1989年創立 個の出会いと交流の場 研究会インフォネット
HOME 研究会インフォネットとは 会員規約 お問い合わせ
会員専用ページ
過去のINFONET REPORT カレンダー 会員連載エッセイ なんでも掲示板
会員紹介 財務報告
会員連載エッセイ
最近の記事 以前の記事
ボーダーを越えて
46 訛った英語
2005年3月11日
雨宮 和子 雨宮 和子 [あめみや かずこ]

1947年、東京都生まれ。だが、子どものときからあちこちに移動して、故郷なるものがない。1971年から1年3ヶ月を東南アジアで過ごした後、カリフォルニアに移住し、現在に至る。ボリビアへの沖縄移民について調べたり書いたりしているが、配偶者のアボカド農園経営も手伝う何でも屋。家族は、配偶者、犬1匹、猫1匹、オウム1羽。
▲ ワシントンのポトマック河畔の桜の始まりは、1912年に東京から贈られた3020本。そのうち現存しているのは150本だけで、あとは全部植え替えられた。この写真撮影は2000年3月20日。
▲ 1年中色鮮やかな我が家のブーゲンビリア。色鮮やかなのは花ではなくて葉っぱである。真ん中の小さな白いのが花。原産地はブラジル。
「外国人の私のしゃべることばを、アメリカ人は日本人より親切に辛抱強く聞いてくれますね」
そう言ったのは、日本で大学教員をしている韓国人研究者である。いまは完璧な日本語を話すけれど、日本の大学院に留学した当初は、まず日本語習得に大変なことだったろう。カリフォルニアで1年間研究生活を送っていったのだが、英語も読み書きには不自由しなくても、話したり聞いたりするのに最初は慣れるまで苦労したと思う。その2つの体験から彼が引き出した感想なのである。それはなんとなく想像がつく。

日本では日常生活で外国人と日本語で話すことは少ない。いや、ほとんどの人にはそういう機会はないと言っていいだろう。だから好意的に解釈すると、完璧でない日本語に接することがないと、外国人訛りや文法的誤りには寛容でないのかもしれない。もちろん、違う人種、特に欧米人が日本語を話す場合は、ちゃんと話せなくて当たり前と思う逆偏見もある。

一方、カリフォルニアにはいまでも移民がどんどんやって来る。サンディエゴには、東南アジアやアフリカからの難民が集中して住んでいる一画がある。彼らにメキシコや中米からの移民が混じり、その地区の小学校に通う子どもたちが話すことばは、35カ国語にも上るそうだ。また、大学の周囲には一時的に滞在する外国人研究者やその家族が、都市部にはビジネスの駐在員やその家族が多い。だからカリフォルニア人は、外国訛りのある英語を耳にすることに慣れているといえる。

2000年の国勢調査によると、英語以外のことばが話されている家庭に暮らす5歳以上の人は、カリフォルニア全人口のなんと39.5%(アメリカ全国では17.9%)にも達する。つまり、10人のうちほぼ4人は家に帰ると英語以外のことばで生活しているのだ。(この統計には、私のように英語が母国語でなくても家で英語を話す者は含まれていない。)

ヨーロッパ系アメリカ人(白人)はアメリカ全国では全人口の69.1%を占めているが、カリフォルニアでは人口の半数を割って46.7%である。残り53.3%の中で大多数を占めるのは、ラティノ(Latino)と呼ばれるスペイン語とポルトガル語を母国語とする人たち。アメリカ全人口の12.5%を占めるラティノは、その半分がカリフォルニアとテキサスに住んでおり、カリフォルニアの人口の32.4%に上る。近年はラティノ人口はアメリカ中に広がりつつあり、数も急速に増え、2000年には3530万だったが、2020年には7000万、2050年には1億になるだろうと予測されている。(ちなみに2000年のアメリカ総人口は2億9千万強である。)

マイノリティの人口が増えると、自分たちの政治経済基盤に対する「侵入」として脅威を感じる白人たちもいて、それが長年の有色人種への偏見や差別とつながっていく。「外国語訛りの英語を話しても受け入れられるということには、限界がありますよ」と、冒頭の韓国人研究者の言葉に、私は釘を刺したものである。外国語訛りのある英語がどこまでも受け入れられると考えたら、しっぺ返しを食らうこともあるからである。

たとえば、こんな実験がある。人種や民族、宗教、性別などを理由に住居を貸さないというのは法律で禁止されているが、ちゃんと守られているだろうか。それを調べるために、まずラティノ系の姓名を名乗ってスペイン語のアクセントをつけた英語で、「広告に出ていたアパートを借りたいのですが」と電話してみる。すると、「残念ながら、もう借り手があります」と言われる。次に、黒人独特のアクセントで同じように電話する。返事は、「空きアパートはもうありません」という。今度はアングロサクソン系の姓名で、中流白人らしい英語で同じことを聞いてみると、「まだ空いていますよ」という返事があったりするという。そういう差別をしたことがわかると、罰金を課せられるのだが、まだ根絶できていないようだ。

アメリカ国内にも方言や各地方の訛りというものはある。南部の出身者は、テレビや映画に出たければまず南部訛りを捨てる努力をするといわれている。が、アメリカではアクセントと偏見差別とが密接に結びつくのは、人種民族である。

さて私のアクセントはどうか、というと、習った英語はアメリカ英語だが、もちろん日本語訛りがあり、おまけにイギリス人と長い間同居しているためにイギリス式アクセントもいつの間に混じってしまっている。非営利団体への勧誘や寄付の電話がかかってきてちょっとおしゃべりすると、「あなたのアクセントはどこのですか?」と聞かれることがある。意地悪な私は、「どこだと思う?」と逆に聞き返す。すると相手は困ってしまう。アメミヤという聞き慣れない名字をたよりしようとしても、かえって混乱するばかりだ。
「ポルトガルかなぁ」と言った人もいる。
「イラン?」と聞かれたこともある。
それでも私はすぐには正解を教えない。こんなゲームでも楽しまないと、いちいち勧誘電話になど応対していられないもの。
最近の記事 ページトップへ 以前の記事
ボーダーを越えて
雨宮 和子
かくてありけり
沼田 清
葉山日記
中山 俊明
寄り道まわり道
吉田 美智枝
NEW
僕の偏見紀行
時津 寿之
老舗の店頭から
齋藤 恵
ぴくせる日記
橋場 恵梨香
縁の下のバイオリン弾き
西村 万里
やもめ日記
シーラ・ジョンソン
徒然.... in California
明子・ミーダー
きょう一日を穏やかに
永島 さくら
ガルテン〜私の庭物語
原田 美佳
バックナンバー一覧
199 お葬式
198 とうとうやって来た日、そして雨
197 思い切り生きる
196 一夜が明けて
195 ヘザーと私の日本旅行記(6 下)文楽とフグ
194 ヘザーと私の日本旅行記(6 上)ショッピング
193 ヘザーと私の日本旅行記(5)多様な日本
192 ヘザーと私の日本旅行記(4 下)河津桜と温泉
191 ヘザーと私の日本旅行記(4 上)伊豆へ向かう
190 ヘザーと私の日本旅行記(3)葉山・鎌倉
189 ヘザーと私の日本旅行記(2)江戸・かっぱ橋・オフ会
188 ヘザーと私の日本旅行記(1) 日本到着
187 生ある日々を
186 花嫁の父
185 プラチナの裏地
184 家族をつなぐ指輪
183 「血の月」を追いかけて
182 ママハハだった母
181 アジア人(下)固定観念を越えて
180 ジプシーの目
179 選挙に映ったアメリカの顔
178 とうとう、きょう
177 アジア人(上)その概念
176 海軍出身
175 特攻志願
174 お祭り
173 ありがとう、で1年を
172 クリスマスプレゼントが今年もまた
171 スージー・ウォンの世界
170 秩序の秘訣
169 黒い雲の行方
168 ドアを開けたら
167 今年もまた
166 ボリビア(7)ボリビアで和菓子を
165 ボリビア(6)パクーの登場
164 ボリビア(5)卵の力、女性の力
163 ボリビア(4)小麦の都
162 ボリビア(3)米の都
161 ボリビア(2)2つの日系移住地
160 ボリビア(1)サンタクルス
159 闇の中で
158 みんなの宝物
157 新語の中身
156 年末のご挨拶
155 ピッチピッチチャップチャップ
154 神の仕業
153 ラタトゥイユ(2)レシピ
152 ラタトゥイユ(1)
151 プティ・タ・プティの最後の1片
150 ジプシーとの知恵競争は続く
149 豊かな粗食
148 中絶抗争
147 スーザン・ボイルの勝利
146 黄昏の親子関係
145 子ども好き
144 言葉雑感(8)regift
143 言葉雑感(7)「ん」の音
142 アメリカの理想
141 ときめく日の足音
140 言葉雑感(6)ミルクとは
139 ミルクの教訓
138 年末の独り言
137 投票日日誌
136 あと3日
135 ペイリンから見えるアメリカ
134 訴訟顛末記(1)まず弁護士を
133 園遊会で
132 柔の姿勢
131 言葉雑感(5)4文字言葉
130 豪邸の住人
129 言葉雑感(4)カミはカミでも
128 言葉雑感(3)ブタ年生まれ
127 言葉雑感(2)子年のネズミ
126 言葉雑感(1)グローバルなピリピリ
125 やって来た山火事(最終回)これから
124 やって来た山火事(9)いとおしい木々
123 やって来た山火事(8)現実に直面して
122 やって来た山火事(7)焦燥の2日間
121 やって来た山火事(6)私の方舟
120 やって来た山火事(5)避難準備
119 やって来た山火事(4)止まない風
118 やって来た山火事(3)第1日目の夜
117 やって来た山火事(2)第1日目の夕方
116 やって来た山火事(1)第1日目の昼下がり
115 しあわせな1日
114 チェ
113 メキシコの息づかい
112 「石の家」
111 「バッキンガム宮殿」での晩餐会
110 ケーキ1切れ
109 「豊かさ」の中身
108 イタリアの修道僧
107 3年ぶりの日本
106 キューバ:アメリカの恥
105 キューバ:バラコア
104 キューバ:甘い歴史の苦い思い出
103 キューバ:2つの通貨
102 キューバ:近過ぎて遠い国
101 ホンジュラス(最終回)去る者,残る者
100 ホンジュラス(19)シエンプレ・ウニードス
99 ホンジュラス(18)ガリフナ放送
98 あと1年、だったら
97 無信仰者のクリスマス
96 ホンジュラス(17)ガリフナ
95 ホンジュラス(16)バナナ共和国
94 ホンジュラス(15)マヤ文明の跡
93 ホンジュラス(14)牢獄の中と外
92 ホンジュラス(13)先住民の女性たち
91 ホンジュラス(12)一番安全な町
90 ホンジュラス(11)オランチョの森(下)
89 ホンジュラス(10)オランチョの森(上)
88 金鉱の陰で(追記)カリフォルニアで
87 ホンジュラス(9)金鉱の陰で(下)
86 ホンジュラス(8)金鉱の陰で (中)
85 ホンジュラス(7)金鉱の陰で (上)
84 ホンジュラス(6)原則に沿って
83 ホンジュラス(5)農地のない農民
82 移民政争とラティノの力(続)
81 移民政争とラティノの力
80 ホンジュラス(4)消え去った人々
79 ホンジュラス(3)ホテル・ナンキンで
78 ホンジュラス(2)レンピーラ
77 ホンジュラス(1)行ってみよう
76 本物を見る
75 豊かな心
74 蝶の力
73 単刀直入
72 愛の表現
71 ベネット・バーガー
70 感謝の日
69 思わぬ道草(最終回)原点
68 思わぬ道草(19)回復に向けて
67 思わぬ道草(18)人は孤島にあらず
66 「ニューオーリーンズ」に見えたもの
65 思わぬ道草(17)一歩後退の教訓
64 思わぬ道草(16)日没症候群
63 甦生の兆し
62 ニューオーリーンズとクリスチャン
61 思わぬ道草(15)もつれた糸
60 思わぬ道草(14)彼の青い目(下)
59 思わぬ道草(13)彼の青い目(上)
58 思わぬ道草(12)ローマ鎧
57 思わぬ道草(11)看護師騒動
56 思わぬ道草(10)近くの他人
55 思わぬ道草(9)ロールバー
54 思わぬ道草(8)楽観の2日間
53 思わぬ道草(7)一人三脚
52 思わぬ道草(6)長い夜
51 思わぬ道草(5)OR
50 思わぬ道草(4)ER
49 思わぬ道草(3)常習犯
48 思わぬ道草(2)目撃者
47 思わぬ道草(1)3月14日の夕方
46 訛った英語
45 イギリスの英語
44 英語とアメリカ
43 海の中に(下)
42 海の中に(上)
41 姓というマーカー(下)
40 姓というマーカー(上)
39 国籍あれこれ:選択肢
38 国籍あれこれ:彼の場合
37 国籍あれこれ:私の場合
36 ボーダーとは
35 最終回:グローバリゼーション
34 番外編:クリスマス・ディナー
33 サンタアナの風
32 お刺身パーティー
31 アボカド泥棒
30 アボカドと生きる鳥
29 カラスのご馳走
28 三つ子の魂
27 子宝のもと?
26 アボカド探検家
25 ゴールドラッシュの波紋(下)
24 ゴールドラッシュの波紋(上)
23 海を渡って(下)
22 海を渡って (上)
21 コンキスタドール
20 アボカド事始め
19 ハースマザーの行方
18 世界アボカド会議
17 フエルテ
16 ハースマザーの木(下)
15 ハースマザーの木(上)
14 鶏より馬
13 働く人々
12 花婿の父
11 シンコ・デ・マヨ
10 「奇跡の3月」
9 アボカド形の穴
8 父親不明
7 女性花・男性花
6 トーマスのギャンブル(2)
5 トーマスのギャンブル(1)
4 成熟と完熟
3 グァカモーレ
2 アボカドさまざま
1 メックスフライ
ページトップへ
Copyright(C) FORUM INFONET, All rights reserved. Copyright(C) FORUM INFONET, All rights reserved.
掲載の記事・写真・イラスト等、全てのコンテンツの無断転載・複写を禁じます。
0 7 7 0 3 2 5 0
昨日の訪問者数0 4 2 4 0 本日の現在までの訪問者数0 3 0 3 5