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かくてありけり
56 「トリアージ」再び
2014年1月20日
沼田 清 沼田 清 [ぬまた きよし]

1948年、新潟県生まれ。千葉大学工学部卒業。2008年、通信社写真部を卒業、以後は資料写真セクションで嘱託として古い写真の掘り起こしと点検に従事。勤務の傍ら個人的に災害写真史を調べ、現在は明治三陸津波の写真の解明に努めている。仕事を離れては日曜菜園で気分転換を図っている。
 2年半前に関東大震災の写真を調べる過程で災害史の専門家とご縁ができ、それ以来災害写真史の探索に足を踏み入れました。関連して災害史や防災について関心を寄せています。

 3日前は「1・17」、阪神・淡路大震災から19周年の日でした。夜のNHKスペシャル「巨大地震そのとき何が 消防病院が機能不全?誰が守る?あなたの命 19年前の教訓は」といううたい文句に惹かれ、番組を見ました。
 3年前の3・11を経て、さらには次の首都直下型地震や東南海地震が想定される中、身の回りの防災について気になっていたところでした。

 この番組の要点は二つで、いずれも地域住民の関わりが重要と思いました。
 一つは震災時の消防の役割の明確化です。通常時、消防署は火災への対処と救急活動の二つを柱としています。今後、震災時には消火と延焼防止に全力を注ぎ、救護活動は住民の自助でやってもらいたい。神戸市消防局の責任者がそれを明言し、日ごろの防災訓練もそれに沿って進められていることが分かりました。神戸市の長田地区では津波を想定し、お年寄りや介助の必要な人を地域住民が避難場所まで30分以内に連れて行く訓練が行われていました。普段の生活で、どこにだれが住んでいるか、お隣が見えていないとできないことです。3・11でもそうであったように、コミュニティの維持が大切と感じました。

 二つ目は、トリアージ(負傷者選別)作業を住民レベルに下すことです。私が本エッセイでトリアージのことを書いたのは2003年でした。11年間でここまで来たかと正直驚きました。ちなみに当時、インターネットで検索したら2000件ヒットと記していましたが、今グーグルでやると46万件にもなります。すそ野が広がったことを示しています。

 私がとくに興味深く見たのは、東海大地震に備える静岡市城北部での試験的取り組みでした。震災発生の模擬訓練で、救急医療の専門家の指導の下、住民がトリアージを行いました。見た目の観察にとどまらず、マニュアルに従い、負傷者に質問を重ねていきます。ツリー式で展開する項目をイエス、ノーでたどっていくと最終的に症状の重さが4段階のどれかにランク付けされます。軽傷から蘇生見込みなしまで、緑、黄、赤、黒の4種のワッペンから当該の色が選ばれ、負傷者に張られます。赤が最優先で医療施設に運ばれるわけです。

 医師、看護婦、医薬品、手術設備、病床など緊急時に限られた医療資源を無駄なく使い、できるだけの救命治療を成すには住民の理解と協力が欠かせません。阪神・淡路大震災の例も紹介されていましたが、しばらくは放っていても大丈夫な軽症患者を連れた家族が何とか優先してやってもらおうと懇願し、医療チームがその対応に追われて、助かる命がむざむざ失われたといいます。
 この訓練は、医療チームの負担を軽減し救命治療に専念できるようにするだけでなく、トリアージに象徴される災害時救急医療に対する住民の意識向上に役立つと思います。

 一つ心配になったのは、素人である住民がやるトリアージに間違いは起きないかということでしたが、収容先の医療施設で専門家による最終トリアージが行われ、格上げや格下げの修正がありました。それは1割にも満たなかったようです。救急医療の専門家は全体として合格点をつけていました。今後この方式が徐々に広まるだろうなという予感がします。 

 ともかく、自分がそういう事態に遭遇し、緑(軽傷)のワッペンを付けられたら、ジタバタせず待つこと、緑色で済んだことを喜ぶしかないと肝に銘じたことでした。

 それにしても、もう19年もたったのかと、歳月の経過の速さに嘆息しています。
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