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かくてありけり
65 ご破算で願いましては−14回目の引っ越し
2017年1月1日
沼田 清 沼田 清 [ぬまた きよし]

1948年、新潟県生まれ。千葉大学工学部卒業。2008年、通信社写真部を卒業、以後は資料写真セクションで嘱託として古い写真の掘り起こしと点検に従事。勤務の傍ら個人的に災害写真史を調べ、現在は明治三陸津波の写真の解明に努めている。仕事を離れては日曜菜園で気分転換を図っている。
▲ 処分を待つ本の山。愛着のある本は捨てがたいが、エイヤッとやるしかない
年の瀬を前にして住まいを移った。私個人では高校卒業後に家を離れてから14回目の引っ越しになる。前回、大阪へ単身赴任して、帰ってきたのが2005年の秋だったので、11年ぶりの引っ越しである。妻や子供たちにとっては22年半ぶりとなる。

ことわざに「居は気を移す」という。これは、住まいによって人間性が変わる−住環境の大切さを述べた言葉のようだが、私は、引っ越すことで気分が一新され新たなスタートを切ることができると勝手に解釈してきた。今回は妻の意向が大きい。一戸建ての家の維持・管理がだんだんと負担になってきた。これからさらに歳が行くと車も運転できなくなるかもしれないし不自由さが増す。身動きがしづらくなる前に、体力と気力があるうちに手を打つことにした。家を引き払い、子供たちには独立してもらい、駅に近いマンションに移り、夫婦二人で小ぢんまりと暮らすことになったのだ。いわば終活の一環である。

とはいえ、事はそう簡単ではない。これまで引っ越しのたびに、そして子供たちの成長につれ少しずつ家財道具も増え、それに比例して家の広さも増大してきた。それが今回一気に4割も狭くなる。家具、衣類、食器、書籍等々、どしどし処分しないと納まりが付かない。

物の多さに「玩物喪志」の4文字がちらちらすることもあったが、と言って断捨離はなかなか難しいのが正直なところだ。
とくに私には本の処分が大変である。であると書いたのはまだ完了していないからだ。処分に当たっての原則は、図書館の蔵書にあるのは手放す。現在の仕事に必要なもの、よほど思い出深いものは手元に残す。高価本でも今現在必要としないのは大学基金へ寄贈する。寄贈の対象にならないのは資源ごみとして出す。もちろん子供たちが欲しいというのは上げる。

それにしても不用品の処分がいかに大変であるかを実感した。家具や着物や道具類を、リサイクルショップへ持ち込んでも二束三文である。引き取ってくれるだけでもましなんだと思うようになった。喜んで引き取ってくれる知人がいたら、ハッピーな気持ちになれる。

例えば庭の片隅に置いてあった大型の物置は、私がお世話になっている農園へ寄贈した。今年の最終作業日に、腕っ節の強い5人と私で園主さんのトラックに載せて無事搬送できたときは実にホッとした。まだ十分使える鍵付の物置を園主さんが喜んでくれたのがうれしかった。

マンションに移って半月が経過した。越してしばらくは、朝起きて顔を洗うにしても、歯ブラシはどこ、ヒゲソリは、タオルはと、必要とするものにすいーっと手が出て行かない。ことごとく勝手が違う。日常の衣食住の生活用品は少なくとも100アイテムはあるだろう。それらすべてに置場が必要である。それがいまガラガラポンとご破算となり、改めて一つ一つの場所を確認し、記憶しなければならない。これをストレスと感じるか、ボケ防止の頭の体操と思うか?

先日は夜中にふと目が覚め、天井を見ながら「此処はどこだっけ?」と自問した。現役のカメラマン時代、長期の海外出張中にときどきそんなことがあった。それが久しぶりに起きたので苦笑した。以前の記憶や習慣を基に判断しようとするから、見当識が混乱するのだろう。

という次第でしばらくは試行錯誤と迷走状態が続くだろう。確かに妻が言うように、もっと高齢になったらできないことかもしれない。なにはともあれ賽は投げられた。兼好法師の言うように、今は「住みなす」ことが大切だ。でも果たして此処が終の棲家になるのだろうか?


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