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50 グランド・ジャット島の日曜日の午後
2006年10月23日
齋藤 恵 齋藤 恵 [さいとう・さとし]

1948年埼玉県生まれ、1970年に大学卒業後、時計メーカーの輸出部門に就職。8年間の勤務の後、宮仕えには向かない自身の性格を認識して、父の経営していた小売店 (創業1912年 = 大正元年)に転身しました。歴史、風土、絵画、言語等に関心が強く、駄文ながら文章を書くことがストレス発散の手段のひとつになっています。ささやかながら、会社を経営するというのはそれなりにたいへんです。ここに書かせていただくことは、そうしたストレスの大いなる発散のためですので、お読みになる方もどうぞお気軽に。


グランド・ジャット島の日曜日の午後
Sunday Afternoon on the Island of La Grande Jatte
(Un dimanche apres midi a l’ile de la Grande Jatte)


パリには人が大勢住んでいる島がいくつもあります、と言うと奇妙に感じられませんか? でも、それらはたしかに川に浮かぶ島なのです。いずれもセーヌ川の中洲で上流から見ると、Ile St.Louis, Ile de la Cite, Ile St-Germain, Ile de Billancourt, Ile de Puteaux, Ile du Pont そして、この文のテーマになっているIle de la Grande Jatte(グランド・ジャット島)となります。

グランド・ジャット島はパリ西部ブーローニュの森にほど近いセーヌ川の中洲のひとつです。私の30年来の親友のフランス人、マダム・クローディが16区のジョルジュ・マンデル通りの瀟洒なアパートを、事情があって売り払って、Ile de la Bilancourt のアパートに引っ越した時、とうとう私は島の住人になってしまった、と少しばかり気落ちしていたことを想い出します。でも4区のサンルイ島などは、人もうらやむ最高級住宅地ですので、島が他の平地より住宅地として格が落ちるなどということは決してないと思うのですが・・・。

今回は点描の絵のお話です。そして、テーマの絵は、新印象主義の創始者、ジョルジュ・スーラ (Georges Seurat 1859〜1891) の描いた標題の絵が上段の1枚です。この絵は私の好きな絵のひとつなのですが、ボートやヨットが行き交うセーヌ川の中洲の島で、釣りをしたり散歩したり、草の上に寝そべったり、思い思いに休日の午後を楽しむ人々を点描画法で丁寧に書き上げた大作です。きっとあなたもどこかでご覧になったことがあると思います。

画家が絵を描く時、パレットの上に様々な色の絵の具を並べて、それらを適当に混ぜ合わせながら、望み通りの色を作り出すというのが、普通の方法ですが、それを否定するところからスタートしたのが印象派の画家達でした。そもそも絵の具は混ぜれば混ぜるほど、限りなく黒い色に近づいていきます。その一方で、光は混ぜれば混ぜるほど、白色光に近づきます。あらゆる色の光を含んだ白昼の明るい太陽の光に照らされた自然の姿は、混ぜ合わされて暗くなった絵の具では表現できない。それが彼らの理論の出発点です。

とすれば、明るい自然の風景を描き出すのに、絵の具を混ぜて使うのは、適当でない。画面の明るさを保ちつつ、複雑な色合いを出すためには、小さなタッチで、混ぜない絵の具を並置すればよいのではないか、と考えたわけです。

見た目には、網膜上で色が混ぜ合わされて、混合色に見えるが、絵の具の明るさは損なわれないというわけです。これを徹底させて、小さな色点を丹念に並べる技法で絵を描いたのが、スーラ達点描主義の画家達です。スーラの他には、ポール・シニャック、アンリ−エドモン・クロス、マクシミリアン・リュス、テオ・ファン・レイセルベルヘなどがいます。

この絵はおよそ2m×3m の大きさがあり、点描主義絵画の代表的な作品です。時の流れを永遠に止めてしまったような、不思議な静けさがあります。

ところで、なんとこの1枚の静止した画像をモチーフにして、いまから10数年前にミュージカルを作ってしまった人がいて、しかもそれがブロードウェイで1年半のロングランとなり、大ヒットしたというのですから、世の中には、たいした人がいるものです。およそミュージカルとは、相容れない雰囲気の絵だと思うのですが。

主役はスーラとその恋人、マドレーヌ。私も残念ながらこのミュージカルを見てもいないし、ストーリーも知らないのですが、もしも、今後機会があったら、ぜひぜひ見てみたいと思います。どなたかご覧になった方がいらっしゃったら、是非ご感想をお聞かせください。

たいへん残念なことに、1891年3月に、スーラはインフルエンザのために31才の若さで亡くなってしまいました。これも有名な作品の <サーカス> (2段目の絵がそうです) 未完成なのは、そのためなのです。絵画の歴史上にも、この人が、あと○○年生きて活躍してくれたら、どれほどの作品を残してくれたか? と惜しまれる人々が大勢います。生きてさえいればよい、というものでもありませんが、やはり、まず健康に生きることですね。健康管理には注意を払って、なるべく長い間、元気で居たいと願っております。私もこんなことを言うような年齢になりました。

ちなみにこの絵は、アメリカ、シカゴにある、The Art Institute of Chicago に展示されています。当時の新興国家、アメリカ合衆国は、今でもよい絵をたくさん持っていますね。


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