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寄り道まわり道
66 サヨナラガニガテ
2013年2月1日
吉田 美智枝 吉田 美智枝 [よしだ みちえ]

福岡県生まれ、横浜市在住。夫の仕事の関係で韓国ソウルとタイのバンコクで過ごした。韓国系の通信社でアシスタント、翻訳、衆議院・参議院で秘書、韓国文化院勤務などを経て現在に至る。自作のアクセサリーをBeads Duoというブランドで販売しながら、韓国の主に女性たちについてエッセーを執筆中。『朝鮮王朝の衣装と装身具』(共著)、韓国近代文学選などの翻訳がある。
▲ 黄色い淡水パールで作ったリングとピアス。
▲ 横浜港大桟橋ホールへ。年に2回、ビーズアートショーが行われる。この日、客船が出航するところだった。
出会いやコトを始める簡単さに比べれば「サヨナラ」するのは難しい。

(若いころなら)恋人、勇み足で始めた仕事、思いつきで始めた趣味、お気に入りの服、身の回りの小物、本・雑誌、どうみても再起不能と思われる鉢植えの植物、果てはむかし仕事で出会った人々の名刺…などなど。人間関係は複雑になり、モノたちはただでさえ狭い住空間をアメーバのように侵食していく。

すべてが自然消滅し過去のものとなっていくのならいいのだが、意を決してお別れしなければならないときがある。

タイ時代に作った(オーダーメイドの)タイシルクのスーツなどはその最たるものだ。高温多湿の日本で、夏に駅まで汗まみれで歩き、満員電車でつり革…全く向いていない。

お出かけといえば、運転手つきの車でしずしずと?…というのが常識だった服など、今後この日本で一切出番はないということなのだ。段差の大きい階段を上がろうとしたとたん「バリッ!」とスカートのスリット部分が裂けたという友人がいる。

それでなくとも、これらの服…どこかチグハグでトンチンカン! 自分の好みを最優先して作ってもらったことの結果だが、まずサイズが合わないし、時代遅れ!

着なくなった服にお別れするために、ハサミを入れるという友人がいる。
『そうでもしない限り、(一度捨てようとした服を)いつか着ることがあるかもとまた取り出す恐れがあるからよ』と。

私の場合、タイで作ったおびただしい数の服は、帰国の際に夫の単身赴任先のアパートのクローゼットに直行した(ということは…この段階で捨てるべきだったのだ)。荷物が多く我が家に収まらなかったからだが、ある日、日よけのカーテン代わりに吊るされているのを見て、あ然とした。(こんな使い道があったのか!)

ほかの人たちはモノや人とどう付き合っているのだろう。

しかし、増え続けるモノや複雑になる人間関係とわざわざ「サヨナラ」しなくてもいい人たちもいる。
たとえば実家の母。モノが増え続けてもさして困った様子もない。
田舎にはそれらを置いておく空間がふんだんにあるからだし、隣近所の人々との付き合いも数十年間変わることはない。

都会ではそうはいかない。老いた母親が一人住む実家にモノが溢れ、姉妹で片づけをしたという友人がいる。今や使われなくなった不要のモノでも「サヨナラスル」のは簡単ではないということなのだろう。それらは単なるモノなのではなく、生きてきた証し、大切な思い出のつまった愛着のある品物なのだ。モノとの別れは、だからその向こうに見える人たちとの「サヨナラ」に思えるのだ。

作家・伊集院静氏の著書に「別れる力」(大人の流儀)というのがある。本のタイトルと「別れてこそはじまる出会い」という見出しに惹かれて読んだが、正直なところ別れる力がなんなのかよくわからなかった。しかし、そうか、別れるには力、つまりエネルギーが要るということなのだ。取捨選択する判断力と片付けるための体力が…。

私も、気力・体力が衰える前にもっと身軽になろう。そういえばずいぶん前に買って本棚にツンだままの「捨てる技術」という本があったナ。それを参考に…。
その本を指さし夫がいった。「まず、捨てるべきはそれだろう!」

私、サヨナラガニガテなんです。
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