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僕の偏見紀行
80 シルクロードの旅(3)アレキサンダー大王が来た街
2009年10月31日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ バザールで豆類を売る女性。眉を一直線になるように描くのは、その部族の特徴。他ではあまり見かけなかった。
▲ サマルカンド市内の霊廟にて。暗い部屋から見えるタイルの色が鮮やかだった。
▲ アフラシャブの丘にて。かってアレキサンダーの軍勢もやって来た。そしてモンゴルに破壊しつくされた旧サマルカンド市街跡。丘からは今の市街地がよく見える。
翌朝、目覚めるとサマルカンドはかなり冷え込んでいた。日中は暑いが朝晩は冷える。

朝一番にパン屋さんへ行く。地元の焼きたてのナンを賞味する。どの町でも食事ごとにナンが出るが、その地方、さらにパン屋ごとに、形状や模様、味わいが異なる。

パン屋では陽気で人懐っこいオヤジさんが歓迎してくれた。若い職人が生地をこね、薪を焚く石がまの内側にナンを貼り付けて焼いている。

あたりにはナンの焼ける香ばしいかおりが漂う。あつあつの焼きたては塩味がきいてとても旨い。

言葉は全く通じないが、オヤジさんは身振り手振りで話しかけてくる。カラテ、オオサカなどの言葉が聞き取れた。

どうやら大阪を知ってる、空手をやってるかといってるようだ。言葉はよく分からないが、暖かいもてなしの心が伝わり嬉しくなる

街の中心にあるレギスタン広場へ行く。ここはモンゴルによるサマルカンド破壊後、ティムールが再建した新たな市街地の中心にあたる。

かってはバザールのまわりに、隊商宿、神学校、モスクなどが立ち並んでいたが、今も残る神学校跡やモスクの青タイルが太陽に輝き美しい。

広場を歩きながら、のどが渇いたので水を買おうと売店を探していると、警備員が近づいてきた。水を買いたいというと、自分の部屋でお茶をご馳走するから一緒に来い、と誘う。

ニタニタしてなんとなく雰囲気があやしい。忙しいと断ると、僕の胸のボールペンをくれとしつこい。相手にならず急いでその場を離れた。

神学校跡の、かって学生たちが住み、勉学に励んだ小部屋は土産物屋になっている。羊毛や絹の織物、鮮やかな民族模様の刺繍、陶器の小物、飲み物などの店が続く。世界遺産になるような歴史的建造物でこんな商売をしていいのだろうか。

このような世界遺産における商業施設は、どの街でも見受けられ、中には立派なレストランもあった。遺跡での撮影料(1500〜2000スム、100円前後)とこの商業施設は貴重な観光収入となっているのだろう。

ティムールとその一族を祀る「グリ・アミール廟」もそうだった。撮影料を支払い、ひときわ鮮やかで壮大な青タイルのイスラム建築の内部に入ると、ティムールとその息子たちの美しいイスラム模様が施されている。

棺を取り巻く、フランス、ドイツなどの観光客がバシャバシャ、ストロボを光らせ写真を撮る。金を払ったとはいえ、お墓なのにいいのだろか、と戸惑ってしまう。

沢山のイスラム建築の青タイルに少々疲れた頃、待望のバザールへ到着。広大な敷地にありとあらゆる生活用品がびっしりと並び、沢山の人々が行き交っている。

一部は建物の内部だが、そのまわりにさらに無数の露店が続いている。野菜・果物、肉・ソーセージ、豆、干した果実などの食品から、衣類、日曜雑貨、金物類まで多岐に渡る。ぶらぶら歩くだけで面白い。

サマルカンド名物のナンが山積みされている。ここの平べったく大きなナンは、美味しいと評判で、水をつけて焼直せば2年後でもたべらるともいわれている。

魚屋の店頭には巨大ナマズの頭が転がり、路傍には無数のスイカ、メロンが無造作に積み上げられている。路上に立って、ブタかヒツジの足を抱えて売っている女性がいる。ゆでたトウモロコシを学校帰りの女学生に売りつけようと叫ぶオバサンたちがいる。

つられてついつい買い込んでしまった物、ハチミツ1瓶120円、サフラン1パック1ドル、小ぶりのリンゴ10個100円など。

高いか安いか分からないが、売っている人たちはみな素朴な人たちばかり、値段交渉にも駆け引きは感じられない。全く言葉が通じないので身振り手振りしかないが、そんな買い物はとても楽しい。

僕は夢中で歩き回り、時間のたつのを忘れてしまった。世界遺産より数倍楽しく面白い。出来ることなら、近くに下宿して毎日通ってみたい。

一日の終わりに郊外の「アフラシャブの丘」へ行く。モンゴルによって破壊された旧サマルカンド市街の跡地である。現在の市街地を見下ろす小高い丘陵地になっている。

今は、見渡す限りの泥と砂の荒地にわずかな草が茂り、ヒツジやラクダの糞が散らばる。なだらかな丘を歩くと、ところどころに発掘された跡が見える。ここには紀元前4世紀、アレキサンダー大王の軍勢もやって来た。

モンゴルによる破壊の前、この地には城壁には囲まれた、壮大な宮殿や城砦、緑豊かな町並みが広がっていた。各家庭にまで水道が引かれたこのサマルカンドを、シルクロードを旅する人々は「最も美しい街」、として憧れた。

モンゴルによる破壊は徹底しており、それは水道施設まで及び、市街地への水の供給ができなくなった。そのためにこの地での再建を諦めざるを得なかったのだ。

今僕が踏みしめるこの土地を、アレキサンダーやモンゴルはじめ、あまたの軍勢が駆け抜け、戦ったのだ。過ぎ去った膨大な時の流れを思いつつ歩くと、どこか遠くから馬のいななきや兵士の雄叫びが聞こえるようだった。  (続く)
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21 春の東北ローカル線の旅
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