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かくてありけり
53 定点観測
2013年3月14日
沼田 清 沼田 清 [ぬまた きよし]

1948年、新潟県生まれ。千葉大学工学部卒業。2008年、通信社写真部を卒業、以後は資料写真セクションで嘱託として古い写真の掘り起こしと点検に従事。勤務の傍ら個人的に災害写真史を調べ、現在は明治三陸津波の写真の解明に努めている。仕事を離れては日曜菜園で気分転換を図っている。
▲ 海側から見た現在の東京
皆様お久しぶりです。エッセイを休止してもう4年になるでしょうか。定年を迎えてから抱えた仕事が徐々に片付き、この頃は少し余裕ができたので、活動を再開することにしました。息切れしないようぼちぼちやりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

再開第一弾は、中山さんが紹介してくださった写真展「東京の半世紀」について、制作に携わった一員として、宣伝も兼ねて書かせてもらいます。なお、会場の展示を見に行けない方は、WEB上のサイト(http://jpri.kyodo.co.jp)でも公開していますのでぜひご覧ください。

▽定点観測
この写真展の主催者は、通信社の歴史や、通信社と新聞社の活動に関する調査研究をやっている財団法人新聞通信調査会です。その委託を受けて、共同通信社が、所蔵する資料写真を基に、半世紀前の東京のニュースの場所や場面を現在の姿と併せて御覧に入れようというものです。キーワードは「定点観測」です。33組のビフォア&アフターを揃えました。キャプションを長めにして、英訳も付記しました。
写真編集に従事していると、1枚だけでは何の変哲もない写真が、昔と今を対比させることで、1+1=2以上の価値が出てくることにしばしば気づきます。

定点観測とは本来、気象用語であり、定められた場所で、継続的に観測を行うことです。継続的に行うと、まずはその場所の基本的な特徴や傾向が把握できて、次にそれを基準にして隔たり具合や変化が分かるようになるわけです。
写真でやる場合、継続的にといっても、東京タワーや東京スカイツリーのように、短期的に塔の成長過程を記録することは可能ですが、普段の風景をのべつ幕なしに撮り続けることは困難です。5年〜10年の間隔で定期的に記録するのが現実的です。それでもスパンを縮めて明治、大正、昭和(戦前)、昭和(戦後)、平成で対比させると変化は一目瞭然です。時間の集積のなせる業です。


▽レトロ写真
共同通信の資料写真セクションでは4年前に「レトロ写真−あのころ」というシリーズを始めました。毎日1枚、その日起きた昔のできごとの写真を365日休みなく紹介するもので、写真説明を長くして、記事がなくても説明だけで完結するようにしました。担当のDさんは苦労しながら4年間続け、その数ざっと1500枚。貴重なアーカイブができました。その点検を私も手伝いましたが、時々、この現場は今どうなっているのだろうか、昔と今を対比させたら面白いだろうなと思うケースが何度もありました。あるときは、路上にフラフープで遊ぶ子供たちの写真のように、場所を割り出し、実地踏査して確認したこともありました。 

今回の写真展はレトロ写真の延長線上にあり、私の夢を叶えるものとなりました。
33枚の古い写真はそれぞれが時代をとらえています。現在の姿と比較対照すると、東京の半世紀の変化が浮かび上がってきます。

▽ランドマーク
一口に写真で定点観測をと言っても、そこに欠かせないものはなんでしょうか?
私は「ランドマーク」だと思います。今回の展示で見れば国会議事堂、東京タワー、霞が関ビル、世界貿易センタービル、浅草寺、皇居、東京駅、隅田川、橋etc。
自然のものでも人工物でもよい、脇役でも画面の中にそれが写っていると位置特定に結びつき、見る人も、確かに同じ場所だなと納得してくれる。ランドマークは昔と今をつなぐ役目を果たしていて、これがないと新旧二つの関連が見えない。ランドマークがあってこそ定点観測は成り立つのです。
 ランドマークによる時間経過表現で一番印象に残っているのはSF映画「猿の惑星」第1作でした。エンディングで、主人公が馬に乗り海岸を進んでいくと岩陰から自由の女神の残骸が見えてきて、そこがかつてのニューヨークであったことを知る場面はインパクトがありました。

▽超高層ビル群
今回用意した半世紀前の写真の半分は空撮写真でした。そこで写真部にお願いして、現在の姿をできるだけ昔と同じアングルで空撮してもらいました。一連の空撮画像をパソコンに落とし、大画面のスライドショーでじっくりと見て再認識したのは、東京スカイツリーが新しいシンボルになったことと、東京の高層ビルラッシュです。
実は昨年の暮れに、帰省で乗った外房行きの高速バスがレインボーブリッジを通過する時、左手の車窓から見えたベイエリアの風景にはっとしました。海岸線から内陸に向かって広がる一連の超高層ビル群は、一瞬、ニューヨークなどアメリカの大都市にいるような錯覚を引き起こしました。東京の変貌ぶりを如実に感じた瞬間でした。

昨年、ニューヨークタイムズが日本の景気について書いた記事で「失われた20年って言われているけど、意外に調子が良いじゃない・・・」というトーンで、「日本は失敗した国」とするのは間違い、と結んでいたそうです。その根拠の一つが高層ビルラッシュでした。確かに景気が悪ければこんなにビルが建つわけはない。そこで紹介されていたのが「http://skyscraperpage.com」というサイトで、世界の超高層ビルを取り上げており、日本、とりわけ東京の現状も把握できます。

 何はともあれ、初日に会場をのぞいてきました。東京国際フォーラムのガラス棟ロビーギャラリーは広大で、しかも8階分の巨大な吹き抜けとあって、その大空間には圧倒されます。その一隅に展開したちっぽけな写真展ですが、へばりつくようにしてじっくりと写真を観賞する人が絶えず、また外国人の姿も多くみられたのには、ホッと胸をなでおろしました。
皆様もどうぞ足をお運びください。

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