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ボーダーを越えて
200 小さなしあわせ
2018年1月1日
雨宮 和子 雨宮 和子 [あめみや かずこ]

1947年、東京都生まれ。だが、子どものときからあちこちに移動して、故郷なるものがない。1971年から1年3ヶ月を東南アジアで過ごした後、カリフォルニアに移住し、現在に至る。ボリビアへの沖縄移民について調べたり書いたりしているが、配偶者のアボカド農園経営も手伝う何でも屋。家族は、配偶者、犬1匹、猫1匹、オウム1羽。
▲ 7月に訪れたトーマスの二人の甥といとこと家族たち。我が家での歓迎パーティーで。
▲ トーマスの兄の追悼式の前夜に家族たちと共にした夕食。
明けましておめでとうございます。

今年こそは、と言いかけて、あれっ? ひょっとしたら去年と同じことを言うのでは、という気がして、1年前のエッセイを見てみました。そうしたら、やっぱり。「今年は、もっと自分の好きなことをして、自分らしい生き方で、思い切り生きていきたいと思っています」なんて、言っていました。また同じことを「今年こそは」と言おうとしたのは、去年は「自分らしい生き方で、思い切り」生きたとは思わないということなのでしょう。

たしかに、去年も一昨年と同じように、苦手な数字とビジネスに追われる日々を送り続けました。そのことにうんざりしていたのですから、自分らしい生き方とはとても思えませんね。

でも、と考え直しました。

自分らしい生き方と言うと、カッコいいけれど、 中身がなんだか私にもよくわかっていないことに気づき、視点を変えて、去年うれしかったこと、よかったと思ったこと、しあわせと感じたことに意味があるのでないかと考えてみました。

真っ先に頭に浮かぶのは、トーマスの親類の歓迎会です。地元の友人たちも招待して50人を超える大パーティーになり、マリアッチの演奏で盛り上がって賑やかで楽しい集まりでした。その準備は何週間も前から始め、後片付けにも時間がかかって大仕事ではありましたが、みんなが大喜びしてくれて、ほんとうにやってよかったねと何度もトーマスと言って、大満足感を味わった ものです。

同じように、やってよかったと思うのは、感謝祭とクリスマスイブの地元の友人たちとの夕食会です。毎年のことなのですが、大学院時代に家族や親類が地元にいなくて祭日に行くところがない友人たちを夕食に呼んだことから始めたことですから、30年以上も続けてきました。常連もできるようになってから主品以外は参加者の持ち寄りになって随分と楽になりましたが、準備と後片付けには手間と時間がかかり、特に仕事が忙しいときにはストレスを感じたります。それでもやってよかったといつも思うのです。親しい友人たちと集まるのが楽しいし、みんなが喜んでくれると私もとってもうれしくなる。去年もそうでした。

去年はうれしいことだけではありませんでした。トーマスと私を引き合わせてくれ、40年以上も家族同様に付き合ってきたシャーリーが8月に他界し、9月にはトーマスのイギリスの兄も他界してしまいました。でもそこからは、悲しみより心が温まる思いの方が残りました。9月半ばにシャーリーの追悼パーティーがあり、家族や友人が大勢集まってシャーリーを偲んだのですが、そのとき無条件に思いやりをかけることのできた彼女がどんなに多くの人々の心に触れ、さまざまな影響を残したのかを深く感じさせられました。そういう彼女との出会いから生まれたしあわせは、一生の残るものです。

トーマスの兄の他界は私たちにとっては急なことで、追悼式に出る時間を作るのも、航空券を手に入れるのも容易ではありませんでした。義姉は無理して来なくてもいいと言ってくれたのですが、シャーリーの追悼パーティーでもわかったように、故人への思いを家族や友人たちと集まって共有することに大きな意味と確信していたので、どうしても行こうと決めていました。そうして帰りの便が取れないまま出かけたのです。義姉も甥たちもとっても喜んで大歓迎してくれ、またバイブリー(イギリスで最も美しい村といわれているところです)の古い教会で行われた追悼式には予想以上の人々が集まり、温厚でユーモアに溢れた義兄の人柄がしみじみと感じさせられ、家族たちの心が暖められたのがよくわかりましたし、トーマスも兄の家族との絆を強め 、ほんとうに行ってよかったと思います。ちょっとびっくりしたのは、私自身がトーマスの親類とすっかり溶け込んでいることです。溶け込もうと特に努力をしたことはなく、育った環境も文化も全く違い、毎年会うわけでもないのに。それとも私の歳のせいかな。理由は何であれ、とっても居心地のいい時間を過ごして、 人とのつながりがどんなに大切かを改めてそこでも感じました。

70歳になる頃から、私は自分の寿命目標を84歳と考えるようになりました。母の2倍を生きたことになるからです。もちろんそれまで生きられるという保証は全くないし、それ以上生きられるかもしれません。でも目標年齢を考えると、それまでをどう生きたいかを考えやすくなります。13年半なんてすぐ過ぎてしまうでしょう。いまさら野望や野心を持ったって無駄です。だから、しあわせと感じることをやって生きていきましょう。

去年を振り返ると、私にとって人とのつながりがどんなに大切かということがよくわかります。私の周りの人がしあわせなら、私もしあわせになる。小さなしあわせでいいんです。そう思います。今年はそのことを忘れずに生きていきましょう。

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ガルテン〜私の庭物語
原田 美佳
バックナンバー一覧
200 小さなしあわせ
199 お葬式
198 とうとうやって来た日、そして雨
197 思い切り生きる
196 一夜が明けて
195 ヘザーと私の日本旅行記(6 下)文楽とフグ
194 ヘザーと私の日本旅行記(6 上)ショッピング
193 ヘザーと私の日本旅行記(5)多様な日本
192 ヘザーと私の日本旅行記(4 下)河津桜と温泉
191 ヘザーと私の日本旅行記(4 上)伊豆へ向かう
190 ヘザーと私の日本旅行記(3)葉山・鎌倉
189 ヘザーと私の日本旅行記(2)江戸・かっぱ橋・オフ会
188 ヘザーと私の日本旅行記(1) 日本到着
187 生ある日々を
186 花嫁の父
185 プラチナの裏地
184 家族をつなぐ指輪
183 「血の月」を追いかけて
182 ママハハだった母
181 アジア人(下)固定観念を越えて
180 ジプシーの目
179 選挙に映ったアメリカの顔
178 とうとう、きょう
177 アジア人(上)その概念
176 海軍出身
175 特攻志願
174 お祭り
173 ありがとう、で1年を
172 クリスマスプレゼントが今年もまた
171 スージー・ウォンの世界
170 秩序の秘訣
169 黒い雲の行方
168 ドアを開けたら
167 今年もまた
166 ボリビア(7)ボリビアで和菓子を
165 ボリビア(6)パクーの登場
164 ボリビア(5)卵の力、女性の力
163 ボリビア(4)小麦の都
162 ボリビア(3)米の都
161 ボリビア(2)2つの日系移住地
160 ボリビア(1)サンタクルス
159 闇の中で
158 みんなの宝物
157 新語の中身
156 年末のご挨拶
155 ピッチピッチチャップチャップ
154 神の仕業
153 ラタトゥイユ(2)レシピ
152 ラタトゥイユ(1)
151 プティ・タ・プティの最後の1片
150 ジプシーとの知恵競争は続く
149 豊かな粗食
148 中絶抗争
147 スーザン・ボイルの勝利
146 黄昏の親子関係
145 子ども好き
144 言葉雑感(8)regift
143 言葉雑感(7)「ん」の音
142 アメリカの理想
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139 ミルクの教訓
138 年末の独り言
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136 あと3日
135 ペイリンから見えるアメリカ
134 訴訟顛末記(1)まず弁護士を
133 園遊会で
132 柔の姿勢
131 言葉雑感(5)4文字言葉
130 豪邸の住人
129 言葉雑感(4)カミはカミでも
128 言葉雑感(3)ブタ年生まれ
127 言葉雑感(2)子年のネズミ
126 言葉雑感(1)グローバルなピリピリ
125 やって来た山火事(最終回)これから
124 やって来た山火事(9)いとおしい木々
123 やって来た山火事(8)現実に直面して
122 やって来た山火事(7)焦燥の2日間
121 やって来た山火事(6)私の方舟
120 やって来た山火事(5)避難準備
119 やって来た山火事(4)止まない風
118 やって来た山火事(3)第1日目の夜
117 やって来た山火事(2)第1日目の夕方
116 やって来た山火事(1)第1日目の昼下がり
115 しあわせな1日
114 チェ
113 メキシコの息づかい
112 「石の家」
111 「バッキンガム宮殿」での晩餐会
110 ケーキ1切れ
109 「豊かさ」の中身
108 イタリアの修道僧
107 3年ぶりの日本
106 キューバ:アメリカの恥
105 キューバ:バラコア
104 キューバ:甘い歴史の苦い思い出
103 キューバ:2つの通貨
102 キューバ:近過ぎて遠い国
101 ホンジュラス(最終回)去る者,残る者
100 ホンジュラス(19)シエンプレ・ウニードス
99 ホンジュラス(18)ガリフナ放送
98 あと1年、だったら
97 無信仰者のクリスマス
96 ホンジュラス(17)ガリフナ
95 ホンジュラス(16)バナナ共和国
94 ホンジュラス(15)マヤ文明の跡
93 ホンジュラス(14)牢獄の中と外
92 ホンジュラス(13)先住民の女性たち
91 ホンジュラス(12)一番安全な町
90 ホンジュラス(11)オランチョの森(下)
89 ホンジュラス(10)オランチョの森(上)
88 金鉱の陰で(追記)カリフォルニアで
87 ホンジュラス(9)金鉱の陰で(下)
86 ホンジュラス(8)金鉱の陰で (中)
85 ホンジュラス(7)金鉱の陰で (上)
84 ホンジュラス(6)原則に沿って
83 ホンジュラス(5)農地のない農民
82 移民政争とラティノの力(続)
81 移民政争とラティノの力
80 ホンジュラス(4)消え去った人々
79 ホンジュラス(3)ホテル・ナンキンで
78 ホンジュラス(2)レンピーラ
77 ホンジュラス(1)行ってみよう
76 本物を見る
75 豊かな心
74 蝶の力
73 単刀直入
72 愛の表現
71 ベネット・バーガー
70 感謝の日
69 思わぬ道草(最終回)原点
68 思わぬ道草(19)回復に向けて
67 思わぬ道草(18)人は孤島にあらず
66 「ニューオーリーンズ」に見えたもの
65 思わぬ道草(17)一歩後退の教訓
64 思わぬ道草(16)日没症候群
63 甦生の兆し
62 ニューオーリーンズとクリスチャン
61 思わぬ道草(15)もつれた糸
60 思わぬ道草(14)彼の青い目(下)
59 思わぬ道草(13)彼の青い目(上)
58 思わぬ道草(12)ローマ鎧
57 思わぬ道草(11)看護師騒動
56 思わぬ道草(10)近くの他人
55 思わぬ道草(9)ロールバー
54 思わぬ道草(8)楽観の2日間
53 思わぬ道草(7)一人三脚
52 思わぬ道草(6)長い夜
51 思わぬ道草(5)OR
50 思わぬ道草(4)ER
49 思わぬ道草(3)常習犯
48 思わぬ道草(2)目撃者
47 思わぬ道草(1)3月14日の夕方
46 訛った英語
45 イギリスの英語
44 英語とアメリカ
43 海の中に(下)
42 海の中に(上)
41 姓というマーカー(下)
40 姓というマーカー(上)
39 国籍あれこれ:選択肢
38 国籍あれこれ:彼の場合
37 国籍あれこれ:私の場合
36 ボーダーとは
35 最終回:グローバリゼーション
34 番外編:クリスマス・ディナー
33 サンタアナの風
32 お刺身パーティー
31 アボカド泥棒
30 アボカドと生きる鳥
29 カラスのご馳走
28 三つ子の魂
27 子宝のもと?
26 アボカド探検家
25 ゴールドラッシュの波紋(下)
24 ゴールドラッシュの波紋(上)
23 海を渡って(下)
22 海を渡って (上)
21 コンキスタドール
20 アボカド事始め
19 ハースマザーの行方
18 世界アボカド会議
17 フエルテ
16 ハースマザーの木(下)
15 ハースマザーの木(上)
14 鶏より馬
13 働く人々
12 花婿の父
11 シンコ・デ・マヨ
10 「奇跡の3月」
9 アボカド形の穴
8 父親不明
7 女性花・男性花
6 トーマスのギャンブル(2)
5 トーマスのギャンブル(1)
4 成熟と完熟
3 グァカモーレ
2 アボカドさまざま
1 メックスフライ
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