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165 京都名刹めぐり その30 梨木神社 Part 1
2016年2月12日
齋藤 恵 齋藤 恵 [さいとう・さとし]

1948年埼玉県生まれ、1970年に大学卒業後、時計メーカーの輸出部門に就職。8年間の勤務の後、宮仕えには向かない自身の性格を認識して、父の経営していた小売店 (創業1912年 = 大正元年)に転身しました。歴史、風土、絵画、言語等に関心が強く、駄文ながら文章を書くことがストレス発散の手段のひとつになっています。ささやかながら、会社を経営するというのはそれなりにたいへんです。ここに書かせていただくことは、そうしたストレスの大いなる発散のためですので、お読みになる方もどうぞお気軽に。
京都御苑の東側に隣接した道路、寺町通りに面して梨木神社という、萩の花で有名な神社があります。数百年どころか、千年を超えるような歴史を持つ神社仏閣が多い京都にあっては、ここは比較的、歴史の浅い神社のひとつだと思います。

この神社の創建は1885年(明治18年)です。幕末・明治維新期に朝廷側公家として活躍した三條実美(さねとみ)の父、実萬(さねつむ)を祀って、明治もだいぶ経ってから、三條家の邸宅跡に創建されました。

三條実美(さねとみ)は明治維新後も政治の表舞台で活躍しましたが、父、実萬(さねつむ)は幕末に朝廷側の交渉役として幕府との対決を担当し、結果的に安政の大獄で1858年に辞任・蟄居に追い込まれ、翌1859年(明治維新の8年前)に亡くなっています。

その三條実萬は、明治になってから、幕末時の功績によって「忠誠公」の諡(おくりな)をもらっています。子の実美の一貫した強い反徳川幕府的行動は、父の受難に対する恨みも与っていたのではないかと私は思っています。

実美は1891年(明治24年)にインフルエンザのために55歳で亡くなったのですが、その後、1915年(大正4年)に梨木神社に合祀されました。ですから、この神社の祭神は三條実萬、実美父子でして、今年創建131年ということになります。千年を超える歴史を持つ神社仏閣が珍しくない京都では、創建131年の神社というのは、やはり新しい部類に入ると思います。

とはいうものの130年以上も経てば、やはり本殿等建物の補修も必要になりますし、日常的な維持管理にも、それなりの費用がかかります。京都には、拝観料等で十分な収入を得ている有名神社仏閣が少なくありませんが、それがあまり期待できずに、檀家や氏子の寄進に頼って、苦しいやりくりをしている神社仏閣も少なからずあります。

実は、この梨木神社もその苦しいやりくり派のひとつだったようなのです。そう言えばここには元々拝観料はありませんでしたし、境内にある「京都三名水」のひとつ「染井」も私が見る限り、水をもらいに来る人は、けっこう多いように見受けましたが、水をもらった帰りに、お賽銭を置いていく人は見かけませんでした。

ちなみに、京都三名水とは、「醒ヶ井(さめがい)・県井(あがたい)・染井(そめい)」のことだそうです。この3つの井戸の内、現在でも元のままで水が湧き出しているのは、この染井だけだそうですが。

というような事情を伏線として、上段の写真をご覧ください。これは1年ほど前のものなのですが、中央の大きな鳥居(梨木神社という額がかかっています)のすぐ背後に見えるのは、最近の工事現場でよく見られる工事用の囲いです。鳥居から囲いまではせいぜい10メートルくらいに見えました。つまり鳥居にほとんどくっついて工事囲いがあり、その内側には当然ですが、建築中の建物があります。

鳥居の左脚下に工事中の案内看板がありますが、そこに表示してありますように、建築囲いの反対側のそぐそばにも鳥居があります。つまり、この建築現場は、この神社の「一の鳥居」と「二の鳥居」の間にあるのです。しかも、両方の鳥居ぎりぎりに隣接して。

これだけでも、かなり目を引く光景だと思いますが、その場所がまたすごいのです。中段の写真をご覧いただけますか? これは京都御苑の概略図です。この地図にもありますが、京都御苑を囲む道路は次の通りです。

東側: 寺町通り
西側: 烏丸通り
南側: 丸太町通り
北側: 今出川通り

御苑の東側、寺町通りに面して、御苑のほぼ中央に清和院御門があり、それを出てすぐの所に、梨木神社はあります。近所には、紫式部が源氏物語を執筆した邸宅跡としても名高い、廬山寺(ろざんじ)もあります。地図が少し見にくいかと存じますが、ともかく途方もない場所であることが推察できます。

ちなみに地図にありますように、清和院御門を入ってすぐ北側にはあの「京都迎賓館」があり、その西側には「京都御所」、南側には「仙頭御所」、「大宮御所」があるという、なんともすごい場所なのです。

さらに下段の写真をご覧ください。これはこの工事現場の図面です。細かい図面なので見にくくて恐縮ですが、建築中の建物は、一の鳥居と二の鳥居の間を完全に占拠しています。

こんなことが現実に可能なのか、と現場を見てびっくりした私は早速調べてみましたら、やはり、かなりいろいろなことがありました。

まず2013年9月に、地元の京都新聞にこんな記事が掲載されました。

<記事引用開始>

梨木神社境内にマンション建設計画発覚

京都御苑の隣にある神社が本殿の改修費用などに充てるためとして、境内の土地を開発業者に貸し、業者はマンションの建設を計画していることがわかりました。

計画では、境内約8100平方メートルのうち、参道があり、駐車場として使っている南側部分約2100平方メートルを、下京区のマンション開発業者に60年間の期限付きで貸す。

地上3階と地下1階で、35室の分譲マンションを建設し、2015年に完成する予定だ。

なぜそんなことに?

<記事引用終了>

ということで、かなりの波乱が予想されるような、梨木神社境内のマンション建築話が一般に知られるようになったのが2013年9月のことですから、今から2年半ほど前のことです。以後、予想通り、いろいろあったらしいのですが、お話が長くなりますので、この続きは Part 2 でお付き合いください。近日中に書かせていただきます。
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