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僕の偏見紀行
84 シルクロードの旅(7)未知の国へ
2009年12月5日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ 黄昏の光の中、放牧から戻るラクダの群れ。バスを止めて撮影。
▲ トルクメニスタン入国後、マリへ向かうバスから。広大な砂漠が延々と続いた。
▲ トルクメナバートで昼食をとった豪華ホテル。強烈な日差しの下で白い大理石が眩しく輝いていた。正面の円形部分上部に大統領の肖像画が見える。
アムダリア川を越えてしばらく走りトルクメナバートに到着、ここで遅めの昼食をとる。

ここは広い通りに白亜の近代建築が立ち並ぶ大都会である。真っ白な建物に降り注ぐ強烈な日差しがまぶしい。

昼食はその中でもひときわ目立つ、正面に大統領の巨大な肖像画が掲げられた豪華ホテルだった。不思議なことに迎えに出たウエイターは、我々を正面玄関脇の裏口からレストランへ案内した。

内部はなんとなくがらんとして人の気配がない。それでもレストランには数組の先客がランチ中だった。料理はウズベキスタンとあまり変わらないようだ。

サラダ・野菜スープ・肉料理・とナンが出てきた。味は悪くないが少々油がきつい。お腹がゆるい僕は今朝沸かした紅茶と自前のクロワッサンに野菜スープを少々。

食事がすむとお腹がグルグル鳴りだした。ガランとして人の気配のない廊下をトイレへ向う。トイレの標示を発見、やれ嬉しやと扉を開けて中へ入る。ところがである、つくりは立派だが故障が多い。水が流れっぱなしが数ヶ所、さらにあろうことか殆どの個室の扉が破損している。

僕は急を告げるお腹をなだめつつ、いくつかの個室をチェックし、比較的破損の少ないところに入り込んだ。しかしそこもかろうじて扉は閉まるが、鍵がかからない。そのため常に片手を一杯に伸ばし、扉を押さえておかねばならない。困ったことに豪華な個室は広く、扉は遠い。

グルグル鳴るお腹をよじりつつ、片手を伸ばしたままことを済ますのはまことに難しい。こんな立派なホテルのトイレが破損したままとは、僕にはそのあたりの事情が理解できない。

食事後、僕はホテル内を歩き回った。正面から入った大理石のロビーには、優雅な微笑みの美女が迎えるフロントがあった。僕はこの美女にもトイレを尋ねてみる。先ほどとは違う、ちゃんとしたトイレがあるはずだ。美女は優雅に微笑み、そして手を伸ばして教えてくれた。

僕はひそかに期待を高め扉を開ける。しかし残念ながら先ほどと状況は変わらない。またしても僕は首をひねらざるを得なかった。大統領の肖像画が飾られた豪華なロビーのトイレがどうしてこんな状態なのだろうか。ただし女性用までは調査がかなわず、その実態は分からない。しかし個室で用を足すときにみんなどうするのだろうか。

ロビーには一組の家族連れがいたが、旅行者には見えい。なんとなく役所の窓口で順番を待っている風情だ。豪華なわりには全体としてホテルという雰囲気は乏しく、利用されている部分が少ないようだ。それでウエイターは裏口から案内したのだろうか。

我々もここでガイドが「ENTRY TRAVEL PASS」なるものを取得することになっている。ビザは国境で取得したのだが、外国人旅行者はさらにこの書類が必要らしい。その代わりウズベキスタンでのようなホテル宿泊証明書は不要らしい。いずれにせよ手続きが煩雑で、外国人旅行者はガイドなしでは旅行するのがかなり難しい。

ただこのPASSもウズベキスタンの宿泊証明も実際には一度も提示を求められることなく終わった。未だ以前からの規制の形式だけが残っているように感じた。

僕はこのトルクメニスタンという国について殆ど予備知識がなかった。ガイドによると、ソ連崩壊後の今は亡き初代大統領はかなり個性の強い人物だったらしく、永世中立をとなえ、終身大統領制を布いた。また自分の母親のために巨大なモスクを建設したり、あるいはメロン好きが高じて暦にメロンの日を制定したり、かなり強烈な政策を実行した。

また医者であり国民の健康増進には力を注いだが、残念ながら自らがガンに倒れてしまった。そのため国内の禁煙を徹底し、さらに健康増進のための数十キロにおよぶトレッキングルートを整備、さらに首都郊外には広大な森をつくろうと植林活動を推進した。

現在国内の失業率は30%にも達するが、豊富な天然ガスなどの資源に恵まれ、教育・医療・電気・ガスなどは無料で、国民の生活は安定しているという。ガイドによると、サラリーマンの平均月収は360ドルほど、外資系企業のエリート層で1000ドルくらいらしい。

トルクメナバートを出てひたすら砂漠地帯を走る。どころどころで丸まった潅木が風に転がっている。西部劇でおなじみのシーンだが同じ植物だろうか。ガイドに聞くと同じ種類のものらしい。

延々と砂漠地帯を走った後、マリの町に近づくにつれ甜菜畑や綿花畑が見えてきた。傾きかけた夕日の下、沢山の人々が綿花の収穫作業に追われている。あちこちの集積所には白い大きなピラミッドが出来ていた。

黄昏の光の中をラクダの群れが川沿いの林の中を進んでいる。その後を少年らしき二人が杖をかついでゆっくりと歩いていく。放牧からの帰りだろうか。

やがてバスはマリのホテルに到着した。部屋に入るとバスタブ付きの広い部屋で一安心。トイレもちゃんと西洋式でよかった。しかしどの蛇口も長すぎて洗面台やバスタブからしぶきが外にあふれ使いづらい。お湯は心もとない勢いだがなんとか身体を洗い終えほっとする。緊張した国境越えの長い一日が無事終わった。(続く)
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60 南会津の旅 弁愡浚村)
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28 ラムネの湯「長湯温泉」はいいぞ
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25 知床の青いそら、光と風 その
24 知床の青いそら、光と風
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22 春の東北ローカル線の旅
21 春の東北ローカル線の旅
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12 安曇野の光と水、そして高瀬川渓谷葛温泉
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10 雪の会津鉄道トロッコ列車の旅
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8 年の暮れ、峩々温泉再訪記
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