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僕の偏見紀行
213 座間味島の夏
2017年1月1日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ ミシュラン・グリーンガイド 2つ星の古座間味ビーチ。毎日ここに通って泳いだり潜ったりした。
▲ ある日の夕食。地元の魚のから揚げに冷たいビールがよく合う。白いご飯がおいしかった。
▲ 夕暮れに咲いて夜明けに散るという、一夜限りの「サガリバナ」。
2月の終わり頃真冬の寒い中、新橋ガード下のヤキトン屋(ヤキトリではない)で高校同期の仲間と一杯やった。ヨシヒロ君、ジョーさんそして僕、オーバー・セブンティ3人組。

焼酎のお湯割りにブタのハツ塩をかじり、大いに気炎を上げた。そこで夏の沖縄、座間味島大遠征が決定した。碧い海と空、白く輝く入道雲の下で大いに羽を伸ばし、返りこぬ青春の日々を偲びたい。もっとも3人とも普段から羽を伸ばしてるけどね。

ヨシヒロ君たちは毎年座間味へ出かけている。今年はいつものメンバーに欠員が出たので僕に声がかかった。久しぶりの紺碧の空と海、いいなあ。僕はすぐこの話に乗った。

そして4ケ月後の6月末、僕は灼熱の太がまぶしい那覇の街を歩いていた。沖縄は6月20日に梅雨明けし、それ以降連日鮮やかな青空が続いていた。プランを練ったヨシヒロ君の読みがずばり当たり、僕らは連日好天に恵まれた。

僕は待ち合わせの前日に沖縄に入り、我が人生の大先輩、敬愛する旧友チョーユーさんと会った。久しぶりのチョウーユーさんは一段と年老いて見えた。

もう80近いから無理も無いが、かつての高校野球のエース、空手2段のチョーユー氏もやはり老いるのか。当たり前のことだけどなぜか淋しい。

翌日約束の時間に泊り港へ行くと待合室で二人の老人が僕を待っていた。僕を加えて老人3人組は無事集合、誰も迷子にならずよかった。。

岸壁には既に座間味島行きの高速船が待っていた。未だ夏休み前の平日というのに乗客は多かった。冷房の効いた船室に席を確保して甲板へ出た。実はもう1人仲間が増えるという話だ。

当初不参加だったカズオ君が急遽来るらしい。同行できなかったけど、沖縄島巡りツアーに申し込んだのだ。座間味のホテルで1泊するので僕らと合流できる。

カズオ君が、泊り港のホテルから僕らの見送りに来るというので甲板で待つことにした。彼は照りつける厳しい日差しの下を歩いてやって来た。はやりのストローハットにコットンパンツ、相変わらずお洒落だ。これならまだまだ女にもてるだろう。

岸壁の彼と甲板の僕らで話がはずんだ。彼は大声で近況報告を始め、最近まとまった娘さんのおめでた話などを話した。座間味でゆっくり会えるのに、わざわざ炎天下を見送りに来て、そんな話をする彼の気持ちが嬉しかった。

船は外海に出ると少し揺れた。船に弱いジョーさんは酔い止めを飲んで目を閉じたままだ。やがて座間味の島影が見えて来た。青空の下の緑の島影、こころ休まる風景だ。

座間味港に着くと民宿の主人が待っていた。苦みばしったいい男、人よんで座間味のアラン・ドロン、ちょっと古かったかな。奥さんは関東出身らしいが、座間味で彼と出会い座間味の人となってしまった。ロマンチックないい話だ。この奥さんの造る料理が良かった。

朝食は洋風、夕食は和風、地元の食材がふんだんに使われ、新鮮な刺身や魚のから揚げ等とても旨かった。4泊したけど毎日飽きることなく食事が楽しみだった。

民宿は港から山手へ歩いても10分足らず、水源池へ続く山道が始まるあたりにあった。宿泊棟の裏は深い森が迫り、盛んにセミが鳴いていた。部屋に入り戸を開け放すと、心地よい風が吹きぬけていく。畳に大の字になって一休みする。

宿からビーチまでは車で10分足らず、毎日主人が送迎してくれた。僕らが通った古座間味ビーチはミシュラン・グリーンガイドで2つ星という。宿から峠をひとつ越えた先に広がる白い砂浜の海岸が美しい。

海は波打ち際からほんの数メートルで急に深くなり、海底の黒い岩礁が見えてくる。そこを潜ると名も知らぬ(僕が知らないだけ)魚たちが群れをなして泳いでいる。色鮮やかな小魚の群れ、刺身にしたら旨そうな白い半透明の細身の魚等、魚種は豊富だ。

もっと沖の岩礁の根元で白黒まだらのヒモが揺らめいている。どうやらウミヘビのようだ。これのとぐろを巻いた干物は地元では特別なご馳走となっている。

僕は海水浴は子供たちが幼い頃家族連れで行っていた頃以来だし、シュノーケリングはハワイで真似事をしただけの初心者だ。深く潜るのは無理だったが、海面に浮いて水中を覗きまわるのは想像以上に楽しかった。

僕のそばでいい年のジジイが飯粒を小魚に与えていた。汚いなあ、と思っていたら、ライフセーバーにおこられた。いい気味だ、老人のくせに分別の無い奴だ。話の具合からすると常習者のようだ。この浜辺に並ぶのはレンタルのビーチパラソルだけ、そして当然禁煙だ。

カズオ君が来た日、夕食は外でとることにした。メンバーが4人に増えたのでわれわれは大いに盛り上がった。よくあんなに喋ることがあったもんだ。ただ思いつくまま、何の遠慮も無く話していると話題は尽きなかった。

同期の女子の話になると一段と熱が入った。今更云々しても詮無いことだけど、思い返せばいろいろあった。詰襟の学生服に坊主頭、運動会は裸足、思えばさえないけれど楽しい青春だった。

あれから数十年、みんな相応の経験を積み、ひとかどのオヤジになった。それでも中身は何にも変わらない。過ぎ去った長い年月は本当に夢のまた夢だ。

カズオ君は一晩で帰って行った。我々に会うため、会って一緒に一杯やるため、はるばるやって来たのに。

宿で夕食が終わると、毎晩部屋で3人の宴会が始まった。手持ちの酒が切れると買出しに行かねばならない。酒を売っている雑貨屋まで歩いて10分足らずだった。島に1軒しかないそこはコンビニ兼よろずやで、酒は勿論、おつまみ、そして水割り用の氷まで置いていた。

買出しには真っ暗な夜道を3人でブラブラ歩いて出かけた。会計担当のジョーさんが買い物も仕切った。彼以外は数字に弱く金銭を扱うのに不向きだった。ジョーさんは理系の人でしかも几帳面。頼りがいがあり、ボランティア先でも人望があるという。自分でいってる話だけどね。

ヨシヒロ君は海を愛するスポーツマン、面倒見のいい頼れる友人だ。座間味行きのお膳立ては全て彼がやってくれた。僕はイロイロわがままをいいながらそれにのっただけだ。いい友を持って幸せだ。

買い物を済ませると酒や氷、おつまみを手分けしてさげて歩いた。夜道をビニール袋をさげて歩くと、学生時代の合宿やキャンプの夜を思い出す。

ある夜、いい気持ちで歩いていた僕は手元が狂い、氷の袋を道路にぶちまけてしまった。せっかくの氷が台無しだ、ドジな話だ。

座間味最後の夜、夕食後に宿の主人が島の展望台へ案内してくれた。海岸線から続く山道を登りつめると海が見えて来た。予想以上にスケールの大きな眺めだ。暮れかかる海を背景に山なみがうねり、遠くに展望台のシルエットが見えた。

展望台から海を眺めた。夕日が沈むにつれ海と空の色は刻々と変化した。蒼い空が灰色に変わりやがて赤く染まった。海は次第に黒い影となった。

夕陽をバックに3人で記念写真を撮った、つもりだったが逆光でダメだった。これで元写真部なんだけど、まずいなあ。

翌朝、夜明け前に一人で宿のまわりを歩いた。未だ森は暗い緑につつまれ静かだ。宿入り口の、一夜限りというサガリバナが咲いていた。(終わり)
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81 シルクロードの旅(4)ブハラへの道
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78 シルクロードの旅(1)タシュケント到着
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76 小笠原の旅(6)小笠原海洋センター
75 小笠原の旅(5)母島列島
74 小笠原の旅(4)宝石の島、南島
73 小笠原の旅(3)ザトウクジラの海
72 小笠原の旅(2)BONIN ISLANDS
71 小笠原の旅(1)波路はるかに
70 インド紀行(7)タージ・マハルの光と影
69 インド紀行(6)ガンジス川の夜明け
68 インド紀行(5)夜行寝台「ハウラー・カルカ・メイル・2311号」
67 インド紀行(4)ダージリン滞在
66 インド紀行(3)ダージリンへの道
65 インド紀行(2)コルカタにて
64 インド紀行(1)遠かったインド
63 暮れの浅草昼酒
62 雨の東北、芭蕉と紅葉旅
61 南会津の旅◆扮の尾瀬沼)
60 南会津の旅 弁愡浚村)
59 奥日光戦場ヶ原
58 スコットランド紀行(5)いくつかの思い出
57 スコットランド紀行(4)偉大なり、ピーター・ラビット
56 スコットランド紀行(3)ネス湖からスカイ島へ
55 スコットランド紀行(2)ウォールフラワー
54 スコットランド紀行(1)エジンバラ大学でお茶を
53 風に吹かれて八丈島(3)
52 風に吹かれて八丈島(2)
51 風に吹かれて八丈島(1)
50 イリオモテヤマネコに逢いたくて(4)
49 イリオモテヤマネコに逢いたくて(3)
48 イリオモテヤマネコに逢いたくて(2)
47 イリオモテヤマネコに逢いたくて(1)
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42 北東北ローカル線の旅(3) 雨の下北恐山
41 北東北ローカル線の旅(2) うみねこレール
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39 50年の時を超えて
38 知床の秋(2)、ウトロにて
37 知床の秋(1)、鮭遡上
36 風に吹かれて尾瀬ケ原
35 白神山地「ブナの学校」
34 初夏の山形、サクランボとそばの旅
33 ハワイ島滞在記(2)
32 ハワイ島滞在記(1)
31 春の予感、鹿沢(かざわ)高原にて
30 嗚呼!還暦大同窓会
29 年の暮れ、奥那須で想う
28 ラムネの湯「長湯温泉」はいいぞ
27 また「再会の時」道後温泉にて
26 大自然の力、姥湯温泉
25 知床の青いそら、光と風 その
24 知床の青いそら、光と風
23 春の東北ローカル線の旅
22 春の東北ローカル線の旅
21 春の東北ローカル線の旅
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17 僕たちのセンチメンタルジャーニー
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15 青島印象記
14 よるべない孤独にみちた宿
13 海があまりに碧いのです
12 安曇野の光と水、そして高瀬川渓谷葛温泉
11 鞍馬山の向こうへ、大悲山峰定寺
10 雪の会津鉄道トロッコ列車の旅
9 初春初旅救急車
8 年の暮れ、峩々温泉再訪記
7 東北紅葉旅峩々温泉
6 蔦温泉、蔦沼、ブナの森
5 雨の幕川温泉再訪記
4 憧れのフルム-ン法師の湯
3 信州塩田平別所温泉
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1 東北紅葉雪見風呂
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