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僕の偏見紀行
232 麗しの島へ(1)旅は青空
2018年1月1日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ 威容を誇る台北駅。ちょうど日本の初夏のような青空に映えて美しい。11月の台湾は晴れると心地よい。雨が降ると意外に寒い。
▲ 台北駅前のビル街の路地裏。旨そうな店が並んでいる。
▲ 台北駅のコンコースで座り込む人たち。のんびりした雰囲気がいい。
昨年は何かに憑かれたようにあちこちへ出かけた。1月にタイ、3月にベトナム、11月に台湾、12月にマカオ、と何の脈絡もなく、思いつくまま、気まぐれな旅の連続だった。ベトナムだけはここ数年毎年訪れるお決まりのコースだ。

3月のベトナムの後、暫くはおとなしくいていよう、そんな殊勝な気持になったが、それもつかの間、じっとしているのが何となく落ち着かない気持ちになった。ベトナムへは来年も同じ頃行くことに決めていたが、それまでの1年をどうしようか。

そこで急遽以前から気になっていたマカオに行くことにした。日本が寒くなる頃、乾期を迎えるマカオは11月頃がベストシーズンだという。寒さに弱い僕には手頃な旅先である。しかし11月は例年カミさんが九州へ帰るので、マカオ行きは12月になった。

今年は僕も、同窓会に参加するため、カミさんと同じ頃九州へ帰ることにしていた。ところが同窓会が来年に延期になり、僕の九州行きは無くなり、突然11月の予定が空いてしまった。

それではどこか他へ行くか、たちまち僕の心はその方向に動いた。こんな時僕の脳みそは忙しく働き、素早く九州の代案を見つけるのだ。

そうだ台湾へ行こう、何故か知らないが空前の台湾ブームという声も聞こえる、ような気もする。そこは九州へ行くのとあまり違わない時間と予算で行け、しかも暖かくて食い物は旨いという、いいなあ台湾。麗しの島、台湾へ行こう。

またもや長くてくどい前置きの末、やっと台湾旅行が始まった。台湾は今回が初めてではない。数十年前、業界の招待旅行で、未だ戒厳令下にあった台北を数回訪れたことがある。今にしさて思えば、それはバブルのあだ花、実に不毛で虚しい旅だった。

そんな中、1日だけのフリータイムに一人で小旅行をした。台北から列車で1時間足らずの基隆へ行った。切符を買うのも勝手がわからず大変だった。基隆で乗ったタクシーには街中を連れまわされ、法外なカネをとられた。しかし僕は、初めて異国の見知らぬ街を一人で歩き回るゾクゾクするような開放感を感じた。基隆港の屋台で食べた麺の味は今も忘れられない。

しかしその日以外は、現地ガイドに名所旧跡や土産物店を連れまわされ、夜は夜で大広間の宴会という、思い出したくない旅だ。

しかし時は流れ、台湾も日本もそして僕も変わった。もう一度今の台湾はどうなったか、自分の眼で見てみたい。そう思いつつ僕は台北行のバニラ航空に乗り込んだ。

定刻に到着した台北空港は中国からの観光客と思われる団体であふれていた。入国審査場は長蛇の列が続き、喧騒に満ちていた。割り込みするのもいるから油断できない。旅の始まりから疲れる展開となった。

やっとの思いで審査を終え出口へ向かう。その途中で通信会社のブースを発見、持参したタブレット用のSIMカードを購入する。

僕は窓口の女性にタブレットを見せ、8日間でデータ通信のみ、と告げる。彼女はたちまち僕のタブレットを開き、SIMカードを入れ替えてくれた。現地向けの設定までやってくれて1500円だった。これで滞在中どこでも不自由なくインターネットが使える。

どの国でも通信会社の担当者は、僕のタブレットを見ただけでいとも簡単にSIMカードを入替え、設定作業までやってのける。日本語仕様のタブレットなのに、彼らが苦も無く作業するのは驚きだ。僕がその方面に全くうといので余計そう思うのかもしれないが。

空港から市内へは、バスやタクシーの他、MRTという台北駅直行の電車があるが、僕は早くて確実な電車にした。案内板を頼りにかなり歩いた。改札口そばの切符売り場には行列が出来ている。自動販売機があったので両替したばかりのおカネを入れた。

ジャラジャラとお釣りが出てきたが切符が見当たらない。発車時刻は迫るし困った。もう一度見直すとコインに混じってプラスチックの丸いチップがあった。タイでも使われているトークンだ。それをつかんで急いで改札口へ行ったが、トークンを入れる場所がない。

仕方なく窓口へ行ってどう使うか尋ねると、いとも簡単に、マークにタッチしろ、という。改めて改札機をよく見たらカードをタッチする場所の下にトークンのマークがあった。こんな簡単なことが、海外で慌てるとなかなか分からない。

乗り込んだ電車は各駅停車だった。駅ごとに客が乗り降りする。空港連絡線ながら生活路線でもあるようだ。台北駅に着いてまた複雑な通路をかなり歩いた。

台北駅は台湾鉄道と台湾高速鉄道の拠点駅であり、同時に僕が乗ったMRTや地下鉄も乗り入れている。台北駅は複雑で巨大なターミナル駅だった。

台南へ移動するための高速鉄道の予約はネットで済ませていた。窓口を探し予約した切符を無事受けとった。そのついでに予約したホテルに近い出口を係員に尋ねた。ホテルは台北駅に隣接している。街歩きや電車の移動を考えてそこを選んだ。

地下街からエスカレーターで上がると出口はすぐだった。そこを出るとホテルは目の前だった。僕の狙い通りのロケーションだ。ホテルロビーはチェックインの客で混雑していた。日本の団体もいる。

僕は例によってフロントの女の子に、今夜は一晩だけだが5日後には再び3泊するから静かないい部屋をまわしてほしい、と頼んだ。彼女はちょっと困ったような顔をしたが、忙しく端末を叩き部屋をとってくれた。

その部屋は悪くなかったので翌朝、いい部屋だった、と彼女に礼を言った。すると彼女は、やった!、とちいさなガッツポーズで喜んだ。素直でいい子だ。彼女にはペットボトルでもお世話になった。

部屋にはミネラルウオーターのペットボトルが置いてあったが、それを開けるのが大変だった。プラスチック製の小さなフタが信じられないくらい固く、どうしても開けることができなかった。無理すると肩や肘を痛めそうだ。

そこで仕方なくロビーへ降りて彼女に頼んだ。彼女は快く引き受けてくれ、目の前で簡単に開けてくれた。一体これはどうなっているのか。ボトルをよく見ると、キャップが小ぶりで指をかけるところが日本製より幅が狭く、しかも相当固い。

しかし女の子が簡単にできることが僕には出来ない、これはちょっとショックだった。この問題は台湾滞在中どこも同様だった。僕はミネラルウォーターを買うたびに店員に開けてもらった。

初日の夕食は駅の地下街に会ったフードコートへ行った。勤め帰りの若者グループやカップルが多い。いくつもの小店が並んでいるので何にするか迷った。

店頭の写真付きメニューから、牛肉のそぼろかけご飯と麺、デザートには豆腐と小豆の汁粉風を頼んだ。ごく普通のお店だったがなかなか美味しかった。それにホテルから近くて手軽でいい。

翌朝はゆっくり寝て遅めの朝ごはんになった。ホテルのビュッフェは期待通りメニューが豊富で美味しかったが、唯一フルーツ類が東南アジアに比べると種類が少なくて残念。

食後、昼前の列車まで時間があったので台北駅見物に出かけた。電車の乗り方を調べたり、旅行プランを立てるのに必要な時刻表も手に入れたかった。台北駅を正面から眺めると、青空を背景に堂々たる駅舎がその威容を誇っていた。

内部のコンコースには催し物の展示が並ぶ巨大な空間が広がっていた。しかしその片隅には荷物を抱えて座り込む人々の姿もあり、のんびりした雰囲気もあった。あらゆるスペースでカネを稼ごうという東京駅とはちょっと違う。

インフォメーションセンターで尋ねるとあっさり時刻表がもらえた。薄手の冊子になった全国版で日本と同じ造りになっている。これを手に入れ一安心、これであちこち気ままに行けるぞ。台北近郊のローカル線に面白そうな駅がいろいろあるようだ。今回はまず台湾南部の古都台南に数日滞在、その後台北に戻ったらローカル線に乗ろう、そんな大まかな予定を立てている。

駅前はビル街が広がり、活気があった。ただそのビルの谷間の路地に入ると、ガラリと雰囲気が変わった。昔ながらの小さな食堂が軒を並べ、その店頭には旨そうなお惣菜が溢れていた。薄暗い路地は曲がりくねり、少し歩いただけで台北の人たちの日常生活を垣間見ることが出来た。

時間になったのでホテルに戻り荷物を持って再び駅へ向かった。ちょうど昼時なので列車に乗る前に名物の駅弁を買いたい。駅の中は昨夜少し歩いたので様子は分かっていた。高速鉄道の改札口に行くとその目の前に駅弁屋が店を構えている。人気のある白いご飯にブタの角煮、そして煮卵がついた弁当を選んだ。

台湾高速鉄道は在来線の台湾鉄道とは別会社になっており、車両は日本製だ。地元の人にも「しんかんせん」で通じる。車内は日本と同じ雰囲気で海外に来たという感じがせず、なんとなく高揚感に欠ける。しかし車内で開いた弁当の味はまさしく台湾、濃いめの味付けが実にうまくボリュームがあった。これで320円、安くて旨い。(続く) 
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241 ベトナム、あれから8年(3)沸騰ホイアン
240 ベトナム、あれから8年(2)トゥボン川のほとりで
239 ベトナム、あれから8年(1)あの頃僕は若かった
238 マカオ(3)大大大小小大小
237 マカオ(2)タイパ村そしてコロアネ村へ
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235 麗しの島へ(4)平渓線
234 麗しの島へ(3)古都台南
233 麗しの島へ(2)台南に降る雨
232 麗しの島へ(1)旅は青空
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230 またもやベトナム(10)ホーチミンの気ままな日々
229 またもやベトナム(9)ホイアンの日々
228 またもやベトナム(8)旧市街の娘たち
227 またもやベトナム(7)ホイアン到着!
226 またもやベトナム(6)凄腕支配人
225 またもやベトナム(5)ダラットの食堂
224 またもやベトナム(4)ダラット高原列車
223 またもやベトナム(3)アーティチョークはお好き?
222 またもやベトナム(2)はかない夢、ダラット
221 またもやベトナム(1)6度目のホーチミン
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218 バンコクの12日間(5)「戦場にかける橋」
217 バンコクの12日間(4)アユタヤ遺跡
216 バンコクの12日間(3)ジム・トンプソン
215 バンコクの12日間(2)バンコク徒然
214 バンコクの12日間(1)哀しみの街へ
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95 ベトナム紀行(5)アンコール・ワットの空の下
94 ベトナム紀行(4)タイを追い出した町
93 ベトナム紀行(3)メコンデルタの森へ
92 ベトナム紀行(2)暑い!ホーチミン町歩き
91 ベトナム紀行(1)「僕の1号線」はどこに?
90 マイ・センチメンタル・ジャーニー
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88 シルクロードの旅(11)「博物館都市」イチャン・カラ、ヒワ
87 シルクロードの旅(10)ちいさなリンゴ
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85 シルクロードの旅(8)中央アジア最大の世界遺産メルブ遺跡
84 シルクロードの旅(7)未知の国へ
83 シルクロードの旅(6)国境越え
82 シルクロードの旅(5)ブハラ、深夜のトイレ
81 シルクロードの旅(4)ブハラへの道
80 シルクロードの旅(3)アレキサンダー大王が来た街
79 シルクロードの旅(2)青の都サマルカンド
78 シルクロードの旅(1)タシュケント到着
77 小笠原の旅(7)惜別
76 小笠原の旅(6)小笠原海洋センター
75 小笠原の旅(5)母島列島
74 小笠原の旅(4)宝石の島、南島
73 小笠原の旅(3)ザトウクジラの海
72 小笠原の旅(2)BONIN ISLANDS
71 小笠原の旅(1)波路はるかに
70 インド紀行(7)タージ・マハルの光と影
69 インド紀行(6)ガンジス川の夜明け
68 インド紀行(5)夜行寝台「ハウラー・カルカ・メイル・2311号」
67 インド紀行(4)ダージリン滞在
66 インド紀行(3)ダージリンへの道
65 インド紀行(2)コルカタにて
64 インド紀行(1)遠かったインド
63 暮れの浅草昼酒
62 雨の東北、芭蕉と紅葉旅
61 南会津の旅◆扮の尾瀬沼)
60 南会津の旅 弁愡浚村)
59 奥日光戦場ヶ原
58 スコットランド紀行(5)いくつかの思い出
57 スコットランド紀行(4)偉大なり、ピーター・ラビット
56 スコットランド紀行(3)ネス湖からスカイ島へ
55 スコットランド紀行(2)ウォールフラワー
54 スコットランド紀行(1)エジンバラ大学でお茶を
53 風に吹かれて八丈島(3)
52 風に吹かれて八丈島(2)
51 風に吹かれて八丈島(1)
50 イリオモテヤマネコに逢いたくて(4)
49 イリオモテヤマネコに逢いたくて(3)
48 イリオモテヤマネコに逢いたくて(2)
47 イリオモテヤマネコに逢いたくて(1)
46 秋空の下、いくつかの再会
45 白神の森の宝
44 挑戦!乗鞍岳
43 北東北ローカル線の旅 (4)津軽じょんがらの夜はふけて
42 北東北ローカル線の旅(3) 雨の下北恐山
41 北東北ローカル線の旅(2) うみねこレール
40 北東北ローカル線の旅(1) 春のうららのドリームライン
39 50年の時を超えて
38 知床の秋(2)、ウトロにて
37 知床の秋(1)、鮭遡上
36 風に吹かれて尾瀬ケ原
35 白神山地「ブナの学校」
34 初夏の山形、サクランボとそばの旅
33 ハワイ島滞在記(2)
32 ハワイ島滞在記(1)
31 春の予感、鹿沢(かざわ)高原にて
30 嗚呼!還暦大同窓会
29 年の暮れ、奥那須で想う
28 ラムネの湯「長湯温泉」はいいぞ
27 また「再会の時」道後温泉にて
26 大自然の力、姥湯温泉
25 知床の青いそら、光と風 その
24 知床の青いそら、光と風
23 春の東北ローカル線の旅
22 春の東北ローカル線の旅
21 春の東北ローカル線の旅
20 上海点描
19 やさしかったチェジュの人たち
18 さらば、災の年よ。
17 僕たちのセンチメンタルジャーニー
16 台風を避けて信州へ
15 青島印象記
14 よるべない孤独にみちた宿
13 海があまりに碧いのです
12 安曇野の光と水、そして高瀬川渓谷葛温泉
11 鞍馬山の向こうへ、大悲山峰定寺
10 雪の会津鉄道トロッコ列車の旅
9 初春初旅救急車
8 年の暮れ、峩々温泉再訪記
7 東北紅葉旅峩々温泉
6 蔦温泉、蔦沼、ブナの森
5 雨の幕川温泉再訪記
4 憧れのフルム-ン法師の湯
3 信州塩田平別所温泉
2 信州信濃路
1 東北紅葉雪見風呂
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