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151 修学院離宮 Part 2
2015年2月17日
齋藤 恵 齋藤 恵 [さいとう・さとし]

1948年埼玉県生まれ、1970年に大学卒業後、時計メーカーの輸出部門に就職。8年間の勤務の後、宮仕えには向かない自身の性格を認識して、父の経営していた小売店 (創業1912年 = 大正元年)に転身しました。歴史、風土、絵画、言語等に関心が強く、駄文ながら文章を書くことがストレス発散の手段のひとつになっています。ささやかながら、会社を経営するというのはそれなりにたいへんです。ここに書かせていただくことは、そうしたストレスの大いなる発散のためですので、お読みになる方もどうぞお気軽に。
▲ 修学院離宮内略図
▲ 離宮内の御馬車道
▲ 離宮内の耕作地
直前の記事で書きましたように、修学院離宮は京都市街地の東北部、比叡山のふもとにあります。平安時代、比叡山延暦寺の別院、修学院(しゅがくいん)があったことに、その地名が由来することも、前の記事に書きました。

その延暦寺別院の修学院が、当時「しゅうがくいん」ではなくて、「しゅがくいん」と読まれていたことが、現在まで影響しているらしいのですが、離宮は今でも最も正式には「しゅがくいんりきゅう」と読まれるようです。様々な資料を見ますと、両方の読み方が出てきますが、離宮の名前としては、「しゅがくいん」が本来の読み方だと書いてあるものが目につきました。もっとも、全国的な地図発行会社、昭文社の都市地図、京都版、2010年の地図には「SHUGAKUIN RIKYU」と印刷されています。これはしかし、どちらとも読める「フリガナ」ですねえ! さすがにお上手と言うべきなのでしょうか?

離宮参観時にもらったパンフレットは、宮内庁京都事務所監修で、財団法人菊葉文化協会という団体が発行しているものなのですが、それには「しゅうがくいんりきゅう」と書かれていました。(ちなみに、この財団法人は、宮内庁管理下の伝承文化や文化財について、調査研究や紹介を行っている団体のようです。)

ここからは私見ですが、本来は「しゅがくいん」と読まれていたものが、次第に一般的な読み方である「しゅうがくいん」へと変化して来たものと思われます。ですから、現在では、どちらで読んでも誤りではないのだと思います。と言うよりも、故事を知らなければ、たいていの人は「しゅうがくいん」と読むことでしょう。

修学院離宮の読み方についてのあれこれは、この程度にしますが、この離宮はたいへん広大です。(敷地面積16万5千坪余)おまけに、敷地内の高低差が40メートルもあるのだそうで、参観は1時間では終わりません。通常参観の場合の所用時間は、1時間15分だそうです。実際、私達の場合も朝10時にスタートして、離宮を出たのは11時半近くでした。でも、高低差40メートルは、実感とは違いました。そんなにあるようには感じませんでした。

上段の写真は、離宮内部の略図です。中央左が離宮の入口で、そこは「下離宮(しもりきゅう)」または「下御茶屋(しものおちゃや)」と呼ばれている一帯です。中央下部が、「中離宮(なかりきゅう)」または「中御茶屋(なかのおちゃや)」、そして右上部が「上離宮(かみりきゅう)」または「上御茶屋(かみのおちゃや)」となります。その名の通り、高低差は「上」が一番高い場所で、「下」が低い地域です。

これら3つの地域を結ぶ通路には、明治になってから松が植えられて、現在は松並木になっています。この通路は正式には、「御馬車道」と言われるのだそうです。さぞかし手入れがたいへんだろうなあ、と思われるものでした。中段の写真がその一部ですが、「立ち入らないでください」という看板と共に、通路をブロックしている竹棒を、参観グループの先頭を歩くガイド役の宮内庁職員の方がはずし、最後尾に付いてくる皇宮警察官が閉めていました。広いですから、管理もなかなかたいへんです。

ところで、3つの離宮の間には、広大な空間があり、そこは農地として使われています。下段の写真は、その一部なのですが、そこには米作用の田んぼもあれば、野菜づくり用らしい畑もありました。ガイドの職員さんにお聞きしましたら、耕作は、とても宮内庁でできる作業ではないので、近隣の農家の方々に土地をお貸しして、地代をお金でいただいているのだそうです。地代として作物の現物をもらっても仕方がないからとのことでした。

それから、参観していて気がついたのですが、離宮内にはほとんど外灯らしいものがありませんでした。つまり、夜は「御馬車道」も含めて、真っ暗になるらしいのです。ふと思ったのですが、3つの離宮には、それぞれいくつかの建物があります。茶室だったり、客殿だったりするのですが、日中は雨戸を開けて、内部が見えるようにしますが、夜間や悪天候の日は、雨戸を開けておくわけにはいかないと思います。

そこで聞いてみました。雨戸は毎日開閉するのですか、と。それに対しては、まだ比較的新人らしいガイド役の方は、よくぞ聞いてくださったとばかりに、お話してくれました。

参観の最後の組は毎日午後3時出発です。ということは、そのグループが参観を終えるのは4時半近くになります。参観者達が門を出てから、上離宮にある「隣雲亭」(これがもっとも遠い建物です)を含めて5つの建物の雨戸を閉めることになるのですが、季節によってはかなり暗くなります。京都は、真冬には5時と言うと真っ暗になる関東地方よりは、いくぶん日没が遅いのですが、それでも師走の京都では、5時というと薄暗くなります。そんな中を懐中電灯片手に、上離宮を含めて3つの離宮の5つの建物の雨戸を閉め、カギをかけて回るのは、かなりの大仕事だと言っておられました。その方自身は経験がないそうですが、いろいろあった歴史を背負っている場所ですので、感受性が強い方などは、いささか薄気味悪い気持になることもあったらしいです、とお聞きして、なるほどと納得しました。スタッフの方も、なかなかたいへんですね。

中離宮の楽只軒(らくしけん)という建物には、霞棚(かすみだな)というたいへん立派な違棚(ちだいだな)があります。たしかに見事なものですが、これは、桂離宮の桂棚、醍醐三宝院の醍醐棚と共に、天下の三大名棚と呼ばれているのだそうです。違棚にそんなのがあるとは知りませんでした。でも、いずれも京都にありますね!

私達がここを訪れたのは、師走に入ってしばらく経ってからのことでしたので、もう紅葉はほぼ終わっていました。仕事の関係もあり、私達は紅葉最盛期に京都を訪れることはできないのですが、いつの日か、紅葉真っ盛りの京都を楽しみたいとあらためて思いました。でも、あんな素敵な場所で仕事をしておられる宮内庁職員の方にも、それなりのご苦労があるのですね。ご苦労様です。
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