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僕の偏見紀行
55 スコットランド紀行(2)ウォールフラワー
2008年6月13日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ 豊かな緑に囲まれた「ニードパス城」の前庭
斜面の下のほうにツィード川が流れる。
▲ 北海を望む断崖に屹立する「ダンノッター城」
▲ 「ダンノッター城」の石壁に咲き誇る壁の花
エジンバラ大の学食を後にしてエジンバラ城へ向かった。城は、キャッスルロックと呼ばれる岩山の天然の要害の上に聳えていた。

ここは、イングランドとの戦いに翻弄された悲劇の女王メアリーにも、ゆかりの深い城である。そのせいか、巨大な石造りの城内は暗く冷たく、陰惨な印象であった。王権の象徴である剣・冠・などの宝器や、スコットランド王が即位の時に座ったという「運命の石」などが展示されていたが、散策してあまり楽しいところではない。

翌日は、エジンバラからツィード川沿いのこじんまりした町ピーブルズへ日帰り旅行に出かけた。途中、ツイード渓谷の入り口あたりの「ニードパス城」に立ち寄る。はるか眼下に美しいツィード川の流れを望み、緑に覆われた斜面の一角に立つお城は、門や外壁に風雪の跡を刻み、歴史を思わせるたたずまいだった。

驚いたことに、その門の残骸のあちこちに美しい花々が、まるで飾り付けたように咲き誇っている、まるで人が意図して制作した石と花のオブジェのように。

周囲には野ウサギの巣穴があり、その近くにはウサギの脚の残骸などもあった。キツネに襲われたのだろうとのガイドの話であった。桜並木の下には水仙が一面に広がり、穏やかな日差しと谷底の川風とが心地よかった。

ピーブルズでは年配の観光客達がゆったりと散歩を楽しむ静かで明るい町だった。ここでしばらく自由に散策し買物をした後、小さなホテルで食事をした。

エジンバラで3泊後、ムラカミ先生が若い頃旅したスコットランドの見どころを巡る旅となった。総勢14名、先生を含め熟年夫婦4組、熟年女性の単身参加者5名、それに日本から同行のベテランガイド1名、現地ガイド1名、ドライバー1名の総勢16名が大型バスに乗り込んで旅は始まった。

コースはエジンバラから北上、まずスターリング・アバディーン・ダフタウンなどを通り、途中のお城やモルトウイスキーの醸造所などを見学する。その後ハイランド地方のネス湖のあるインヴァネスを経て、さらにケルトの歴史を訪ねてスカイ島へ渡る。スコットランド最後の夜は産業革命の街グラスゴーで過ごした後、イングランドの湖水地方を目指す。

スターリングでは、有名なスコットランド独立の英雄ウォーレスをたたえるモニュメントやゆかりのスターリング城を見学、草原に聳えるスターリング城は緑の多い美しい城だった。大広間に飾ってあった中世の生活を描いたタペストリーは見事だった。

アバディーンへの途中立ち寄った「ダンノッター城」は北海の荒波が打ち寄せる断崖絶壁の突端に屹立していた。そこに行くには、草原から急斜面を一旦降り、さらに崖の急斜面を登らねばならない。バスから草原の小道をのんびりと咲き誇る花々を楽しみつつ歩いていた我々は一瞬たじろいでしまった。

苦労してたどり着いたお城は、辛うじて門構えや城壁の一部が残っていて、それが北海から吹き付ける強風にじっと耐えていた。空は晴れ渡り、輝く光は溢れているものの、流石に吹きつのる北海の強風は冷たく、セーターの上に風除けのコートを着て丁度良かった。

そんな中、ここでも崩れかけた石壁のあちこちにまるで花籠を飾ったように花が咲き誇っている。強風の中で、石壁の隙間の僅かな土の上に咲く花は感動的に美しかった。もしかしたらこれがスコットランド魂の表れなのか、と考えてしまった。後で知らなかったが、面白いことに咲いていた花は文字通り「ウオールフラワー」というらしい。

それにしても、こんなローマも来なかったというスコットランドも北の僻地、北海に面した荒地に、何から守ろうとお城など築いたのだろうか。僕は生まれて初めての北海を眺めながら、この城を守り暮らした人々の苦労を偲んだ。

ムラカミ先生に尋ねると、こんな北の荒地でも、さらに北の厳しい環境のバイキングにとって、魅力的な緑の大地だったらしい。そのためバイキングの来襲も多かったという。

なるほど、と僕は思った。温帯モンスーンの豊かな水と緑、さらに米という優れた作物に恵まれ、のほほんと暮らす僕等は、もしかしたら世界の例外なのかもしれない。ヨーロッパ人たちが大航海時代以降、アジア・アフリカなどに進出し、力づくで植民地化していったのもそうなのだろう。民族が生き延びるのは厳しいのだ。(続く)
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60 南会津の旅 弁愡浚村)
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25 知床の青いそら、光と風 その
24 知床の青いそら、光と風
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22 春の東北ローカル線の旅
21 春の東北ローカル線の旅
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5 雨の幕川温泉再訪記
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