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僕の偏見紀行
74 小笠原の旅(4)宝石の島、南島
2009年5月15日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ 上陸地点から鮫池を振り返る。船は中央のサンゴ礁の狭い水路を通り抜けてきた。
▲ 扇池の白い砂浜に散らばるヒロベソカタマイマイの半化石。浜辺一面に広がっていた。
▲ 扇池の輝く砂浜、青い海。サンゴ礁の切れ目から打ち寄せる外海の大波が白く砕け散る。
クジラを追った後、父島に近い小島、南島へ向かう。ここはサンゴ礁の隆起と沈降によって出来た無人島であるが、アオウミガメ・オナガミズナキドリ・カツオドリなどの貴重な繁殖地となっている。さらに固有の植物も多く、そのため人間上陸には厳しい規制がある。

まず上陸には必ず公認ガイドが同行すること、そして1グループは15名まで、さらに1日に200名しか上陸できない。

余計なものを持ち込まないため、上陸前に靴底を洗う決まりだ。ガイドが貸してくれたブラシで海水を使って入念に洗った。

島に近づくが依然として風強く船は大きく揺れる。上陸するには、島を囲むさんご礁のわずかな切れ目を通り抜けるしかない。

船はサンゴ礁の手前でしばらく様子を伺い、激しく上下する波の動きの合間に狭い水路を素早く通り抜けた。中は静かな内海で鮫池と呼ばれる。

深みの藍色と浅瀬のライトブルーが入りまじって太陽に輝いている。鮫池に潜ると岩陰に潜むネムリブカの群れに会えるらしい。しかしあまり会いたい相手ではない。鮫池の奥まったあたりの狭い岩場に船の舳先を寄せて上陸する。

船のまわりには暗礁が見えているし、船長はエンジンをかけたまま微妙な舵取りで船の位置を保つ。早く上陸しないと船が岩場に衝突しそうだ。さっきの狭い水路そしてこの上陸ポイントなど、難しいところを乗り切った船長の腕は大したものと感心する。

上陸しガイドに従い歩き出す。歩くルートは定められておりそこから踏み出すことは許されない。固有種の貴重な植物やウミドリたちの巣穴を守るためだ。ルートは砂交じりの土が続いているが、まわりは芝生のような草地が広がり、その先はごつごつした岩の丘となっている。

気をつけないとルート上にも巣穴が口をあけており、踏み込みそうになる。急にガイドがルート脇の草を引き抜いた。驚いていると、外来種の雑草が繁殖しているのだ。最近この外来種による被害が広まり、駆除するボランティアも募集されている。

サンゴ礁の隆起によって誕生した島では、その後の沈降や風雨の浸食による変化に富んだ地形に、白い砂浜と蒼い海、灰色の岩肌と草地の緑が広がっている。

緩やかな登りを越えて島の中央部に立つと、鮫池の反対側に位置する扇池が見えてくる。真っ白に輝く砂浜にライトブルーの大波が激しく打ちよせている。扇池を囲むサンゴ礁の切れ目から外海の大波が押し寄せている。

抜けるような青空と白い雲、灰色の荒々しいサンゴ礁、沖の蒼い波、浅海のライトブルー、まばゆい白砂、ため息がでるほど美しい。南島は宝石の島とも呼ばれているが、まさにそれが実感できる。

白い砂浜には夥しい数のカタツムリに似た貝の化石が転がっている。ヒロベソカタマイマイの半化石だ。砂に埋もれていたものが浸食により地上に現われた。岩ではなく砂の中にあったため半化石といわれている。

歩けば踏み潰しそうになるほど一面に広がっているが勿論持ち出してはいけない。島には何も持ち込んではいけないし、持ち出してもいけない。

僕は、半化石を手のひらに乗せながら、この美しい風景がこのままであってほしい、少なくとも次にまた来るまでは、と密かに思った。

父島に戻りその日の夕食は地元の居酒屋に出かけた。細切りパパイヤのかき揚げや地魚の刺身と焼酎がよくあって美味しい。

からりといい色のから揚げはちょっとなじみのない味だが何だろう。さっぱりとしてくせは無いが、こくのある旨みはクジラに近いようだが。

食べ終わって店員に尋ねると、これがアオウミガメだった。そういえば「ウミガメあります」という看板を島のあちこちで見かけた。

僕はウミガメを食べてしまった。同席した中には、ウミガメと分かっていたら食べなかった、と騒ぐ人もいた。

今回の旅では海洋センターを訪れて、ウミガメの保護活動について学ぶことも予定している。さらにそこでは保護活動に協力するため、1頭1万円也を支払ってアオウミガメの放流会にも参加するのだ。こともあろうに僕はそのアオウミガメを食ってしまった。さらに困ったことにそのから揚げはとても旨かった。(続く)
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21 春の東北ローカル線の旅
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11 鞍馬山の向こうへ、大悲山峰定寺
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8 年の暮れ、峩々温泉再訪記
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