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僕の偏見紀行
246 神々の棲む島(3)続セミニャックの日々
2018年12月18日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ セミニャックの郵便局、陽気で愉快な局長さんと。現在ハガキの受付中なので真面目な顔つきです。
▲ セミニャックで出会ったネコ、野良犬は多いがネコを見かけるのは稀だった。暑い中、暖かそうな毛皮にくるまれてお疲れ様だ。
▲ 食事でお世話になったWARUNG MURAH(ワルン・ムラ)。海への道に面している。
バリ島には実にたくさんの神々が棲んでいる。車の行き交う路傍に、ホテルやレストランの玄関に、民家の一隅にそれぞれ祠や祭壇が設けられている。人々は日々花や食物を供え、祈りをささげている。

コンビニでもレジの女性がカウンター内の小さな祭壇にお祈りをしていた。仕事中でもお祈りを欠かさない。バリでは信仰はまさに生活そのもの、まず信仰があってその中に生活がある。

クリスマスを祝い、その騒ぎが冷めやらぬ正月が来ると神社へお参りする。結婚式は神社や教会、お葬式はお寺という不思議な国ニッポン。そんな生活に何の違和感もない国からバリに来ると人々の信仰心の篤さに驚く。彼らが融通無碍な我々の生き方を見たら腰をぬかすかもしれない。

バリ島はジャワ・ヒンドゥー文化の影響を受けてきた。しかしジャワがイスラム化していく中でも、バリ島ではヒンドゥー文化が残り、独自の発展を遂げて来た。今でも1日3回、色とりどりの花や食物をささげて祈る姿がいたるところで見られる。

人々の篤い信仰心に加えて豊かな自然の恵み、1年に何回も実るコメや果物、そして海の幸、これがバリ・ヒンドゥーの文化を一段と華やかにしたのではないか。僕はバリの自然に触れ、沢山の神々に出会ってそう思った。

ホテルから数分歩いたところに大きな市場があった。お土産にいいようなお菓子や雑貨が山積になっている。店員のオジサンにきくとお土産ナンバーワンはこれだ、といってピーナッツの袋を見せた。

塩味のごく普通のピーナッツ、ピーナッツを唯一の特産品とする千葉県人としてはちょっとまずい気がしたが、素直にオジサンのアドバイスに従った。ところがこれが当たりだった。香ばしくローストされた塩味のそれは実に旨かった。あまり大きな声で言えないが、我が地元産より旨い気がする。

市場の横にくっついて小さな郵便局があった。入るとちょび髭のオッサンが一人で忙し気に働いていた。郵便物を大袋に詰めそれをを片隅に積み上げている。他に従業員はいない、オッサン一人で孤軍奮闘だ。

声をかけるといきなりどこから来た、ジャパンか、オレは茨城に住んだことがある、お前はどこだ、茨城か?とまくし立てる。カミサンは姉たちへ送るハガキを買った。どのくらいで届くか尋るといとも簡単に、すぐ着くノープロブレム、という。その間も作業の手を休めない。やたらに元気で、まるで昼から一杯やったような上機嫌だ。

彼は狭い事務所内をあちこち動き回り、その合間に僕らに話しかけた。こんなに働いているのにオレはカネがない、ノーマネー、ノーマネーと愚痴を言う。

彼がノーマネーは日本語で何というか、と尋ねるので素寒貧または文無しと教えた。すると今度はスカンピン、スカンピンと大はしゃぎ。全く面白いというか不思議な人物だった。そこで投函した3通の日本向けハガキだが、2通は無事着いたが、もう1通は2ケ月以上経過した現在も届かない。

郵便局の隣に携帯ショップがあったので入った。カミサン用のSIMカードは空港で購入済だったが僕のは未だだった。しかし入った途端驚いた。カウンターにいたのは、派手なタトゥーとピアスのハードロック調の若者。彼に料金を吹っ掛けられたらどうしよう、しかし今更後戻りも出来ない、困った。

意を決して僕はタブレットを取り出し、現地用のSIMカードに入れ替えてほしいと頼んだ。すると彼はテキパキと僕のタブレットからSIMを取り出し、あっという間に現地用と交換してくれた。その後のセットアップもすぐ終わり、料金はデータ通信のみで2週間分1600円という。まあまあ相場通りだ。人を見かけで判断してはいけない、僕は反省した。

それにしてもこんな場面でいつも思うことだが、SIMの交換作業を簡単に済ます若者達には感心する。僕のタブレットは中国製だが使用言語は日本語。彼らにとっては外国版タブレットだ。そのSIM入替、セットアップなど、IT音痴の僕にはとても不可能だ。どこへ行っても、そんなことをこともなげにこなすアジアの若者達に出会う、いつも大したもんだと感心する。

セミニャック最後の夜、夕食にいつものワルンへ行った。すっかり顔なじみになった若者がニコニコして迎えてくれる。安くて旨いインドネシア料理、滞在中随分お世話になった。もしこれが無ければ、毎日の食事に不自由したことだろう。

食事が終わり彼に明日ウブドへ行くと話した。それを聞いて彼は、淋しくなると残念がった。いつものことだが僕も淋しい思いをする。年々人との別れが辛くなる。もう一度会えるだろうか、いつ会えるだろうか、ついそんなことを考えてしまう。

ワルンを出て海へ向かって歩いた。週末だったせいか、海へ至る道路は車で溢れ、海岸は人がいっぱいだった。もうすっかり暗くなった浜辺で人々が思い思いに楽しんでいる。手をつないだカップル、幼子を抱いた家族連れ、それぞれの幸せな時間を楽しんでいる。旅先でその土地の人々の幸せそうな姿を見るのもいいものだ。(続く)
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81 シルクロードの旅(4)ブハラへの道
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71 小笠原の旅(1)波路はるかに
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67 インド紀行(4)ダージリン滞在
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65 インド紀行(2)コルカタにて
64 インド紀行(1)遠かったインド
63 暮れの浅草昼酒
62 雨の東北、芭蕉と紅葉旅
61 南会津の旅◆扮の尾瀬沼)
60 南会津の旅 弁愡浚村)
59 奥日光戦場ヶ原
58 スコットランド紀行(5)いくつかの思い出
57 スコットランド紀行(4)偉大なり、ピーター・ラビット
56 スコットランド紀行(3)ネス湖からスカイ島へ
55 スコットランド紀行(2)ウォールフラワー
54 スコットランド紀行(1)エジンバラ大学でお茶を
53 風に吹かれて八丈島(3)
52 風に吹かれて八丈島(2)
51 風に吹かれて八丈島(1)
50 イリオモテヤマネコに逢いたくて(4)
49 イリオモテヤマネコに逢いたくて(3)
48 イリオモテヤマネコに逢いたくて(2)
47 イリオモテヤマネコに逢いたくて(1)
46 秋空の下、いくつかの再会
45 白神の森の宝
44 挑戦!乗鞍岳
43 北東北ローカル線の旅 (4)津軽じょんがらの夜はふけて
42 北東北ローカル線の旅(3) 雨の下北恐山
41 北東北ローカル線の旅(2) うみねこレール
40 北東北ローカル線の旅(1) 春のうららのドリームライン
39 50年の時を超えて
38 知床の秋(2)、ウトロにて
37 知床の秋(1)、鮭遡上
36 風に吹かれて尾瀬ケ原
35 白神山地「ブナの学校」
34 初夏の山形、サクランボとそばの旅
33 ハワイ島滞在記(2)
32 ハワイ島滞在記(1)
31 春の予感、鹿沢(かざわ)高原にて
30 嗚呼!還暦大同窓会
29 年の暮れ、奥那須で想う
28 ラムネの湯「長湯温泉」はいいぞ
27 また「再会の時」道後温泉にて
26 大自然の力、姥湯温泉
25 知床の青いそら、光と風 その
24 知床の青いそら、光と風
23 春の東北ローカル線の旅
22 春の東北ローカル線の旅
21 春の東北ローカル線の旅
20 上海点描
19 やさしかったチェジュの人たち
18 さらば、災の年よ。
17 僕たちのセンチメンタルジャーニー
16 台風を避けて信州へ
15 青島印象記
14 よるべない孤独にみちた宿
13 海があまりに碧いのです
12 安曇野の光と水、そして高瀬川渓谷葛温泉
11 鞍馬山の向こうへ、大悲山峰定寺
10 雪の会津鉄道トロッコ列車の旅
9 初春初旅救急車
8 年の暮れ、峩々温泉再訪記
7 東北紅葉旅峩々温泉
6 蔦温泉、蔦沼、ブナの森
5 雨の幕川温泉再訪記
4 憧れのフルム-ン法師の湯
3 信州塩田平別所温泉
2 信州信濃路
1 東北紅葉雪見風呂
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