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僕の偏見紀行
59 奥日光戦場ヶ原
2008年8月3日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ 湯ノ湖から流れ落ちる湯滝、水量が多く迫力があった。
▲ 戦場ヶ原に咲く、イブキトラノオなどの高山植物。
▲ 戦場ヶ原そばの湯川を行く釣師たち。
前から奥日光の戦場ヶ原が気になっていた。日光には以前九州から、高校の修学旅行で訪れたことがあった。

修学旅行は東照宮から中禅寺湖までで、戦場ヶ原は見ていない。その時訪れた早春の中禅寺湖畔には雪が残り、引き上げられた貸しボートが白い腹をみせて並んでいた。

もうあれからもう45年。その時いがぐり頭に詰襟の学生服だった僕は、いまや還暦を過ぎて、次男の運転する車の後部座席にカミサンと座っている。助手席には身重のヨメがいる。過ぎてしまった歳月の重さをしみじみ思う。

嵐山光三郎の旅行記には、日光の門前町には落ち目のすがれた良さがあるとあった。しかし夏休み前の平日なのに、アジア系や欧米系と思われる外国人客も多く、結構な賑わいである。

東照宮は苔むした杉の巨木と石垣の向こうに静かに建っていた。高校生の時はよくわからないまま通り過ぎてしまったが、あらためて眺めると壮大な造りと、あちこちの細かな細工が素晴らしい。当時の徳川将軍家の威光が偲ばれる。

東照宮参拝の後はおきまりのおみやげ散策。歴史を思わせる老舗が並び、羊羹や煎餅が旨そう。なかなか、すがれたとはいえない。日持ちの関係もあるので、帰りに購入することにした。

宿は中善寺湖畔、文字通り湖岸の波打ち際に建つ「湖上苑」にとった。こじんまりしたやや古びた宿だが、余計な気取りなど全くなく、食事と温泉はとても良かった。夜は、打ち寄せる波の穏やかなリズムを枕に眠りにつくことができた。

次の日、今回初めて中禅寺湖からさらに奥日光へと向かう。湯の湖まで行って、そこから戦場ヶ原を歩くことにする。湯の湖下の湯滝から歩き始めた。身重のヨメがいるので、家族とは別行動にして僕一人で歩く。

コースは湯滝から森をぬけ、戦場ヶ原を縦断して赤沼茶屋まで、ほぼ湯川に沿って約5〜6キロくらい、1時間半の予定だ。

久しぶりの山歩きはとても気持いい。歩くことそのものが楽しく心地いい。森の中は日光が遮られ、ひんやりと涼しく歩きやすい。アップダウンが少なく尾瀬に比べても歩きやすい。

森を抜け戦場ヶ原に入ると視界が開け、太陽の光がまぶしい。ただコースは湯川と時に交差しながら続き、かたわらの清流が目に涼しく、疲れを感じさせない。遠くには男体山を望み、木道脇には沢山の高原植物が咲いている。ところどころには休憩ポイントもあり、年齢を問わずウオーキングを楽しめるところだ。

ところで戦場ヶ原の由来だが、今回初めて知った。それまで僕は、どんな戦さがこんな山奥の高原であったのだろうか、と考えていた。

その昔、中禅寺湖の帰属を巡って、男体山と赤城山の神様が争いを起こし、ヘビとムカデをお供にこの戦場ヶ原で激しく戦ったことに由来する、と途中の案内板にあった。それにしても、ヘビとムカデの争いなどあまり見たくないものだ。

家族と合流した後、湯ノ湖ほとりの湯元温泉へ向かい、足湯などを楽しんだ。ここもひっそりと静かないい温泉場だった。塩羊羹で有名な老舗に立ち寄りお隣さんへのおみやげを購入。留守の間、我が家のネコのお守りをお願いしているのだ。

宿に戻り早速温泉に入る。硫黄の匂いが強い、白濁した結構なお湯だ。源泉は65度もあるそうで、入るのに湯温の調節が大変だ。最初そのまま飛び込んだら熱くて飛び出してしまった。湯口の角度を手で調節するようになっていたのだ。文字通り、24時間源泉かけ流しの温泉だが、大自然に湧く源泉に言わせれば、そうそう都合よく人間の思惑通りにはならないよということだろう。

夕食は前夜と異なるメニューが用意され、中でもマスのオレンジソースがけが旨かった。この宿オリジナルということだが、この宿は料理でも業界で有名らしく表彰状が飾ってあった。サービス係も熟年おばさん数名で、無駄なことはいわず必死でかけずりまわっているような、感じのいい宿だった。

翌日は華厳の滝を眺め、みやげの煎餅や饅頭を買って帰途についた。華厳の滝はかすかに虹がかかり、豊かな水が激しく流れ落ち、太陽に輝いていた。
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