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かくてありけり
50 在宅勤務
2008年7月5日
沼田 清 沼田 清 [ぬまた きよし]

1948年、新潟県生まれ。千葉大学工学部卒業。2008年、通信社写真部を卒業、以後は資料写真セクションで嘱託として古い写真の掘り起こしと点検に従事。勤務の傍ら個人的に災害写真史を調べ、現在は明治三陸津波の写真の解明に努めている。仕事を離れては日曜菜園で気分転換を図っている。
先日、中山さんが、海外のスポーツニュース写真をポータルサイトのヤフージャパンにアップする仕事についてエッセイ「ある土曜日の記録」で紹介した。実は私も6月から週2日間、そのお手伝いをしている。年中無休のこの仕事を1人でフルカバーするのは大変だ。しかし業務の専門性が高いので、新人を養成するにも時間がかかり、即戦力の助っ人が必要になり、私に声が掛かった次第だ。

業務内容は中山さんが書いた通り、外国通信社の写真データベースから写真を選んでダウンロードして、画像をリサイズし、英文キャプションを邦訳、内容の点検(時々誤りがある)と足りない要素を補い完成させてアップロード用のサーバーに登録する。
つまりフォトエディターとオペレーターの2つの役割が求められる。写真編集のセンス、ニュース感覚、一定程度の英語力、用字用語などの知識、校閲力、調査力、画像処理をはじめとするパソコン(以下PC)操作の知識。これを1人で自己完結することが眼目だ。私の経験と知識とスキルを評価してのご指名は大変光栄であった。

しかし、私は3月に定年を迎えたとき、今後は週3日は嘱託で古巣に勤務し、残り4日は休みにしてのんびり過ごすと決めたはずではなかったのか。嘱託以外にさらに2日も働いたら現役時代と一緒のペースではないか。引き受けるにしても週1日だけだなと思った。ところが「慣れたら在宅でできるから」という説明を聞いて考えが変わった。加えて「朝始動して実質5時間くらいで終わる」という。それなら午後は自分の時間を確保できる。物は試しと週2日、自宅で作業をして1カ月が経過したが、今のところ順調である。今回は「在宅勤務」について書いてみたい。

会社勤めの現役時代、職場での残業はおろか、家に仕事を持ち帰ることが日常的だった。自宅なのでいわゆる“サービス残業”である。取材・出稿の事前準備で調べ物や申請書作り、仕事の後の報告書作り、あるいは各種マニュアル作成など、会社じゃなくてもできるものに限られる。帰宅して晩飯もそこそこに済まし机の前に移動する、あるいは折角の上天気の休日にそんなことをやっていると「家にいてまで仕事しなくてもいいじゃないの」とカミさんに白い眼で見られたが、仕方がない。そんな時、往復3時間の通勤時間がつくづくもったいないと思ったものだ。

もともと若いころから職住近接は無駄が無いと思い、うらやましく感じていた。したがって「居職(いじょく)」と呼ばれる自宅で仕事をする職業に憧れがあった。家内工業的な職人の世界や、農業、八百屋、肉屋、魚屋、洋品店など色々な自営業が思い浮かぶ。しかし居職というのは当人はよくても、運用を誤ると家族にとっては仕事と家庭生活のけじめが付かず、常に仕事から逃げられないという声もある。

会社ではその昔、自宅で調べ物や資料作りをする場合、部長裁量で勤務扱いにする部もあったようだが、私の職場にはなかった。これを「宅調日」と呼ぶ。元々は裁判官が自宅で調べものや判決文を書いたりするのを「宅調」と呼ぶのにちなむ。要するに時間拘束制でなく、一つの仕事を一定期間にこなせば、やり方は問わない裁量労働制的な考え方である。実にうらやましいと思った。中には「宅調日」と称して休みをとりテニスに興じていたなどという話も聞き、「そんなのありかよ?」と腹立たしく感じたこともある。

後年、管理職になってからは、風邪気味など体調の悪いときは、「本日は宅調日にするぞ!」と自分自身に言い聞かせて実行した。裁量労働が前提の管理職だからできることだ。具体的なモノのやり取りや、人と対面しての交渉や会議などがなければ、そのほかのことは自宅でできる。日常業務の進行具合も自宅でデータベースをウォッチすることで可能だ。必要なら電話やメールで指示を出せる。要は危機管理ができていれば、まず問題ない。

今回のような在宅勤務を可能ならしめたのは、IT化が進んでインフラが整備されたことが大きい。高速回線と高性能のPC(最近は普及機でも十分なスペックがある)でネット環境が整えば、ファイルのやり取りだけで済む業務は会社にいなくても十分こなせる。
机に自分のPCと妻の(そのつど拝借)とを並べ、1台はデータのダウンロードとアップロード用に、もう1台は各種データベースの参照とメール用に使い分けて作業する。それでも画面を幾つも開くと動作がかったるいので、それぞれメモリーを1Gに増強した。ネットで注文したら512Mのメモリー4枚が計15、000円で買えた。しみじみと時代の変化を感じている。

在宅勤務を可能にしたもう1つの要因は、業務委託という雇用形態だ。契約が時間給のタイムスタッフだとむつかしいが、仕事全体を幾らで請け負うという形だからできることだと思う。

1カ月やってみて、在宅勤務をする上で大切なのは、時間管理も含めて主体性だと思う。人に強制されて嫌々ながらやるのではなく、自分の意思で、自分の責任で楽しみながら行う。写真入電が途絶えたところでコーヒーブレークを挟んだり、しばし菜園の手入れもできる。自分の趣味や関心事が仕事の内容と重なって、しかも知識とスキルが生かせたらやりがいを感じる。それでそこそこのペイが伴えば、もう言うことはないだろう。

ところで、週2日在宅で仕事をすると決めたとき、私はカミさんに新たな負担は掛けたくないと思い、宣言した。「昼飯は用意しなくて良い。仕事中だからと言って掃除機を掛けるに遠慮は無用。私が仕事中でもご自由にお出かけを」と。目下うまく行っている。幸いなるかな。
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