろうか。

本物のネス湖は、かなり細長い湖であるが、なだらかな高原に静かなたたずまいを見せていた。まわりの荒涼とした丘陵地帯は、トレッキングを楽しむのに最適の自然環境だった。ネス湖のほとりにある「アーカート城」は、崩れた石壁や塔屋が周りの風景に見事にとけこんで、一幅の名画のようだった。このようにネッシーに頼らずとも、魅力的なネス湖だが、地元関係者としては、ネッシーの存在について観光政策上、いまさらどちらとも結論を出しにくい状況にあるらしい。

バスはさらにハイランド地方を西へ進み、スカイ島を目指す。牧草地の広がる丘陵地帯から、やがて車窓には荒涼とした草原が続くようになった。所々で人々が長方形の穴から、土くれを掘り出すのが見える。あれが有名な泥炭(ピート)堀りなのだろう。一度みたい光景が見れて嬉しかった。

変わりやすい天気のスコットランドとしては珍しく上天気で、雲ひとつない青空が広がる。進むにつれ、益々荒涼とした風景が現われてきた。太古に隆起した山塊がそのまま山頂となり、その間には氷河が深い谷を刻んでいる。まるで、天地創造の光景がそのまま残っているかのようだ。生まれて初めての荒々しい光景にしばし見入ってしまった。

やがてバスは、近年ようやく出来たという橋を渡り、スカイ島へと渡った。道路わきの標識が、いつのまにか英語とケルト語の2重表示になっている。スカイ島はケルトの人々の暮らしや言葉が今でも色濃く残っており、それを学ぶ人たちが世界中から集まってくる。その為にケルト語で授業を行なう学校も設けられており、様々な人たちが学んでいる。いわばケルト文化のメッカなのだ。

島は荒々しい大自然の造形美に満ちていた。強風に白波があおられる断崖絶壁や、屹立する尖塔のような奇岩など見どころは多い。昔の暮らし博物館では、その厳しい生活が偲ばれた。粗末な石壁と草葺屋根の小屋での生活は、この寒い地方でどんなにか大変だったことだろう。

スカイ島の宿は唯一の町ポートリーにある「ポートリーホテル」だった。このホテルがなかなか味わい深かった。昔ながらの旅籠、といった趣のある小さなホテルで、外国人が大挙して泊まることも稀なのだろう。従業員の若者達も不器用ながら一生懸命だった。

夕食は地元の海鮮料理ということで、手長海老のレモンライス添えだったが、これがとても美味しく、この時ばかりはみんな静かになってしまった。量もたっぷりあり、一人あたり10数匹あって焦る必要が無いのもよかった。

この数十匹の海老と山盛りライスの載ったガラスのボードをホテルのニイチャンが軽々と運んできたのには驚いた。思わずみんなで拍手すると、嬉しそうに色白の頬を赤らめていたのが愛嬌があった。

海老とレモンライス、半パイントの地ビール、それにデザートまで腹一杯食べて苦しくなった腹を抱えて、食後の散歩に出た。もうすでに夜の9時半を過ぎていたが、ポートリー港では漁船の荷揚げが盛んに行なわれ、明るい夕陽が眩しかった。             (続く)
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37 知床の秋(1)、鮭遡上
36 風に吹かれて尾瀬ケ原
35 白神山地「ブナの学校」
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33 ハワイ島滞在記(2)
32 ハワイ島滞在記(1)
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30 嗚呼!還暦大同窓会
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28 ラムネの湯「長湯温泉」はいいぞ
27 また「再会の時」道後温泉にて
26 大自然の力、姥湯温泉
25 知床の青いそら、光と風 その
24 知床の青いそら、光と風
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22 春の東北ローカル線の旅
21 春の東北ローカル線の旅
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15 青島印象記
14 よるべない孤独にみちた宿
13 海があまりに碧いのです
12 安曇野の光と水、そして高瀬川渓谷葛温泉
11 鞍馬山の向こうへ、大悲山峰定寺
10 雪の会津鉄道トロッコ列車の旅
9 初春初旅救急車
8 年の暮れ、峩々温泉再訪記
7 東北紅葉旅峩々温泉
6 蔦温泉、蔦沼、ブナの森
5 雨の幕川温泉再訪記
4 憧れのフルム-ン法師の湯
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1 東北紅葉雪見風呂
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