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僕の偏見紀行
64 インド紀行(1)遠かったインド
2009年2月21日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ やっとの思いでたどり着いたコルカタの空港前で。
空港内は撮影禁止のため少し離れたところでガイドに
撮ってもらう。
▲ コルカタ市内にて、混雑する電車駅周辺の風景。
▲ コルカタ市内にて、車やバイクなど激しく行き交う大通り。人々は車の隙間をすり抜けて通る。
ブレーキ故障のため出発が遅れたシンガポール航空のエアバスは、結局5時間遅れの午後4時過ぎに成田を飛び立った。

シンガポールで福岡から来るグループと合流してインドへ向かう予定だが、これでは乗り継ぎはとても無理だろう。合流すればガイド付きの気楽な旅だが、インドまで一人旅となりそう、どうなることやら。

シンガポール空港へは夜中の11時半過ぎに到着、乗り継便はとっくに仲間をのせてインドのコルカタへ出発していた。

真夜中の空港は乗り継ぎをミスした乗客で大混乱。航空会社のスタッフが慌しく走り回り、それに乗客が群がっている。もう当日便が無く市内のホテルを割り当てられる人、新たなルートで乗り継ぎをする人、僕もその渦に割り込んだ。

僕に示された新たなルートは、深夜便で一旦デリーまで飛んでそこから国内線でコルカタを目指すものだった。

いろいろ文句も言いたかったが他に選択肢もなく、それに応じて深夜の空港内を歩き始めた。背にはサブリュック、肩には小型のショルダーバッグ、手で重いスーツケースをごろごろと押しながらとぼとぼ広い空港を移動した。

予定では午前2時過ぎにシンガポールを発って、午前6時前にデリーの国際空港に到着する。そこから国内線に乗り継げば昼前にはコルカタに到着できる。この予定をコルカタのホテルへ電話し、仲間への伝言を頼みやっと一息ついた。

待合室のインド人の中に日本人らしき人物を発見、声をかけると、エレクトロニクス関連の大手企業のビジネスマンだった。まだ若いが、シンガポールを拠点にインド方面で活動、その日は現地社員とインド出張への途上だった。

インド事情にについていろいろと教わる。デリーでは国際空港と国内線空港は車で移動するくらいの距離があると聞いて少々あわてる。移動手段はどうすのか、荷物は一旦ピックアップして自分で運ぶのか、など不安になってくる。

デリーには5時半頃着いた。まだ夜明け前で周囲は真っ暗だ。降り口の係りに聞いたら荷物は自分でピックアップするという。通常の乗り継ぎなら荷物も自動的に積み替えられるのだが、やはり場所と状況によるのだろう。

税関で入国カードの記入漏れを指摘され少々慌てた後、荷物受け取りへ向かう。回転台から荷物が出てきた時はほっとした。次は国内線ターミナルへの移動だ。

出口へ進むと左脇に国内線と表示された暗い入り口があり、銃を持った兵士が厳重に警備している。パスポートと乗り継ぎ書類を見せると一瞬険しい顔つきをしたが、なんとか通過した。

その先には夜明け前の暗がりの中にバスが数台停まり、そのまわりでは荷物を抱えた人が乗り込もうと群がっている。これが国内線行きのシャトルバスらしい。ここにも銃を構えた警備の兵士が数名立っている。

我勝ちに乗り込もうとする人たちを、ドライバーや助手が怒鳴り散らす中、僕も乗り継ぎ書類を見せてようやくバスに乗り込んだ。

乗っているのは大半が外国への出稼ぎから帰国した人々のようだ。荷物と人で超満員のバスは空港内やその周辺の複雑なルートを走りぬけ国内線ターミナルへ到着した。

ドライバーがここだというので降り、荷物を抱えてターミナルへ入ろうとするとここでも兵士によるパスポートと書類のチェックを受ける。すると銃を持った兵士がいきなりここへは入れないという。

驚いていると、そばのエアラインのスタッフが僕の便はもうひとつのターミナルだという。国内線にも複数のターミナルがあるとは、ドライバーにあれだけ念を押したのにと思うが後の祭りだ。

どうやって行くのかスタッフに尋ねるが要領を得ない。歩けるのかというとノーだという。バスは国際線へのシャトルバスしかない、タクシーも見えない。進退窮まっていると寄ってきたのは怪しげな口ひげのオヤジ、来たなと思っていると案の定、白タクだった。

米ドルで20ドルという、このヤロー足元を見やがって、即座に高いと断る。いくら出すかというので5ドル、というと向こうが断る。結局10ドルで手を打つ。他に手段はないし、ぐずぐずして乗り遅れては一大事と妥協した。

車は5〜6分走って次のターミナルに着いた。降りる間際にまたチップと言われひと悶着。結局助手のジイサンとドライバーに1ドルずつ払うことにした。途端にニコニコ顔になったじいさんが、エアラインのカウンターまで荷物を運んでくれた。

やれやれ、これでコルカタへ行けると喜んで乗り継ぎ書類をカウンターの女性に出し、5時間遅れでこんなことになったのだと事情を説明した。難しい顔をして話しを聞いた女性は、端末をひとしきりたたいた後言った。

満席なので乗れません、あちらの空席待ちカウンターへ行きなさい。慌てた僕はあらためて事情を説明し、シンガポール航空の責任で予約が入っているはずだと書類を見せながら粘った。彼女いわく、それは単なるリクエストに過ぎない、リザーブではない、それ以降は問答無用。

もめている最中も、左右から人がどんどん割り込み何やらうるさくわめきだして、こちらの話しが出来なくなる。インドの人の自己主張は激しいと思い知る。またカウンターのスタッフも、割り込んだ人に注意もせず相手をするので収拾がつかない。

仕方なく空席待ちのカウンターへ行き、一から事情を説明する。なかなか要領を得ない、そのうちまた周りから割り込む人が増えてくる。デリー到着後すでに数時間が経過し9時20分発のコルカタ行きの時間も迫ってくる。

大騒ぎの後ようやくビジネスクラスなら1席空きがあるということになった。但し運賃は自己負担だということだが仕方ない。もう乗れるならなんでもいい、という心境で2万数千ルピー(約45000円)を支払った。

搭乗券を手にしたときは心底ほっとした。飛行機を乗りついで旅行をする、なんでもないことが一たび知らない国に来るとこんなにも大変なのか、つくづく自己責任の厳しさを思い知った。

乗り込んだビジネスクラスにはまだ空席がいくつかあった。たった1席と恩を着せられたのだが、いったいどうなっているのだろう。

コルカタ空港へ到着すると現地ガイドが出迎えてくれた。街は聞いていたとおりの大混乱に満ちていた。おびただしい車と人の群れ、バイク、荷馬車、さまよう牛たち、野良犬、ヤギなどが凄まじい喧騒のなかで溢れかえっている。

けたたましいクラクションとホコリ。あちこちで立ちションするオジサン達、道端には、そこで生活する赤ちゃんを抱えた家族の姿。いきなり圧倒されてしまった。

昼過ぎにやっとホテルに到着した、ここでも武装した警備員による厳重な警備が行なわれていた。お客の車の底までチェックする。たどり着いたホテルの中は街の喧騒とは無縁の別世界だった。

仲間と半日遅れでやっと合流しランチを一緒にしてやっと安心した。約25時間の、殆ど眠れず食事は簡単な機内食とお菓子だけの旅だった。僕の初めてのインドはとても遠かった。(続く)
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81 シルクロードの旅(4)ブハラへの道
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78 シルクロードの旅(1)タシュケント到着
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75 小笠原の旅(5)母島列島
74 小笠原の旅(4)宝石の島、南島
73 小笠原の旅(3)ザトウクジラの海
72 小笠原の旅(2)BONIN ISLANDS
71 小笠原の旅(1)波路はるかに
70 インド紀行(7)タージ・マハルの光と影
69 インド紀行(6)ガンジス川の夜明け
68 インド紀行(5)夜行寝台「ハウラー・カルカ・メイル・2311号」
67 インド紀行(4)ダージリン滞在
66 インド紀行(3)ダージリンへの道
65 インド紀行(2)コルカタにて
64 インド紀行(1)遠かったインド
63 暮れの浅草昼酒
62 雨の東北、芭蕉と紅葉旅
61 南会津の旅◆扮の尾瀬沼)
60 南会津の旅 弁愡浚村)
59 奥日光戦場ヶ原
58 スコットランド紀行(5)いくつかの思い出
57 スコットランド紀行(4)偉大なり、ピーター・ラビット
56 スコットランド紀行(3)ネス湖からスカイ島へ
55 スコットランド紀行(2)ウォールフラワー
54 スコットランド紀行(1)エジンバラ大学でお茶を
53 風に吹かれて八丈島(3)
52 風に吹かれて八丈島(2)
51 風に吹かれて八丈島(1)
50 イリオモテヤマネコに逢いたくて(4)
49 イリオモテヤマネコに逢いたくて(3)
48 イリオモテヤマネコに逢いたくて(2)
47 イリオモテヤマネコに逢いたくて(1)
46 秋空の下、いくつかの再会
45 白神の森の宝
44 挑戦!乗鞍岳
43 北東北ローカル線の旅 (4)津軽じょんがらの夜はふけて
42 北東北ローカル線の旅(3) 雨の下北恐山
41 北東北ローカル線の旅(2) うみねこレール
40 北東北ローカル線の旅(1) 春のうららのドリームライン
39 50年の時を超えて
38 知床の秋(2)、ウトロにて
37 知床の秋(1)、鮭遡上
36 風に吹かれて尾瀬ケ原
35 白神山地「ブナの学校」
34 初夏の山形、サクランボとそばの旅
33 ハワイ島滞在記(2)
32 ハワイ島滞在記(1)
31 春の予感、鹿沢(かざわ)高原にて
30 嗚呼!還暦大同窓会
29 年の暮れ、奥那須で想う
28 ラムネの湯「長湯温泉」はいいぞ
27 また「再会の時」道後温泉にて
26 大自然の力、姥湯温泉
25 知床の青いそら、光と風 その
24 知床の青いそら、光と風
23 春の東北ローカル線の旅
22 春の東北ローカル線の旅
21 春の東北ローカル線の旅
20 上海点描
19 やさしかったチェジュの人たち
18 さらば、災の年よ。
17 僕たちのセンチメンタルジャーニー
16 台風を避けて信州へ
15 青島印象記
14 よるべない孤独にみちた宿
13 海があまりに碧いのです
12 安曇野の光と水、そして高瀬川渓谷葛温泉
11 鞍馬山の向こうへ、大悲山峰定寺
10 雪の会津鉄道トロッコ列車の旅
9 初春初旅救急車
8 年の暮れ、峩々温泉再訪記
7 東北紅葉旅峩々温泉
6 蔦温泉、蔦沼、ブナの森
5 雨の幕川温泉再訪記
4 憧れのフルム-ン法師の湯
3 信州塩田平別所温泉
2 信州信濃路
1 東北紅葉雪見風呂
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