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僕の偏見紀行
90 マイ・センチメンタル・ジャーニー
2010年2月6日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ 鳥栖駅、明治時代に建設された駅舎がそのまま使われている。ホームの柱には明治のレールが使用されている。
▲ 盆踊り?または炭坑節?あるいはフラの続きか。2次会で踊る仲間たち。
▲ ヤキトリ屋の調理場で元気よく太鼓を打ち鳴らす僕の幼馴染み。この彼と手前の白髪のオジサンと僕の3人は、幼稚園のハナタレ時代からずっと友達。
さすがに元日の夕方、福岡へ向かう機内は閑散としていた。僕も、まさか正月早々九州まで出かけることになるとは思っていなかった。福岡空港は既に夜、外はとても寒かった。

夕食は博多駅地下のうどん屋に入り、まる天うどんといなり寿司を注文。博多はラーメンが有名であるが、うどんも旨い。

関東に比べれば薄味だが、コクのある出汁とやわらかめの麺。これにたっぷりの刻みネギ、まる天をのっけて食べる。まる天は丸くて平べったいさつま揚げ、といったものだが、九州では魚肉の練り物を揚げたものをテンプラという。

博多駅から特急電車で僕の故郷、鳥栖へ向かう。15分くらいで到着した鳥栖駅は、昔のままのたたずまいで人影もまばらだった。

車でホテルへ向かう途中、運転手がしきりに、今年の寒さは特別だ、こんな日はコタツでテレビでも見ていたい、とぼやく。僕も同感だが、去年早くから約束済みの同窓会が明日、鳥栖で開かれる。そのために正月早々九州へやって来た。

前回は4年前、僕等の還暦の年だった。中学校の同窓会という名目だが小さな町のこと、殆どが小学校からの同じ仲間ばかり、小中学一緒の同窓会ともいえる。それだけに沢山の旧友達との再会が嬉しい。

翌朝、時間があったので車で市内をめぐる。鳥栖の駅舎は昔のままだが、駅前の風景は変った。メインの通りから徒歩数分のアーケード街が無くなっているようだ。よく見るとアーケードが取り払われ、残った数軒の商店の看板が昔を偲ばせる。僕が子供の頃は両側に沢山の商店が並び、遠足のお菓子を買いに来るのが楽しみだった。

それでも大通りは大型ショッピングセンターが賑わい、シャッターの閉まったお店は比較的少ない。鳥栖市は九州の交通の要衝として、新幹線の新駅も建設され、高速道路は九州横断道と縦断道が交差するという地の利に恵まれている。

かって鳥栖駅は国鉄鹿児島本線と長崎本線の分岐駅として発展し、鉄道管理部が鳥栖に置かれていた。駅構内には蒸気機関車の基地、機関庫があり、そこには方向転換用の転車台もあった。そこを蒸気機関車が黒い煙と真っ白な蒸気を盛大に吐いて出入りしていた。駅のはずれには貨車入れ替用の広大な操車場が隣接し、大量の貨車の方面別仕分け作業を見ることが出来た。

鳥栖は国鉄全盛期に鉄道の町として栄えた。そして僕の父もこの町で鉄道員だった。戦時中は陸軍航空隊の基地があった、西太刀洗駅で米軍機の機銃掃射に追われながら、生きるための芋作りにも励んだ。戦後、博多駅・佐賀駅などに勤務後、有明海に近い筑後川河口の小さな駅の駅長として定年を迎えた。

東京へ転勤するまで父母と同居した、かっての我が家を見に行った。父母の家を2世帯住宅に増築し住んでいた。お盆と正月には、嫁いだ4人の姉達が一家揃って集まり、僕の家族と父母も合わせて総勢22人の大家族となった。

これだけの大人数のまかないや寝床の仕度など、母やカミサンは大変だったと思う。いったいどうやっていたのだろう。でも母は忙しい中疲れた顔もみせず、大勢の孫に囲まれ嬉しそうだった。

その家も父母が亡くなり、我々が転勤すると無人となった。管理している不動産屋は更地にしての売却を勧める。しかし古びたとはいえ、思い出の残る家を目の当たりにすると、壊して売却するのは今も忍びない。

同窓会は午後1時から始まった。冒頭に前回以来の物故者が報告され、全員で黙祷を捧げる。この4年で数名が逝ってしまった。自ら命を絶った友人もいた。明るくて頭のいい彼はクラスの人気者だった。

いったい何があったのだろう。何も死ぬことはないのに、つくづくそう思う。幹事役の元パイロットジュンちゃんが、物故者に入らないようみんな気をつけよう、と挨拶する。みんな苦笑しつつ身につまされる。

80過ぎの恩師クボヤマ先生が、ニンチショウのテストを受けた結果、無事サンチショウとなりました、と挨拶される。当時は優秀な少し恐い理科の先生だった。今聞けば海軍航空隊の練習生あがりだったとか。どうりで筋金入りの厳しさだった。でも時には面白い冗談をいってはにやりとする面白い先生だった。

会はお決まりのビンゴゲームで盛り上がり、続く熟年美女連のフラダンスでさらにヒートアップしていった。あちこちに談論風発の輪が熱く広がる。肩を組んで記念写真に納まる人たちもいる。楽しく気の置けない時間があっという間に過ぎていく。

同じホテルでの2次会には殆ど全員がなだれ込んだ。カラオケが始まり、それに合わせて盆踊りか炭坑節か、よく分からない踊りの列が練り歩く。いつの間にか僕もお皿を両手に、踊りの列に連なった。後で写真を見たら、奇妙な手つきのタコオヤジがいた。

3次会は冷たい雨の中、ホテルのバスに乗り込み駅前のヤキトリ屋に繰り込む。狭い店はたちまち立錐の余地もなくなり、あぶれた者は調理場まで入り込んでの、立ち飲み立ち食いしかない。酔って店の太鼓を打ち鳴らす、額を寄せて何やら話し込む、大声で喧しく議論する、もうわけ分からない。

そうだ、4年前もそうだった。みんな同じようにはしゃいでいた。また今年も集まって楽しかった。みんなこの4年間、いろんなことがあったと思う。ある友人はガンではないのに手術されたと怒っていた。医者のいいなりになると恐い、と彼は真剣にいう。この年になって女性問題で真剣に悩んだ、というまことにご苦労さんなオトウサンもいた。でも元気があってよろしいなあ。

1時に始まった会が、ヤキトリ屋の3次会で終了したのは午後9時過ぎだった。僕もさすがに疲れていた。しかし前回はラーメン屋での4次会まで続き、夜の11時過ぎまで元気に騒いだと思う。やはり4年の歳月は侮れない。

最後に次回の話になった。世話役が3年後くらいでどうかといった。すると、毎年やれ、みんないつまでいるか分からんぞ、という声が上がった。そうか、やっぱり内心ではみんな心細いんだ。
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105 アイルランド紀行(7)レプラコーンに気をつけて
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98 ベトナム紀行(8)駆け足バンコクそしてハノイ
97 ベトナム紀行(7)サヨナラ!「サイゴン」
96 ベトナム紀行(6)再びのホーチミン
95 ベトナム紀行(5)アンコール・ワットの空の下
94 ベトナム紀行(4)タイを追い出した町
93 ベトナム紀行(3)メコンデルタの森へ
92 ベトナム紀行(2)暑い!ホーチミン町歩き
91 ベトナム紀行(1)「僕の1号線」はどこに?
90 マイ・センチメンタル・ジャーニー
89 シルクロードの旅(12)風の城、アヤズ・カラ
88 シルクロードの旅(11)「博物館都市」イチャン・カラ、ヒワ
87 シルクロードの旅(10)ちいさなリンゴ
86 シルクロードの旅(9)「愛の町」アシュハバード
85 シルクロードの旅(8)中央アジア最大の世界遺産メルブ遺跡
84 シルクロードの旅(7)未知の国へ
83 シルクロードの旅(6)国境越え
82 シルクロードの旅(5)ブハラ、深夜のトイレ
81 シルクロードの旅(4)ブハラへの道
80 シルクロードの旅(3)アレキサンダー大王が来た街
79 シルクロードの旅(2)青の都サマルカンド
78 シルクロードの旅(1)タシュケント到着
77 小笠原の旅(7)惜別
76 小笠原の旅(6)小笠原海洋センター
75 小笠原の旅(5)母島列島
74 小笠原の旅(4)宝石の島、南島
73 小笠原の旅(3)ザトウクジラの海
72 小笠原の旅(2)BONIN ISLANDS
71 小笠原の旅(1)波路はるかに
70 インド紀行(7)タージ・マハルの光と影
69 インド紀行(6)ガンジス川の夜明け
68 インド紀行(5)夜行寝台「ハウラー・カルカ・メイル・2311号」
67 インド紀行(4)ダージリン滞在
66 インド紀行(3)ダージリンへの道
65 インド紀行(2)コルカタにて
64 インド紀行(1)遠かったインド
63 暮れの浅草昼酒
62 雨の東北、芭蕉と紅葉旅
61 南会津の旅◆扮の尾瀬沼)
60 南会津の旅 弁愡浚村)
59 奥日光戦場ヶ原
58 スコットランド紀行(5)いくつかの思い出
57 スコットランド紀行(4)偉大なり、ピーター・ラビット
56 スコットランド紀行(3)ネス湖からスカイ島へ
55 スコットランド紀行(2)ウォールフラワー
54 スコットランド紀行(1)エジンバラ大学でお茶を
53 風に吹かれて八丈島(3)
52 風に吹かれて八丈島(2)
51 風に吹かれて八丈島(1)
50 イリオモテヤマネコに逢いたくて(4)
49 イリオモテヤマネコに逢いたくて(3)
48 イリオモテヤマネコに逢いたくて(2)
47 イリオモテヤマネコに逢いたくて(1)
46 秋空の下、いくつかの再会
45 白神の森の宝
44 挑戦!乗鞍岳
43 北東北ローカル線の旅 (4)津軽じょんがらの夜はふけて
42 北東北ローカル線の旅(3) 雨の下北恐山
41 北東北ローカル線の旅(2) うみねこレール
40 北東北ローカル線の旅(1) 春のうららのドリームライン
39 50年の時を超えて
38 知床の秋(2)、ウトロにて
37 知床の秋(1)、鮭遡上
36 風に吹かれて尾瀬ケ原
35 白神山地「ブナの学校」
34 初夏の山形、サクランボとそばの旅
33 ハワイ島滞在記(2)
32 ハワイ島滞在記(1)
31 春の予感、鹿沢(かざわ)高原にて
30 嗚呼!還暦大同窓会
29 年の暮れ、奥那須で想う
28 ラムネの湯「長湯温泉」はいいぞ
27 また「再会の時」道後温泉にて
26 大自然の力、姥湯温泉
25 知床の青いそら、光と風 その
24 知床の青いそら、光と風
23 春の東北ローカル線の旅
22 春の東北ローカル線の旅
21 春の東北ローカル線の旅
20 上海点描
19 やさしかったチェジュの人たち
18 さらば、災の年よ。
17 僕たちのセンチメンタルジャーニー
16 台風を避けて信州へ
15 青島印象記
14 よるべない孤独にみちた宿
13 海があまりに碧いのです
12 安曇野の光と水、そして高瀬川渓谷葛温泉
11 鞍馬山の向こうへ、大悲山峰定寺
10 雪の会津鉄道トロッコ列車の旅
9 初春初旅救急車
8 年の暮れ、峩々温泉再訪記
7 東北紅葉旅峩々温泉
6 蔦温泉、蔦沼、ブナの森
5 雨の幕川温泉再訪記
4 憧れのフルム-ン法師の湯
3 信州塩田平別所温泉
2 信州信濃路
1 東北紅葉雪見風呂
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