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葉山日記
10 ドメイン −1
2003年5月2日
中山 俊明 中山 俊明 [なかやま としあき]

1946年4月23日生まれ。東京・大田区で育つが中2のとき、福岡県へ転校。70年春、九州大学を卒業後、共同通信に写真部員として入社。89年秋、異業種交流会「研究会インフォネット」を仲間とともに創設、世話人となる。91年春、共同通信を退社、株式会社インフォネットを設立。神奈川県・葉山町在住。

ニックネームはTOSHI、またはiPhone-G(爺)
▲ 知人のパーティーで懐かしい方に会った。10年前研究会インフォネットで講演をお願いした石川好さん(右=現秋田公立美術工芸短期大学学長)。小中陽太郎さん(中)は初対面だが気さくな方だった。田原総一朗さん(左)は元気がなかったなあ。
精神的に少々苦しい時期がこの2年続いた。自分の仕事のドメインがいったい何なのか見えなくなったのだ。英和辞書を開くと「Domain=領地、範囲、領分」とある。転じて専門領域を意味する。

かつて僕は報道カメラマンだった。つまりドメインは写真。その後、独立して会社を興し「社長」になった。つまりドメインが「会社経営」に転じたことになる。ではその会社の事業ドメインは? つまり僕がつくった会社はなにを事業領域とし、なにを目指そうとしたのか。実はこれが明確ではなかったことが、苦闘の原因だ。

いまから思えば、12年前大会社を退社した理由は「組織を離れて自由が欲しい」とか「アメリカに行きたい」とかが先で、「何をやりたい」というのはあとからの意味付けだったよう気がする。つまり会社としての事業はなんでも良かったのだ。

自分と自分の会社には「売り物」がない、ということにあとあと気づくことになる。「売り物」とはすなわちドメインである。そのドメインが専門性が高ければ高いほど、担えるひとの数が少なければ少ないほど市場価値は高くなる。

写真撮影や原稿書きでは飯が食えない! そのことに気づくのにあまり時間はかからなかった。では、それまでなぜ「高給」(当時、年収は1千万を超えていたはずだ)をもらえていたのか。理由は極めてシンプル。それは僕が大企業サラ−リーマンだったからである。つまり組織の一員として働いていたからこそいただけた給料であり、僕がやってきた仕事は、客観的にみれば高い市場価値をもつものではなかったのだ、ということに独立してはじめて気づいてしまったのである。

ここ数年、この小さい会社にも定年を間近かにした知人がよく現れるようになった。退職後の仕事を探している。

「家のローンも残っているし、のんびり家でリタイアメント生活を楽しむ余裕はないのですよ。あなたのところで仕事はないですか」
「我が社はほとんどネットワークで仕事をしており、したがって社員は極力雇わない方針なのですよ。インターネットはお使いですか」
「勉強しなくてはいけないと思ってますが、まったく。ぽちぽちとひとさし指でワープロ程度です。仕事はなんでもいいのですよ。編集営業をやりたいのですが、場合によっては掃除夫だってなんだって。月20万も稼げれば十分ですから」
「も?」

うーむ、サラリーマンだな、と思う。この人物もおそらくいま1000万以上の年俸を得ている。月給20万円というのは、大企業サラリーマンには「はした金」に思えるであろうことは想像がつく。

「うちの会社の粗利益率は約20%です」
「?」
「つまり売り上げから原価、つまり必要コストを引いた額ですね。あなたが月給20万円を得るためには毎月100万円の売り上げを発生させなくてはなりません」
「100万ですか。がんばればなんとか」
「いえ会社はそれだけでは成り立ちません。基本的に社員は最低でも自分の給料の3倍の粗利益を稼がねばならなとされています」
「えーっ、月300万の売り上げ。そんなの無理に決まっているじゃないですか。このこれといってなんの特技もない私にそりゃあ無理ですよ」
「でもそうしないと会社というのは生きていけないのですよ」
「じゃなぜ私はいまの給料をもらえているのですか。私が年収の3倍を稼いでいるとはとても思えない。どうして私の会社は成り立っているんだろう、不思議だなあ」
「不思議ですねえ」

信じられないかも知れないがこういう会話が現実になされるのである。そうして、こういう会話のために僕は時間を割かれるのである。相手はこの空虚な時間を消費することで「経営者」としての僕が失う「逸失利益」のことなど想像すら及ばない。こちらは時間で生きている。あなたは決まった「月給」で生きている。

「あっ、もうこんな時間だ。これでも私けっこう忙しくてね。もすこしお話ししていたんいだが次のアポがあるんで、これで失礼します」
あのお、無理やり時間をとって欲しい、といっていってきたのはそちらなんですけどお…・

だが笑えない。会社をやめ、「社長」になった当時の僕も、似たようなものだったかも知れないと、いま思うのだ。(続く)
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