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僕の偏見紀行
65 インド紀行(2)コルカタにて
2009年2月26日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ 家庭料理の作り方のコツを教えてくれた奥様と見事なインド料理の数々。普段はこんなに品数は作らないが内容はいつも通りということだった。
▲ 立ち並ぶ屋台をのぞいていたら、写真を撮れ撮れといってポーズをとってくれたオジサン達。明るくて人懐っこい人達だった。
▲ ベナレスの駅前の屋台裏のゴミ捨て場。野良の牛や犬、ヤギが並んでゴミを漁っていた。
ホテルで一休みの後、仲間と貸切バスで外出。目的は市内のあるご家庭にお邪魔してインド家庭料理の夕食をご馳走になること。

実は僕の到着前に、仲間はこれから行くお宅の奥様と市場に食材の買出しに同行していた。インド家庭料理の調理体験から試食を楽しむ企画だ。

夕方近い通りは一段と混雑が激しい、錆びてボロボロの車やバス、荷車、バイク、リキシャなどが行きかう中、人や牛・犬がすり抜けていく。交通警官は沢山立っているが、棒を振り回すだけであまり効果があがっていない。

ベナレスやデリーでもそうだが、車の運転は荒っぽく強引だ。けたたましくクラクションを鳴らして無理な追い越しをかける。車から身を乗り出し、手を振り回して他の車を威嚇しけん制する助手を乗せているバスもあった。

信号が赤になっても強引に突っ込んでくるので油断ならない。気弱な人はインドで運転しないほうがいい。インドの運転は、気合だ!

コルカタは17世紀後半に東インド会社が、フグリー河畔のジャングルに商館を建設したのが始まりで、その後イギリスの植民地支配の拠点として拡大発展した。植民地時代はカルカッタと呼ばれたが、現在は昔のコルカタに戻された。

人口1400万人の大都会である街は、人々の生きるエネルギーに満ち溢れ、疾走する高級車のかたわらで、路上を生活の場とする人達がいる、様々な人の営みを目の当たりにすることが出来る。

その強烈なダイナミズムに圧倒され、僕は言葉を失う。ただ通り過ぎるだけの旅行者でしかない僕は、目前の光景をひたすら心に焼き付ける。

生き生きと生活する人たちの姿は鮮烈なパワーで迫り、僕に不思議なエネルギーを与えてくれた。

通り脇の洗い場で、身体中に石鹸を泡立てながら、頭から水浴びをする人たちがいる。水は傍らのドラム缶くらいのタンクからくみ出していたが、蛇口の付いた洗い場もあった。水はいずれも濁って見え、それを飲む子供達がいた。緑色に濁ったため池からそのタンクに水を汲み入れる光景にも出会った。

小型の三輪タクシーが鈴なりの人を乗せて走っていく。昔懐かしい軽三輪トラックを改造した小さな車体。その運転席の両脇に2人、さらにその外側に体を半分外部にさらして1人ずつがしがみつき、運転席だけで5人乗りだ。さらに幌のついた後部席にも6〜7人が折り重なり、全部で10人以上乗せて走るのは珍しくなかった。

いわゆる人力車も多い。お金持ちの子らしい肥満児を数人乗せたリキシャを引いて、やせた運転手が必死で走る光景を見るのはなんとなく腹がたった。

こんな中を人が道路を横切り、ノラ牛が悠然と歩き、ノラ犬が走り回る。ある時は横断中の老人が突っ込んでくる車の間に挟まれ動けなくなるのを目撃した。さすがにこの時は人だかりの中、警官が飛んできて救出した。

不思議にこの街では全く猫に会わなかった。ガイドに訊くと飼い猫はいるが外には出ないらしい。それだけ外の環境が苛酷なのだろうか。後に訪れたベナレスでは立ち並ぶ屋台の裏では、野良の牛・犬・ヤギが並んでゴミを漁っていた。

目的のお宅近くでバスを降りて少し歩く。日が暮れると急に涼しくなる。2月のインドは乾季で旅行にはいい季節だが、一日の服装の調節が一仕事だった。時には暑い昼間でも日陰に入ると涼しい風が吹いてセーターがほしくなるほどで困った。

招いて頂いたお宅は60代のご夫婦とその息子さん夫婦の4人家族だった。とつとつとした英語で語るご主人によると、息子さんは新婚ということで若いお嫁さんが可愛らしかった。代々家業として印刷業を営んできたが、今はご主人は引退し、息子さんもIT関連の技術者としてサラリーマン生活ということだった。

温和な笑顔の奥様手作りのインド料理は素晴らしかった。数種類のカレーやサラダなどをご馳走になったが、チキン・魚・えびとそれぞれに美味しかった。

今まで日本で食べたインド料理とは全く異なり、スパイスは十分効いているが味はまろやかで奥深い。魚は淡水魚ということだが、一旦から揚げされた白身の魚は淡白で臭みは全くなく、香辛料とよくなじんでいる。えびはその独特の旨みをもったままスパイシーな香り一杯で美味しかった。

インディカ米のご飯にカレーをぶっかけかきまぜる、教わりながら右の3本指で食べる、さらに旨い!こうすると食事を、まず眼、次に指、最後に舌と、3度楽しめる。

デザートの、チーズを加工して砂糖水に浸したお菓子は、未体験の味だったがとても美味しく後を引いて困った。奥様から教わったインド料理の秘訣は、隠し味として砂糖を使うことだった。そうすることでまろやかになるそうだ。

食後の、ミルクで煮出したチャイを頂きながら話は尽きなかった。名残惜しかったが僕らはご家族にお礼をいってお宅を後にしてホテルへ向かった。外にでると涼しい夜風が心地よかったが、路地からバスの待つ通りへ出た途端けたたましい喧騒に包まれた。   (続く)
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90 マイ・センチメンタル・ジャーニー
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84 シルクロードの旅(7)未知の国へ
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81 シルクロードの旅(4)ブハラへの道
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78 シルクロードの旅(1)タシュケント到着
77 小笠原の旅(7)惜別
76 小笠原の旅(6)小笠原海洋センター
75 小笠原の旅(5)母島列島
74 小笠原の旅(4)宝石の島、南島
73 小笠原の旅(3)ザトウクジラの海
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67 インド紀行(4)ダージリン滞在
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65 インド紀行(2)コルカタにて
64 インド紀行(1)遠かったインド
63 暮れの浅草昼酒
62 雨の東北、芭蕉と紅葉旅
61 南会津の旅◆扮の尾瀬沼)
60 南会津の旅 弁愡浚村)
59 奥日光戦場ヶ原
58 スコットランド紀行(5)いくつかの思い出
57 スコットランド紀行(4)偉大なり、ピーター・ラビット
56 スコットランド紀行(3)ネス湖からスカイ島へ
55 スコットランド紀行(2)ウォールフラワー
54 スコットランド紀行(1)エジンバラ大学でお茶を
53 風に吹かれて八丈島(3)
52 風に吹かれて八丈島(2)
51 風に吹かれて八丈島(1)
50 イリオモテヤマネコに逢いたくて(4)
49 イリオモテヤマネコに逢いたくて(3)
48 イリオモテヤマネコに逢いたくて(2)
47 イリオモテヤマネコに逢いたくて(1)
46 秋空の下、いくつかの再会
45 白神の森の宝
44 挑戦!乗鞍岳
43 北東北ローカル線の旅 (4)津軽じょんがらの夜はふけて
42 北東北ローカル線の旅(3) 雨の下北恐山
41 北東北ローカル線の旅(2) うみねこレール
40 北東北ローカル線の旅(1) 春のうららのドリームライン
39 50年の時を超えて
38 知床の秋(2)、ウトロにて
37 知床の秋(1)、鮭遡上
36 風に吹かれて尾瀬ケ原
35 白神山地「ブナの学校」
34 初夏の山形、サクランボとそばの旅
33 ハワイ島滞在記(2)
32 ハワイ島滞在記(1)
31 春の予感、鹿沢(かざわ)高原にて
30 嗚呼!還暦大同窓会
29 年の暮れ、奥那須で想う
28 ラムネの湯「長湯温泉」はいいぞ
27 また「再会の時」道後温泉にて
26 大自然の力、姥湯温泉
25 知床の青いそら、光と風 その
24 知床の青いそら、光と風
23 春の東北ローカル線の旅
22 春の東北ローカル線の旅
21 春の東北ローカル線の旅
20 上海点描
19 やさしかったチェジュの人たち
18 さらば、災の年よ。
17 僕たちのセンチメンタルジャーニー
16 台風を避けて信州へ
15 青島印象記
14 よるべない孤独にみちた宿
13 海があまりに碧いのです
12 安曇野の光と水、そして高瀬川渓谷葛温泉
11 鞍馬山の向こうへ、大悲山峰定寺
10 雪の会津鉄道トロッコ列車の旅
9 初春初旅救急車
8 年の暮れ、峩々温泉再訪記
7 東北紅葉旅峩々温泉
6 蔦温泉、蔦沼、ブナの森
5 雨の幕川温泉再訪記
4 憧れのフルム-ン法師の湯
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1 東北紅葉雪見風呂
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