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ボーダーを越えて
207 軽いカリフォルニアの1票
2020年11月1日
雨宮 和子 雨宮 和子 [あめみや かずこ]

1947年、東京都生まれ。だが、子どものときからあちこちに移動して、故郷なるものがない。1971年から1年3ヶ月を東南アジアで過ごした後、カリフォルニアに移住し、現在に至る。
▲ 選挙キャンペーンで送られてくる各種の宣伝パンフ。今年は郵便投票が多いせいか、この種の宣伝パンフはあまり多くない。
アメリカの総選挙の(最終)投票日が目の前に迫っています。その日より早く開設された投票所で投票を済ませた人や投票用紙を郵送した人の数は、すでに4年前の選挙に投票した総数を超えているとか。コロナウィールスのためにこれまでとは違った投票様式が取られているということもありますが、なんといっても、大統領選挙への強い関心、というか、トランプ政権に対する危機感、あるいはその反対に白人社会の力の縮小に対する危機感から、選挙への関心、いや熱情が高まっているのでしょう。私も2週間ほど前に郵便で投票を済ませました。

アメリカ全体でバイデンの優勢は変わっていません。それでも彼が選挙に勝つかどうかはわかりません。彼が実際により多くの票を獲得しても、です。

事実、獲得票数が多くても選挙に敗れた例が近年に2つもあります。1つは2000年の大統領選挙で、アル・ゴアがジョージ・W・ブッシュより50万票多く獲得したのに、敗れたこと(それも連邦最高裁判所がフロリダ州の票読みのし直しを途中で止める決定を下したことによりますから、本当にブッシュが勝ったのかどうかは、いまだに疑問ですが)。もう1つは4年前で、ヒラリー・クリントンが200万票もトランプより多く獲得しながら、敗れたのでした。

どうしてそんなことになったのかというと、大統領選挙には選挙人制度(electoral college)というのがあって、形式的には選挙人(elector)が大統領を選ぶのです。アメリカ全体で538名の選挙人がいて、そのうち270名以上を獲得した者が大統領として当選ということになります。選挙人の数は各州に割り当てられていて、日本のインターネットで検索すると、各州の選挙人の数は人口の大きさによって割り当てられるとあります。ところが、そうでもない、それが問題なのです。

アメリカで一番人口の多いカリフォルニアと一番少ないワイオミングを例にとってみると、カリフォルニアの2019年の推測人口は3951万強で、55人の選挙人が割り当てられています。それに対して、ワイオミングの推測人口は57万800人弱で3人の選挙人が割り当てられています。(その他、人口の少ないモンタナ、ノースダコタ、サウスダコタ、デラウェア、バーモント、アラスカの各州にも3人の選挙人が割り当てられています。)ここでちょっと計算してみてください。1人の選挙人にカリフォルニアでは71万8400強の票が必要であるのに対して、ワイオミングでは19万300弱の票でいいということになります。つまり、大統領選挙ではカリフォルニアの1票はワイオミングの1票の4分の1ぐらいの価値しかないということです。

カリフォルニアは圧倒的に民主党が優勢ですから、バイデンが間違いなく55人の選挙人を獲得するでしょう。(トランプはカリフォルニアに時間と費用をかけるのは無駄だと考えているのでしょう、選挙運動にも来ませんでした。)民主党は都市部に勢力があり、共和党は田舎に勢力があり、大統領選挙に鍵って言えば、田舎の一票の方が遥かに都市部の一票より重みがあるということです。

どうしてこんなことになったのかというと、アメリカ建国の際にどうやって大統領を選ぶかを決める段階で、奴隷を持つ州と持たない州の両方を納得させる方法として生まれたのだそうですが、そのことについてはまた後日、別の機会にお話ししましょう。

とにかく有権者の票を獲得するだけではダメで、もう1つの選挙人制度の段階で選挙人の票を獲得しなければ大統領に選ばれないのです。今回はそれに加えて、あからさまな投票妨害が起きていますから、11月3日午後8時に投票が終了するまで、ヒヤヒヤの連続です。いや、投票が済んで、開票が済んでも、どんなことがあるかわかりません。すでにトランプは、自分が勝たない選挙結果はインチキだと言い切っていますから。

民主主義を誇って来たはずのアメリカで、さまざまな形の投票妨害や暴力行為が起きるとは、まるで独裁者が政治を牛耳る第三世界の小国のよう。アメリカの民主主義もここまで落ちたのかと、失望しています。それでも、なんとかこれ以上の民主主義崩壊は食い止めてほしい、そう願ってハラハラしています。

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