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僕の偏見紀行
92 ベトナム紀行(2)暑い!ホーチミン町歩き
2010年3月11日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ サイゴン川を渡った下町の魚屋さん。ハサミで器用に魚をさばく。
▲ バックパッカーの町、デタム通り。カフェから通りを眺めると飽きることがない。
▲ マジェスティックホテルのバーからの眺め。サイゴン川が目の前に広がり、イルミネーションで飾られた観光船が行き交う。
翌朝は6時に目覚めた、といっても時差が2時間あるから、日本なら8時である。充分とった睡眠のおかげで爽やかな目覚めだ。

僕は旅先のほうが家にいる時より体調がいい。見知らぬ国の刺激と適度な緊張感がいいのかもしれない。

ホテルの朝食は簡単なビュッフェスタイルだが、期待していた以上によかった。コックが日替わりで、フォーやビーフンなどの麺類を目の前で調理してくれる。さらにオムレツ目玉焼きなども注文に応じてくれる。

その他、パン類とお粥もそろい、ハム・ソーセージ等の肉類も充実している。もちろん生野菜やスイカなどのフルーツも揃っている。

これが1泊5800円に含まれているのだから、スイカ大好きニンゲンである僕は一切文句ございません、ということになる。

朝食の後、早速町歩きに出かける。ホテルの前の大通りを横断してサイゴン川のほとりに出る。土色の豊かなな流れが眼前に広がる。貨物船やフエリーが行き交う。その向こうの遠い空に高層ビルが聳えている。

500ドン(2円50銭)払って、頻繁に行き来しているフェリーで対岸に渡る。3分ぐらいのサイゴン川クルーズ。フェリーのなかにもバイクが溢れ、エンジン音と排気ガスが物凄い。マスクをかけている人も多い。いずれこの騒音と排気ガスはホーチミンの町で大きな問題になるだろうと思った。

対岸には昔ながら下町の人々の生活があった。道端には、果物・魚・肉などの露店が立ち並び、あたりは買物する人、屋台でフォーを食べている人など、活気が溢れていた。ここの魚屋さんは魚をハサミで器用にさばいており驚いた。

フェリーで対岸へ戻る。川の上は風があって涼しかったが、町は10時過ぎというのにとても暑い。乾期のため湿度は低いが、大通りの暑さは半端ではない。知らない町に来たら、出来るだけ自分の足か、バスなどで動くことを楽しみにしているが、この暑さではそうもいかない。

バックパッカーの先達ともいえる、作家下川裕治氏はその著作で、暑いアジアの国々での町歩きでは急ぎ足は禁物、必ずゆるゆると歩くこと、といっているが、誠にその通りだった。わが身をもってそのことを実感する。

それではバスで移動するか、と思ったがこれまたバス停を探したり、そこまで行くのが暑くて大変だ。仕方なくタクシーに頼るが、困ったのが言葉だ。僕の片言の英語がなかなか通じない。今までいろんな国で何とか通じたのがスムーズにいかない。

ベトナムの人々は、フランス・アメリカという大国と長年にわたり戦った末、見事勝利したのだ。英語はいわば敵性語だろうか、と思うのは考えすぎか。

もちろん僕の英語も相当あやしくて、日本風になまっているが、ドライバー氏たちの英語もベトナム風なのか、なまりが強くよく聞き取れない。それでも地図を見せたり、筆談したりなんとかしのいだ。

列車の時刻を確認するために、サイゴン駅へ行くときも困った。SAIGON STATION という簡単な単語が全く通じない。さすがの強心臓の僕もまいった。ドライバー氏もタクシー配車係りの娘さんも首をかしげるばかり。ガイドブックの地図と駅舎の写真でやっと分ってもらった。

ホーチミンでまず行きたかったのが、中華街であるチョロンとそこのビンタイ市場、そしてバックパッカーが世界中から集まるデタム通りだった。

ところがビンタイ市場は旧正月休みで閑散としていた。出直すことにしてデタム通りへ向かう。狭い2車線の通りの両側にはぎっしりと、カフェ・レストラン・安ホテル・旅行社・両替屋などが立ち並ぶ。欧米人、アジア人、様々な人種の人々が行き交っている。これがデタム通りか、わくわくするような嬉しさをこらえつつ、僕はカフェの片隅から通りを眺めた。

僕にとって旅する喜びは、こんな街角で行き交う人を眺めたり、名もない土地を走るバスから、車窓をかすめる風景を見ることに尽きる。そしてそれは名所旧跡や豪華リゾートにはなかった。

よく見ると年季の入ったヒッピーといった趣の熟年カップルも混じっている。カフェでは、あごひげの濃い青年が黙然と一人座り、かたわらには手をからめた男女が互いを見つめながら語り合っている。

国も人種も分からないが、ここにいる自由きままな若者達が羨ましい。もし僕が彼らのように、ずっと若い時にここに来ていたら、僕の人生観は変わったかもしれない。

ところで明日からどうしようか、通りにある旅行社へ入った。ホーチミンだけで8日間というのも芸が無い話だ。古都フエや昔の町並みが残るホイアンなどいいかもしれない。そんな軽い気持ちで相談したが、そう簡単ではなかった。

そう、今は旧正月、テトだった。外国からの観光客も多いし、ベトナムの人も休暇で里帰りをする。そのため移動の国内便は軒並み満席だった。フエには行けるがホーチミンへの戻りの便が取れない。

悩んでも仕方ないので、取りあえず明日のメコンデルタ日帰りツアーを予約する。日本語ガイド付25ドル、英語ガイドより高かったのはなぜだろう。日本人は甘く見られているのか。その後のことは明日ツアーから戻って考えることにする。

一日の締めくくりにマジェスティックホテルのバーへ行く。最上階の、吹き抜けになったオープンテラスに座ると、サイゴン川の雄大な流れが迫ってくる。日暮れ時には涼しい川風がふき、汗ばんだ身体に心地よい。日が暮れると、行き交う観光船のイルミネーションが暗い水面に揺らめき、ため息がでるほど美しい。

沢木さんによると、「サイゴンの一番長い日」などで知られた、今は亡きジャーナリスト近藤紘一氏も、その人生の様々な岐路にこのバーに立ち寄り、サイゴン川の夜景に運命を感じたという。

彼はサイゴンを愛し、最初の奥様を亡くした後、サイゴンで新しい奥様に出会うことになるが、このことは「サイゴンから来た妻と娘」など、彼の著作に詳しい。

沢木さんは、縁はあったのに直接出会うことの無かった彼を偲んで、このバーを訪れた。沢木さんも愛したこの酒場は「BREEZE SKY BAR」と呼ばれるそうだが、その名の通り、心地よい「そよ風の天空酒場」だった。    (続く)
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64 インド紀行(1)遠かったインド
63 暮れの浅草昼酒
62 雨の東北、芭蕉と紅葉旅
61 南会津の旅◆扮の尾瀬沼)
60 南会津の旅 弁愡浚村)
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57 スコットランド紀行(4)偉大なり、ピーター・ラビット
56 スコットランド紀行(3)ネス湖からスカイ島へ
55 スコットランド紀行(2)ウォールフラワー
54 スコットランド紀行(1)エジンバラ大学でお茶を
53 風に吹かれて八丈島(3)
52 風に吹かれて八丈島(2)
51 風に吹かれて八丈島(1)
50 イリオモテヤマネコに逢いたくて(4)
49 イリオモテヤマネコに逢いたくて(3)
48 イリオモテヤマネコに逢いたくて(2)
47 イリオモテヤマネコに逢いたくて(1)
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41 北東北ローカル線の旅(2) うみねこレール
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24 知床の青いそら、光と風
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22 春の東北ローカル線の旅
21 春の東北ローカル線の旅
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14 よるべない孤独にみちた宿
13 海があまりに碧いのです
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10 雪の会津鉄道トロッコ列車の旅
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6 蔦温泉、蔦沼、ブナの森
5 雨の幕川温泉再訪記
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1 東北紅葉雪見風呂
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