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僕の偏見紀行
114 メコンへの旅(4)チェンライ!チェンライ!
2011年2月22日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ チェンマイ郊外にある長距離バス乗り場、アーケード・バスセンター。ここからチェンライ行きのバスに乗る。
▲ チェンマイからチェンライへ向かう途中立ち寄った広場のトイレ、中央の大きな建物。右端がまんじゅうを買った売店。旨かった。
▲ チェンライの町で出会った女学生たち。バイクに3人乗り、明るく元気な人たちだった。
チェンライへの移動日、ホテルをチェックアウトした後ランドリーに寄って洗濯物を受けとる。昨夜頼んで今朝受け取りだから、特急料金で1キロ90バーツとなった。

お世話になったオバチャンのバイバイを背に、店先のソンテオに乗り込む。乗り合いタクシーだけど一人での利用もできるのだ。

アーケードバスセンターと呼ばれている長距離バス乗り場は郊外にあり、チェンマイの町から車で約15分、100バーツだった。一人で利用した割にはトゥクトゥクと同じくらいで助かった。

バスセンターの中は人があふれ、乗り場には数台の大型バスが並んでいる。キップ売りの窓口は沢山あり、すでに行列ができているところもある。

どこに並べばいいのか、案内表示はタイ文字ばかりで見当がつかない。インフォメーションらしき窓口で尋ねると、一番人が群れている窓口を指した。これはやばい、と列の後ろについた。

窓口はいくつもあるのだが、どうもチェンライ方面は一ヶ所らしい。一方でバンコクなどへは複数のバス会社が競合しているらしく、あちこちで切符売りの女性が声をからして客を呼んでいる。

しばらく並んだ後、チェンライ行きVIPバスを買おうとしたがダメだった。どうやら午前の便は売り切れらしい。VIPバスは1時間ごとにあるので予約なしでもいいと聞いていたが、空席は午後の便まで5時間待たねばならない。

初めての町には明るいうちに入る、これは一人旅の大原則だ。僕はやむなく、午前便で空きのあるセカンドクラス・エアコン付トイレ無し・132バーツを選択した。

チェンライまで3時間半はかかる。トイレはどうしよう、そう思った途端トイレに行きたくなる。待合所の奥にあるトイレは1回3バーツ、入り口にはちゃんとトイレ番の若者が座っている。見知らぬ町への長旅に緊張したのか、僕は出発までの30分間に、彼に2回もカネを払う羽目になった。

予定より15分遅れてバスは出発、持ち込めるか心配したスーツケースは車体下部の荷物入れに無事収納。ほぼ満員のバスは15分遅れで動き始めた。やれやれやっと一段落、一安心だ。

チェンライは古くはラーンナー・タイ王朝の首都として栄え、現在もタイ北部の県都として賑わう町である。またミャンマーやラオスとの国境にもほど近い。

かってはこの3国の国境が接する山岳地帯はゴールデントライアングルと呼ばれ、麻薬の一大生産地として有名だった。そしてこの麻薬はケシを栽培する山岳民族の生活を支え、さらには複雑な民族紛争の資金源にもなった。

紀行作家の下川裕治さんの著作によると、彼が初めてチェンライを訪れた1970年代後半頃は、ケシを栽培しそれをヘロインに精製して闇ルートに流す、という本来のゴールデントライアングルが健在で、市内にはビルマ領内で反政府活動を続ける少数民族のオフィスまであったらしい。

その当時、チェンライへ一人旅の若者が行くことすら、危険とされたらしい。しかしそれも今は昔、現在のチェンライは山岳地帯へのエレファント・トレッキングや、今では観光名所となったゴールデントライアングル、ミャンマー国境などへのツアー拠点として人気がある。

町を出てしばらくホコリっぽい田舎道を走ったバスは、やがてカーブの連続する山道を登り始めた。大型ではあるが古びたバスはあえぎながらながらジリジリと登っていく。エアコンはよく効いていたがそのうち寒くなり、あわてて上着を羽織った。

バスはいくつもの峠を越え、町や村を走り抜け、また山道を登った。時々山間の斜面に素朴な民家が点在するのが見える。その前庭ではイヌやニワトリ遊んでいる。いつか見たような、家の造りは全く違うけど日本の山里にもよく似た風景、どこか懐かしい。

バスの脇を親子3人乗りのバイクが追い越していく。まだ小さな赤ちゃんをひしと抱きしめた母親が後ろに座り、若い父親の広い背中にしがみつき風をしのいでいる。父は誇らしげに顔をあげ、向かい風をものともせずにバイクをすっ飛ばす。

いいなあ、僕は感動した。強くたくましい父、そして彼を頼りきった母子、人生の幸せのひとつの形を象徴するような光景だった。

バスは2時間ほど走った後トイレ休憩のため、小さな町の広場に停まった。広場の中央に大きなトイレがある。そばに小さな売店がくっついている。ここはトイレが主で売店はその付属のようだ。

その売店でまんじゅうをふかしている。白い湯気が立ちのぼりとても旨そうだ。視界の端に見えるトイレの入り口にひるみつつも、まんじゅうの魅力には勝てない。

白いまんじゅう2個で60えん、肉まんと味噌風のアン入りを買う。これが旨かった。特に味噌アン風は味わったことのない、日本の味噌とは全く違う、少し甘い風味のある味わいで後を引く旨さだった。

チェンライに到着したのは未だ午後の早い時間だった。ホテルにチェックインした僕は早速町の様子を見に出かけた。ホテルからすぐのところに僕が着いたバスセンターがあり、そのまわりにはバザールの屋台が並んでいる。

旅行案内所や地元の旅行社数社を訪ね情報を仕入れた。TAT(TOURISM AUTHORITY OF THAILAND)というたいそうな看板を掲げた公的案内所があった。入ってみたが参考になる情報が乏しく、窓口の若者の対応もそっけなかった。

地元旅行社では日帰りツアーについて調べ、ついでに食堂やランドリーの情報も集めた。明日はまずエレファント・トレッキングに出かけることにした。

これは象の背に揺られながら、山岳地帯をトレッキングするツアーだが、旅に出る前から行ってみたいツアーだった。ところが明日の参加者は僕一人らしく、料金が割高になってしまった。

旅行社を出て通りをぶらぶら歩いていたら賑やかな笑い声が聞こえた。見ると雑貨屋の店先に女学生が3人乗りしたバイクが停まっている。彼女たちは楽しげなおしゃべりに夢中の様子だ。

彼女たちのはじける明るさと、素朴な美しさに、あたりの空気までが輝いている。

不似合いな厚化粧の女学生に辟易することの多い日本とは大違いだ。僕は頼んで写真を撮らせてもらった。すると、レンズの向こうで彼女たちは楽しそうにコロコロと笑うのだった。

きっとチェンライは住みやすくていい町なんだ、そんな予感がした。 (続く)
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60 南会津の旅 弁愡浚村)
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24 知床の青いそら、光と風
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21 春の東北ローカル線の旅
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