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葉山日記
17 バナナとタマゴ
2003年7月14日
中山 俊明 中山 俊明 [なかやま としあき]

1946年4月23日生まれ。東京・大田区で育つが中2のとき、福岡県へ転校。70年春、九州大学を卒業後、共同通信に写真部員として入社。89年秋、異業種交流会「研究会インフォネット」を仲間とともに創設、世話人となる。91年春、共同通信を退社、株式会社インフォネットを設立。神奈川県・葉山町在住。

ニックネームはTOSHI、またはiPhone-G(爺)
先週頭に、これから株は上昇すると書いたとたん、週末にはどたんと下がった。今週はもう一段どたんと下がるのか、どたんと下がってどたんと上がって、という乱高下が続くのか、文字にしてしまった当人としては責任上ハラハラが続く(だから専門家といわれる人は無難なことしか言わないのですね)。

とはいえ僕自身は株を持っているわけではないし、興味もない。5年とか10年とかの長いスパンでみれば、今の時期が日本経済の底であった、ということにはなるとは思う。そういう意味での感覚的経済分析なので、くれぐれも、僕のエッセイを参考にして株などに手をださないようお願いしたい。おっと、この会にそんな人がいるわけないか。

日本が不景気だというが、世界的視野でみればまだまだもっとも豊かな国のひとつだ。現在の日本の窮乏観というのは相対的なものだと思う。ひとつはバブル期との比較。あれが異常で、現在がまとも、というだけだ。

もうひとつは貧富の格差。つまり自殺者や、リストラにあえぐひとがどんどん増える一方で、チョー金満階級が出現している。これが鬱屈したひがみ、ねたみ、そねみ、やっかみという感情になって世の中に充満している。つまり世界的な尺度でいえば、日本国民はきわめて高い生活水準にあるのに、この精神的鬱屈感によって「幸福感享受指数」はけしてたかくないのだ。犯罪の多発がこのことを裏付けている。現在の日本人の精神状況を僕は「日本人総鬱症候群」と呼んでいる。

会社勤めの息子と先日食事をしたおり、彼が「お父さんのバナナの話が大受けでさあ」と言った。というのは以前、僕が「お父さんが小さい頃はだな、お前のおじいちゃんに『僕にバナナを3本食べさせてくれたら死んでもいい』と言ったものだ」と息子に話したことがあって、それをそのまま仲間に話したところ、「大受けに受けた」というのだ。息子の仲間たちがこのバナナの話をどういうふうに受けとめたのか、細かいニュアンスは分からない。少なくとも「そうか、昔は貧しかったのだな」というまじめな議論に発展したというわけではないようだ。「マジかよう」とただ笑い転げただけなのではないか。

バナナやタマゴは「うまさ絶対評価基準」というものがあれば、間違いなく最上位に位置する食品であろう。うまいがゆえに、貴重だったがゆえに、人間の手で大量生産する方法が考えだされ、いつの間にか供給過剰となって価格が下落し、その値段のあまりの安さゆえに馬鹿にされる食品になってしまった。僕はいまでもバナナ、タマゴが大好きだし、食べるたびに「うまい」と声にだし、「君たちは不当に評価されている、すまぬ」と心のなかでわびている。

先日、ある実業家と話していたら、「ビジネスとは妥協です」という。まず目標を設定する。つぎにその目標を実現するための戦略を構築する。いちど戦略を決めたら、なにがなんでもその戦略を実現することにすべてのエネルギーを注ぐ。そうすると、結果的にすべての決断、行動は妥協の連続になってしまうーというわけだ。

なるほどなあ、と思った。ものごとを成し遂げるにはそのくらいの覚悟は必要だろう。僕がビジネスマンとしていつまでも成功できないでいる原因が分かったような気がした。性格的に妥協ができない。いやなヤツ、ずるいヤツとは仕事をしたくない。妙な正義感があって、あからさまな悪をみると黙っていられない。出世やカネに興味がないわけではないが、そのことのために自分を抑える、コントロールすることが、とても不得手なのだ。要領のいいタイプに見られがちだが、本質はとても要領が悪いタイプの人間だ。

くだんの実業家の話を、親しい友人にしたら「僕が妥協のできる人間だったらとうに社長になっているよ」と笑った。僕の周辺にはこういうタイプの人物が多い。僕の好きな友人たちは概してお人好しだから、社内の出世競争には興味がない。というか他人の足をひっぱったり、ごまをすってまでごりごりと出世する気はない。

ビジネスの世界はいざしらず、普通の人間関係においても、さいきん金銭的損得だけでものごとをとらえる日本人が多くなったような気がする。つまりカネが戦略目標になってしまった。この現象は老若男女を問わない。

なんだかタマゴやバナナのような、僕が好きな、というかまっとうなというか、これまで評価されてきた良き生き方をしている人間が評価されず、実力主義といえば聞こえはいいが、欧米狩猟民型戦闘主義が跋扈するいやな時代になってしまったなあ、と感ずる今日この頃である。

「犯人の中学生の親は市中引き回しのうえ、打ち首にすべし。勧善懲悪を徹底すべし」と言う政治家。おごりだなあ。下品だなあ。それなら打ち首はまず政治家から始めてくれよ。
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