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僕の偏見紀行
123 メコンへの旅(13)ルアンパバン上陸
2011年4月29日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ メコン川を下り到着したルアンパバンの船着場。船を降り通りまで階段を登った。下に見えているのが我々が乗ってきたスローボート。
▲ 通りから入った路地裏風景。古い民家の間にゲストハウスやカフェが増えつつある。突き当たりはメコン川。
▲ ルアンパバンで僕が通った食堂。安くて旨かった。通りの向こうはモン族のマーケット。
夕方5時頃ボートは無事ルアンパバンの桟橋に到着した。荷物を持って上陸、川岸から見上げるとずい分上まで急な階段が続いている。荷物を抱えてこれを登るのか、途方に暮れていたら少年たちが寄ってきた。早速スーツケースを頼む。

船の乗客が上までたどり着くと、トゥクトゥクの運転手たちが集まってきた。僕に寄ってきた一人にホテルまでの料金を聞くと100バーツという。これは高い、倍くらい吹っかけている。地図で見る限りホテルはそんなに遠くない。歩いても15分か20分くらいだろう。運転手に50バーツだ、といったらあっさり断られた。

足もと見やがって、とアタマに来た僕は憤然として歩き始めた。しつこく付いてきた運転手が80バーツというのを無視して歩き続ける。円に換算すればどうということのない金額、カッとなる程のこともないのだが、こうでもしなければ腹の虫が治まらない。

適当なところで妥協すれば自分も楽なのに、なかなかそうできない難儀な性格だ。年をとれば少しは丸くなるかと思ったが、逆にひどくなってきた。もしかしたらこれが老いるということなのか。

川沿いから路地を抜けて大通りに出た。これをまっすぐ行けばホテルに着くはずだ。ところが15分経ってもホテルが見えてこない。通りを間違えたのか、一瞬不安になる。

たそがれ時の通りはだんだんと薄暗くなってきた。両側にはレストラン、カフェ、ツーリストが並び、そこを大勢の観光客が行き交っている。欧米人が多い。

もう一度地図を確認し歩き続ける。そのうちやたら人の多いところへ出た。道の両脇には露店がずっと並び、その間をがひしめきながら行き交っている。有名なルアンパバンの夜市のようだ。

リュックを背負い、ショルダーバッグをぶら下げ、スーツケースをゴロゴロと引っ張って歩くのが難しくなってきた。通りは日中の熱気が残り蒸し暑い。たちまち汗だくになってくる。

人ごみを四苦八苦しながらかき分けてさらに歩く。やっと露店の途切れる交差点にたどり着いた。汗を拭きながら辺りを見回して考えた。もうこれ以上やみくもに歩いても無駄だろう。諦めて通りがかりのトゥクトゥクをつかまえた。

ホテルの名を告げたが言葉が通じず要領を得ない。地図を見せ身振り手振りで話すがピンと来ないようだ。途方に暮れていたら、ひとりの中年男が寄ってきた。

どうした、と尋ねるのでホテルの名を告げた。すると男はやや呆れ顔で、すぐそこだ、と指差す。その方向をよく見ると、交差点を渡ってすぐのところにホテルの小さなネオン看板が心細い光を放っている。

僕がうなづいてお礼を言うと男はあっさりといなくなった。今度の旅では困った時に親切な人に出会うことが多い。先日のゴールデントライアングルでもそうだった。

チェンセーンへどうやって行こうかと途方に暮れていたら、レストランの主人が車に乗せてくれた。もしかしたら、チェンマイのステープ山上の寺院の高僧につけてもらった手首のお守りのおかげかもしれない。

やっとの思いでたどり着いたホテル、古いけど由緒ある老舗だ、やれやれこれで一安心。ところがそこのフロントにいたのはわけの分からない3人の若い女の子だけだった。僕の予約を確認してキーを渡すともう仕事は済んだ、とばかりに3人ともニコニコしている。

海外への電話を部屋からかけることができるか、部屋からフロントへ連絡するときは内線の何番か、近くにクリーニング店はないか、など尋ねたがいずれも要領を得ない。フロントへは外線でホテルの代表電話にかけると繋がるなどと言い出す始末だ。

話がかみ合わず困っていたら、奥から黒服の若者が現れた。裏で食事しながら酒でも飲んでいたのか、顔が少し赤い。若いけどなんとなく油断ならない感じの男だ。さすがに電話の件はすぐに解決したが、海外通話はフロントの専用電話しか使えないらしい。

日本へは3分15ドルという。あんまり高いので値切るとあっさり10ドルになった。これは特別のサービスだと男に恩を着せられたが、後でホテルのサービスガイドの料金表を見たら10ドルだった。ほんとにいい加減なヤローだ。

さらにこの男はしきりに日帰りツアーを僕に勧めたり、1泊5ドル追加すればバスタブ付のもっといい部屋に移れるなど、僕にしつこく勧めた。若いのにどこか世間ずれした胡散臭いヤツだ。相手にしないことにする。

部屋に荷物を置いて夕食のために外へでる。夜市が続く大通りとメコン川にはさまれた一画は古い民家が並んでいる。足を踏み入れるとレンガ敷きの路地が交差し、夕闇の中で緑に囲まれた家々のたたずまいがどこか懐かしい。

そんな中に、白壁の古い家を改造した趣のあるレストランがひっそりと立っている。真新しいゲストハウスの隣りでは、新たにもう一軒が建築中だ。

路地から大通りに出れば、立ち並ぶカフエやレストランの前を多くの観光客が行き交い、その横をトゥクトゥクが排気ガスを撒き散らして走り回る。

静かな仏教の聖地、のどかな田舎町、というガイドブックのルアンパバンのイメージは大きく変わりつつある。もっとはやく来るべきだった。歩きながら僕はひそかに悔いた。

通りに面した小さな食堂に入った。ヒゲもじゃの白人の若者がひとりでチャーハンらしきものを食べている。旨そうだ。僕も同じ一皿とラオス定番の麺カオ・ソーイを頼んだ。

これはきしめん風の麺に独特の辛みそがのっており、さっぱりしたスープに複雑なみその味がからんで奥の深い美味しさだ。ありきたりの、この一品150円前後の麺と炒めご飯は申し訳ないほど旨かった。

思ったより騒々しくてホコリっぽい町だけど、明日からの4日間が楽しみになってきた。
         (続く)

メコンへの旅(11)のイギリス人アーティストの作品に興味のある方は下記をご覧下さい。
 sue  Fielding. co. uk
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64 インド紀行(1)遠かったインド
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62 雨の東北、芭蕉と紅葉旅
61 南会津の旅◆扮の尾瀬沼)
60 南会津の旅 弁愡浚村)
59 奥日光戦場ヶ原
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57 スコットランド紀行(4)偉大なり、ピーター・ラビット
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24 知床の青いそら、光と風
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21 春の東北ローカル線の旅
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11 鞍馬山の向こうへ、大悲山峰定寺
10 雪の会津鉄道トロッコ列車の旅
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8 年の暮れ、峩々温泉再訪記
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6 蔦温泉、蔦沼、ブナの森
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